研究課題/領域番号 |
22K17703
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 沖縄大学 (2023) 立命館大学 (2022) |
研究代表者 |
鈴木 崇人 沖縄大学, 人文学部, 講師 (20638960)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 前足部着地 / 踵着地 / アキレス腱 / 酸素摂取量 / 筋電図 / 超音波画像 / モーションキャプチャー / 走行経済性 / ランニング / 下腿三頭筋 / 超音波 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、走行中のアキレス腱の3次元動態を非侵襲的に測定する方法を検証し、それにより広範囲の走速度におけるアキレス腱に対する着地方法の影響を明らかにし、下腿三頭筋の筋束の動態や筋活動および酸素摂取量などの測定を合わせて、着地方法が走行のエネルギー効率に影響を与える筋生理学的メカニズムを明らかにする。それにより、ヒトの着地方法の無意識の選択の意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
ヒトには走行時に前足部着地や踵着地といった着地方法を意識的または無意識的に変化させるという特徴がある。またヒトは走速度の増大に伴って着地方法を踵着地から前足部着地に変えることが報告されている。本研究は全体として、先行研究の少ない時速18km以上の速度における着地方法の影響も含めて検討することで、下腿三頭筋の筋束の動態や筋活動および酸素摂取量などの測定を合わせて、着地方法が走行のエネルギー効率に影響を与える筋生理学的メカニズムを明らかにすることを目的とする。 2022年度には、時速15kmと19kmの速度において、前足部着地または踵着地で走ることで、着地方法が酸素摂取量と下腿の筋活動に与える影響とその速度依存性を検討するための実験を行っていた。2023年度では解析を進めた。踵着地と比較して前足部着地では、表面筋電図法から判断して接地期の足関節周りの筋の共収縮が減少していた。しかし、酸素摂取量に変化がなかった。以上より、時速19kmまでの走速度では、前足部着地によって足関節周りの共収縮の減少は減少するが走行経済性には影響を与えない程度であることが明らかになった。 2022年度には超音波画像診断装置のプローブをアキレス腱上に固定するための固定具を3Dプリンターによって作成し、モーションキャプチャーシステムと併せて使用することで、時速20kmから時速28kmにおける着地方法がアキレス腱と腓腹筋内側頭の筋束の動態に与える影響を非侵襲的に検討する実験も行っており、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は計画した実験の内、着地方法と酸素摂取量の関係を検討する実験と、着地方法と下腿三頭筋の筋腱複合体の動態の関係を検討する実験を行った。2023度に前者の解析を終えて、学術雑誌への投稿を行い、査読者の意見を踏まえて修正作業を行っている。 先行研究において時速18km以上の速度での着地方法と酸素摂取量の関係が明らかではないが、それは運動強度が高いためにそのような実験を遂行できる被験者の確保が困難であることが一因である。本研究では神奈川大学陸上競技部の熟練者16名の協力を得て、時速15kmと19kmの実験を行った。着地の判断は、足に貼付した反射マーカーの位置データから判定する方法にした。これをもとに表面筋電図データの解析を行い、踵着地と比較して前足部着地では、接地期の前脛骨筋の活動が低下し、同時に腓腹筋内側頭の活動が増加することが明らかになった。この結果は前足部着地では接地期において足底屈筋群と足背屈筋群の共収縮が少ないことを意味し、時速15kmから19kmの速度において前足部着地は足関節周りの筋活動の効率が良い可能性を示唆する。しかし、酸素摂取量の結果と併せて考えると、時速15kmから19kmの速度における前足部着地による足底屈筋群と足背屈筋群の共収縮の減少は走行経済性には影響を与えない程度である。 また時速20km以上の速度における着地方法と下腿三頭筋の筋腱複合体の動態の関係を検討する実験は既に終えており、解析を進めている段階である。 実験方法の一部を変更したものの、四年間で計画した四つの実験のうち二つの実験を既に行っている。ただし、解析は一つのみ進んでいるため、おおむね順調に進展している、と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
時速15kmと19kmの走速度における着地方法と酸素摂取量の関係を検討する実験の解析において、前足部着地では走速度によって着地時の膝関節角度が変わらなかったが、踵着地ではより屈曲した。この走速度増加による膝関節角度の変化は時速18km以下での先行研究ではみられないものである。この結果は時速19km以上では踵着地のランニングフォームに物理的な問題があり、変化する必要がある可能性を示唆する。先行研究の結果と本研究の酸素摂取量の結果を併せて考えると、時速15km未満の速度では前足部着地よりも踵着地の走行経済性が高く、時速15kmから19kmの速度では着地方法によって走行経済性は変わらないが、さらに高い速度では接地時間の長い踵着地に物理的な問題が生じる影響などで、着地方法が走行経済性に影響を与える可能性がある。当初の予定通り時速20km以上の速度での実験が可能な被験者を確保して改めて実験することも検討する。 時速20km以上の速度における着地方法と下腿三頭筋の筋腱複合体の動態の関係を検討する実験では、アキレス腱の湾曲を考慮した実験設定を予定していたが、超音波画像診断装置のプローブと踵骨への付着部位の間隔が狭く、間に反射マーカーを貼付することが困難だった。反射マーカーの代わりにアキレス腱上に印をつけて、印を撮影した動画を画像解析することで位置データを取得することも検討したが、その方法で取得した位置データの正確性も考慮して、アキレス腱を直線と仮定して計算する現実的な方法を採用する予定である。
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