研究課題/領域番号 |
22K17870
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60040:計算機システム関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
上野 知洋 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (30794135)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | データ圧縮 / 仮想ネットワーク / FPGAクラスタ / シストリックアレイ / リコンフィギュラブルネットワーク / 高性能計算 / FPGA / ストリーム処理 |
研究開始時の研究の概要 |
多様な問題を扱うスーパーコンピュータ等の大規模計算機システムにおいて、十分な性能のネットワークを構築・活用するためには、専用設計デバイスの利用や利用者自身による適切な制御等が必要となり、コスト増大や開発の難易度増加といった問題を引き起こす可能性がある。このような問題に対して本研究は、対象問題の要求に応じて実効帯域やネットワークトポロジを自由に設定可能なリコンフィギュラブルネットワークを提案する。この「再構成可能」なネットワークを実現するために、FPGA等の回路再構成可能デバイスを利用した仮想回線交換網と通信帯域圧縮技術を組み合わせ、FPGAクラスタ上に試験的なネットワークを構築する。
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研究実績の概要 |
当該年度は、仮想ネットワーク(VCSN)により接続された複数のFPGAによるシステム(FPGAクラスタ)上で動作するアプリケーションの実装及び性能評価と、高位合成ツール(Chisel)による帯域圧縮ハードウェア(BCH)の改修と実装を行った。 VCSNネットワークを用いるアプリケーションとして、仮想的な2次元メッシュトポロジ(物理的には2つのスイッチによるデュアルプレーンネットワーク)で接続されたFPGAクラスタ上にシンプルなシストリックアレイデザインを実装してその処理性能を評価した。これは、VCSNの設定変更によって仮想2次元メッシュトポロジを瞬時に再構築できるため、様々な形状・サイズのシストリックアレイの性能を評価できる。性能評価の結果、シストリックアレイが仮想ネットワークの形状・サイズに依存しないスケーラブルな性能を実現可能であることを示す一方で、物理的なFPGA間ネットワーク帯域により最大性能が制限されることも示された。このことから、このアプリケーションに対してBCHを適用することにより、ネットワーク帯域制限を緩和し、ネットワークトポロジと通信帯域の両方が調整可能なネットワークの実現とその優位性を示すことが可能になる。 BCHに関する研究として、高位合成言語による帯域圧縮ハードウェアの実装を進めつつ、より効率的な符号化方法の調査を行った。本研究におけるデータ圧縮は、実際の入力値と予測値との差分の符号化によりデータサイズを削減するが、この差分の値が極端な場合に、圧縮率が低下する可能性があることが当該年度の調査により判明した。この問題を解決する方法の調査研究を進めており、圧縮性能を低下させずかつ回路規模を抑える手法の提案を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
帯域圧縮ハードウェア(BCH)の高位合成ツールによる再実装が進み、パラメータによる設計変更や回路規模の調整が容易に可能となった。また、圧縮性能評価のためのベンチマークデータセットの調査を行い、広範囲のアプリケーションに関するデータセットに対する圧縮性能評価が可能となった。一方で、複数チャネルを圧縮するハードウェア実装については、当該年度中に完了しなかったため、実用的なハードウェアの評価については次年度以降に持ち越しとなった。また、圧縮性能と回路規模のトレードオフ評価及びそれらを振り分ける、あるいは調整する手法については、概念的な設計に留まっているため、次年度に具体的かつ詳細なハードウェアの設計と、様々なベンチマークデータセットによる圧縮性能評価を行う。 一方、FPGA間を接続する仮想回線交換ネットワーク(VCSN)については、性能評価及び実用的なアプリケーションの開発が完了し、BCHとの協働をすぐにでも行える状態となっている。特にアプリケーションに関しては、AI等の最新の研究トレンドに合致したシストリックアレイによる評価が可能となったため、FPGAクラスタにおけるリコンフィギュラブルネットワークの評価環境が整ったといえる。 総合的にみると、BCHの実装に関しては多少の遅れがみられるが、VCSN側の性能評価及びリコンフィギュラブルネットワークを評価するためのアプリケーションの開発が予想以上に進展したことから、研究の進展状況はおおむね予定通りと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度のため、本研究の核となる計算資源(FPGAで言えば回路面積)と通信帯域とのトレードオフ関係の調査とそのためのシステムを、実用的なアプリケーションを利用した実機評価を行う。 まず、本年度に調査したデータ圧縮ベンチマークデータセットを用いて、幅広い分野のデータセットに対する圧縮性能評価を行う。また、HLSによりパラメータ化されたBCHを調整し、様々にパラメータを変化させた場合の圧縮性能および要求計算資源の傾向について調査する。これらの評価結果を基に、投入する計算資源と帯域向上効果との関係についてまとめる。 最終的に、VCSNが提供する仮想FPGA間ネットワークに対してBCHを適用し、ネットワークトポロジを変化させつつ、物理帯域の限界により計算性能が制限されないマルチFPGAシステムとそのネットワークシステムの実装、性能評価、およびその結果に基づく成果発表を行う。
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