研究課題/領域番号 |
22K17873
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60050:ソフトウェア関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
和賀 正樹 京都大学, 情報学研究科, 助教 (00899007)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 能動的MDP学習 / 確率的モデル検査 / ブラックボックス検査 / 準同型暗号 / 秘匿モニタリング / 物理情報システム / 軽量形式手法 / オートマトン理論 / 量的検証 |
研究開始時の研究の概要 |
自動運転車やロボット等の高度な信頼性が要求される物理情報システムの開発では、形式検証などを用いたシステマティックな品質保証が重要である。 近年の形式検証の発展の大きな潮流として、1) 危険状態への不達性等の質的な性質に加えて、実行時間や故障確率等の量的な性質をも保証する量的形式検証、2) 網羅性をある程度犠牲にすることで実用性を向上させた\emph{軽量形式検証}、の二方向の拡張がある。本研究ではこれら2つの潮流の合流点として、量的な軽量形式検証の構築を目的とする。本研究の最大の独自性は時間や確率等を陽に扱う量的オートマトンの理論を用いて拡張を行う点である。
|
研究実績の概要 |
まず今年度は、申請者がこれまで行ってきた、ブラックボックス検査と呼ばれる自動テスト手法の量的な拡張に取り組んだ。ブラックボックス検査はテスト対象のシステムを近似するオートマトンの学習と、モデル検査によるオートマトンに対する形式検証を組み合わせることによる、ブラックボックスシステムのためのテスト手法である。ブラックボックス検査は特に近似オートマトンの再利用が可能な場合に効率的なテストが行えることが知られているが、決定的なオートマトンによってシステムの振る舞いを近似するため、確率的システムへの適用が難しいという欠点があった。特に物理情報システムは、例えばシステムの外乱などの確率的な要素が含まれるため、ブラックボックス検査の適用可能範囲が限定的であった。本研究では、テスト対象のマルコフ決定過程による近似と、確率的モデル検査によるその形式検証を組み合わせることにより、ブラックボックス検査を確率的に拡張した。本研究成果をまとめた論文を執筆し、現在査読中である。
また、本年度は監視対象となるログを秘匿したままモニタリングすることのできる、秘匿モニタリングについての研究も行なった。物理情報システムの中でも特にIoTシステムのような応用の場合、各機器によって得られた情報をサーバなどに収集し、異常事態の検出などを行うことが広く行われている。一方IoTシステムによって得られる情報は位置情報や生体情報などのプライバシーに関わるものを含むことも多く、モニタリング対象の情報を開示しないことが好ましい。本研究ではトーラス準同型暗号(TFHE)を用いることで、監視対象のログを秘匿したままモニタリングを行うことのできるアルゴリズムを提案し、計算機実験により実時間モニタリングに適用可能であることを示した。本研究の結果をまとめた論文はシステム検証におけるトップ国際会議CAV 2022に採択された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ブラックボックス検査の確率的拡張に関しては、従来の手法では適用できなかった確率的なシステムにも適用可能な手法を提案し、その有用性を実験的に示すことに成功した。 また、秘匿モニタリングという当初計画に盛り込んでいなかった内容についても、実時間での適用可能性を示すことに成功し、トップ国際会議で採択されるなど、高い評価を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
まず第一に、秘匿モニタリングの手法をより現実的な物理情報システムに適用するため、数値データの処理を可能にする拡張や、複数の安全度合いを出力できるような拡張に取り組む予定である。これによって、現実的な物理情報システムに対する適用範囲を広げることができ、より実用的なモニタリング手法を実現することができると考えられる。また、実験に際しても、これまで用いてきた血糖値のモニタリングに加え、他の実用的なベンチマークにも取り組む予定である。
さらに、次年度は情報を秘匿しない通常の実行時モニタリングのさらなる量的な拡張にも取り組む。具体的には、以前申請者が提案したmodel-bounded monitoringの枠組みを観測されたログの時間方向の不確かさに対して拡張し、より幅広い応用に適用可能にする予定である。これによって、より実際的なシステムに対して有用なモニタリング手法を実現できると考えている。
|