研究実績の概要 |
2型糖尿病の記憶機能を改善する低強度運動効果をもたらす筋-海馬連関を成す骨格筋由来のエクソソームmiRNAの探索と、その標的として海馬MCT2発現があるかどうかの解明に向けて、2022年度は、海馬内のMCTやmiRNA発現、骨格筋エクソソームmiRNA発現を進めた。 8週齢の雄性C57BL/6Jマウスと雄性ob/obマウス(2型糖尿病モデル)に4週間の低強度運動を課した(C57BL/6J マウス:7.0 m/分、ob/ob マウス:5.0 m/分 [30%VO2max]、30分/日、5日/週)。運動4週目に併行して、モリス水迷路を課して、全てのマウスの記憶機能を評価した。その後、海馬からtotal RNAを、骨格筋からエクソソームmiRNAを抽出し、その発現量を解析した。 結果、4週間の低強度運動による記憶機能の改善とともに、海馬Mct2 mRNA量が回復することを確認した。海馬miRNA発現をmiRNA-Seqで解析したところ、2型糖尿病により変化していた9種のmiRNA発現(miR-200a-3p, miR-200b-3p, miR-322-3p, miR-344d-1-5p, miR-351-5p, miR-429-3p, miR-542-3p, miR-871-5p, miR-3474)が回復することを見出した。このうち、miR-200a-3pはMCT2の発現に関与する可能性が示唆されている(miRDB [http:// www. mirdb.org], TargetScan [http://www.targetscan.org/mmu_80/])。現在、miR-200a-3pを含め9種のmiRNAに絞り、骨格筋エクソソームmiRNAが変化しているかどうかを解析中である。 この解析を通じて、2型糖尿病のwell-beingに資する分子標的の提案や、運動処方を開発する上での指標の提案を目指す。
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