研究課題/領域番号 |
22K17853
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大城 泰平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (10908768)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 組合せ最適化 / 代数的アルゴリズム / 重み付き線形マトロイドパリティ / 非可換階数 / Edmonds問題 / 線形代数 / マトロイド / 線形マトロイドパリティ / 数え上げ |
研究開始時の研究の概要 |
組合せ最適化とは、複数の離散的な選択肢の中から最も良いものを探す問題の枠組みであり、いくつかの組合せ最適化問題は記号を含む行列の階数を計算する問題として表現できる。行列による表現は問題の効率的解法を与えると同時に、特定の問題に対しては、解の数を数え上げるための道具となる。 本研究では行列表現の適用可能性の追求と応用技術の発展を目的とし、二つの研究課題に挑む。第一に、通常の階数概念の代数的拡張である非可換階数を利用した新たな行列表現手法を設計する。第二に、行列表現を用いて効率的に解を数え上げられる問題に対して、数え上げ技法の高速化や他の計算問題への応用技術の開発を試みる。
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研究実績の概要 |
組合せ最適化とは,複数の離散的な選択肢の中から最も良いものを探す問題の枠組みであり,いくつかの組合せ最適化問題は各要素が多変数一次式である「線形記号行列」の階数を計算する問題として表現できる.線形記号行列の階数を計算する問題はEdmonds問題とよばれ,乱数を用いずに多項式時間で解くことが可能かどうかが計算量理論における未解決問題の一つとなっている.近年,線形記号行列の各変数を積に関して互いに非可換とみなした場合に定義される「非可換階数」を計算する「非可換Edmonds問題」は決定性多項式時間可解であることが示された.さらに,各要素が一変数多項式を係数とする多変数一次式である「線形多項式行列」の非可換行列式の次数を計算する「重みつき非可換Edmonds問題」は疑多項式時間で計算することができるということが示された。
代表研究者は,本年度,各要素が一変数単項式を係数とする多変数一次式である「線形単項式行列」に対する重み付き非可換Edmonds問題に取り組んだ.本問題は強多項式時間解法が既に知られていたが,既存の手法は線形計画問題を解く弱多項式時間アルゴリズムを強多項式時間に変換する一般論を利用したものであり,組合せ最適化の観点からは満足の行くものではなかった.本研究では,重み付き二部マッチングに対するハンガリアン法を代数的に拡張した強多項式時間アルゴリズムを与え,さらに重み付き線形マトロイドパリティ問題に対する応用を示した.本結果は現在雑誌に投稿中である.さらに,昨年度雑誌に投稿した分数線形マトロイドパリティに関する論文の一次査読が終了したため,修正作業を行った.
また本年度も,3本の論文を機械学習分野のトップ会議NeurIPS, ICML, AISTATSで発表した.これらの研究の背景となる数学的知識の一部は本課題の遂行中に得られたものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的は,非可換階数を用いた組合せ最適化問題の行列表現を与えることである.本年発表した成果により,重み付き分数線形マトロイドパリティ問題に対する行列表現を与えることに成功した.本問題は重み付き二部マッチング,重み付き分数マッチング,重み付き線形マトロイド交叉といった様々な基本的な重み付き組合せ最適化問題を含むものであり,その行列表現は分野にとって非常に重要な結果であると考えている.さらに,本研究課題の遂行中に得られた知見を応用し,当初想定していなかった機械学習分野において今年度も3本の論文発表を行った.以上の事実により,本研究課題は当初の計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
現在の枠組みでは行列表現を未だに与えることができていない組合せ最適化問題に本研究内容を展開し,行列表現がどのような種類の組合せ最適化問題まで有効かという限界を見極めるためることを試みる.目下の目標は有向グラフにおける最大流問題や最小費用流問題やその特殊ケースである点素パス詰め込み問題である.これらの問題は(重みつき)二部マッチング問題の,線形マトロイド交叉とは異なる方向の拡張であり,理論と応用の両面から興味深い問題である.これらの問題に対し,非可換行列の観点からどのような取り扱いを行うことができるのか検討を行う.
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