研究課題/領域番号 |
22K17800
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
塩崎 雄治 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70908748)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ミネラル栄養学 / リン毒性 / 老化 / 腎臓 / Xpr1 / CPP / トランスポーター / リン酸排出 / 無機リン酸 / XPR1 |
研究開始時の研究の概要 |
食事からの過剰なリン摂取は、慢性腎臓病、骨・血管疾患を促進させるのみならず、多臓器に渡り細胞老化を進行させ生活習慣病や老化様症状が起こるリスクとなる。リン酸は生体に必須な栄養素であり、多くの細胞はSLC20A1(PiT-1)によるリン酸取り込み能と、リン酸トランスポーターXPR1による細胞内から細胞外へのリン酸排出能を持つ。本研究は、高リン血症によって生じる様々な臓器でのリン蓄積が誘導する老化様症状に対し、XPR1によるリン酸排出能が抑制作用を持つ可能性を予想し、XPR1によるリン毒性からの臓器・細胞保護作用を解析することで、生体のリン毒性防御機構を解明する。
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研究実績の概要 |
高リン食摂取や慢性腎臓病(CKD)に伴う高リン血症などのリン負荷は様々な臓器において細胞傷害を誘導し、老化や血管石灰化などのミネラル関連疾患を進展させる。ほとんどの細胞はIII型ナトリウム(Na)依存性無機リン酸 (Pi) トランスポーターPiT1を発現し、小腸上皮細胞や腎近位尿細管細胞など一部の臓器ではII型のNaPiトランスポーターNaPi2bもしくはNaPi2aとNaPi2cを発現する。特定の臓器でリン毒性が惹起される過程において、細胞がPiT1やNaPi2bなどのトランスポーターを介してリンを取り込み、細胞内Pi濃度が増加することが一因である可能性が示唆されている。一方で、多くの哺乳類細胞はXenotropic and polytropic retrovirus receptor 1 (Xpr1) を発現し、細胞内Piを細胞外へ排出する輸送機構を持つ。本研究はXpr1依存的細胞内Pi排出機構が個々の組織・細胞において高リン負荷時の毒性を緩和する役割を持つ可能性を考え、Xpr1抑制によりPi排出能が障害されることで高リン負荷による組織・細胞傷害が亢進するか解析する。 令和4年度は1) 組織もしくは時期特異的Xpr1ノックアウトマウス作製のためにXpr1 loxp/loxp マウスを作成し、飼育開始できる準備が整った。 2) 培養細胞実験では、Pi取り込み能が高い近位尿細管由来細胞において、siRNAによるXpr1ノックダウンが高リンメディウム培養条件において細胞生存を悪化させることを明らかにした。さらに、Xpr1抑制はリン酸カルシウム結晶とタンパク質の複合体であるCalciprotein particle (CPP) 添加による細胞毒性を亢進した。 3) また、CRISPR/Cas9システムを用いて内因性Xpr1タンパク質をノックアウトした近位尿左官培養細胞株を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度は時期特異的もしくは臓器特異的Xpr1 KOマウスの基となるXpr1 loxp/loxpマウスの作製が遅れたため、動物モデルを用いたXpr1抑制による組織リン毒性感受性への影響の解析が遅れている。 培養細胞実験において、siRNAによるXpr1抑制とリン毒性の亢進について解析し、Xpr1ノックダウンは高リン酸メディウム添加に対する細胞毒性を亢進するだけでなく、CPP添加によるリン毒性を増加させることを明らかにし、Xpr1が無機リン酸だけではなくリン関連代謝物が誘導する細胞死への耐性に関与する可能性を検討できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度もXpr1機能抑制によるリン酸毒性機構を詳細に解析していく。 1) Xpr1が動物モデルにおいて全身性のリン毒性抑制に重要であるか解析するため、時期特異的Xpr1ノックアウトマウスを作成する。基礎データを解析後、Xpr1 KOマウスに高リン食摂取などのリン負荷を与え、Xpr1ノックアウト組織でのリン毒性を細胞死、炎症性マーカー発現や石灰化を指標に解析する。 2) Pi取り込みおよび排出バランスの破綻による細胞内Pi濃度増加が、リン酸毒性の誘導に関与することを解析する。令和4年度には内因性Xpr1ノックアウト細胞株が作製できたため、遺伝子導入によるXpr1発現回復が高リンメディウム添加などのリン毒性を緩和するかレスキュー実験を計画する。 3) リン酸由来代謝物による毒性に対するXpr1の役割を解明する。尿細管上皮細胞においてCPPの取り込みを担う受容体として報告されているToll-like receptor 4 (TLR4) の過剰発現およびノックダウンが、Xpr1ノックアウト細胞のCPP誘導性細胞死への感受性を変化させるか解析する。Xpr1ノックアウト細胞において、リン酸およびCPP添加により活性化されるリン毒性シグナルの探索を計画している。
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