研究課題/領域番号 |
22K17903
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60100:計算科学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
寺原 拓哉 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (10875305)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | T-spline / Heart Valve / Aorta / Isogeometric analysis / ST-SI-TC-IGA / 心臓弁 / アイソジオメトリック解析 / 水撃作用 |
研究開始時の研究の概要 |
心臓弁は心臓の拍動に伴う圧力の変化により開閉する。開閉に伴う心臓弁周囲の流れ場を正しく再現するためにはNURBSによって離散化した境界適合格子を用い、時空間の同時離散化を応用する解析手法が有効である。心臓弁には元から備わるもの、加齢によって変性し硬くなったもの、生体素材や金属素材から成る人工のもの等様々な種類があり、それぞれ表面の状態や、開きにくさ、閉じにくさといった硬さが異なる。本解析手法をそういった幅広い心臓弁に適用可能で信頼性の高いものにするため、動的な局所細分化による効率的な格子点の配置、水撃作用により生じる圧力波の影響、心臓弁表面の状態が流れ場に及ぼす影響、以上3つの研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では元から備わっている心臓弁、生体素材、人工材料からなる人工弁など、多岐にわたる種類の心臓弁に対して適用可能な高精度流体解析手法の構築を目指す研究である。 本年度は、大動脈弁のアイソジオメトリック解析において大動脈形状および動作を考慮したT-spline離散化による解析を行った。T-splineによる離散化により、弁尖近傍の境界層流れを局所的に解像し、弁尖表面のせん断応力を明らかにすることができた。その結果、大動脈の曲がりによって大動脈内で螺旋流が作られることを捉えることの他に、大動脈内流れが弁尖近傍の流れ場にも影響を及ぼすことが確認できた。得られたせん断応力からは振動せん断指数を算出し、大動脈の曲がり側にある弁尖で高い値を示すことが確認され、大動脈の曲がりを考慮する必要性が高いことが分かった。その他にも人工心臓弁は弁尖同士が交わる縁と血管壁の間に隙間ができるが、その隙間があることでヒトの心臓弁よりも弁尖の周りで作られる流れが速くなることが示唆された。 他にも大動脈弁を対象としたアイソジオメトリック解析において、時間方向の細分化を行った。ここでは時間刻み幅をこれまでの5分の1にした解析を実施した。結果からは弁尖接触の瞬間に近傍の流れ場をより捉えること、弁尖が大きく開いている時に弁尖から離れた部分で渦列の様子をより捉えることが可能となった。この結果からも、周期を通して同じ時間刻み幅で解析するよりも局所的に時間細分化することが有効であることが示唆された。 その他、矩形のパラメータ空間を持つT-splineにおいて、3または5つ以上の関数が交わる特異点を滑らかに表現する方法、それを用いた球の離散化に取り組んだ。これにより弁尖表面全体を高次の連続性をもつよう表現することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では弁尖接触近傍の曲率の高い形状を正しく表現し、かつ流れ場を高精度に捉えるためB-splineをベースとした離散化を行う。B-splineは矩形のパラメータ空間を持ち、一部の細分化が大きい範囲に影響を及ぼす。T-splineはその細分化列を途中で止めることができるので、弁尖付近など局所的な細分化ができる。本年度はT-splineによって細分化された心臓弁、大動脈の形状を含む格子を生成し、実際に大動脈の曲がりの影響が弁尖近傍の流れに影響することを明らかにすることができた。この際、心臓弁の種類の違いによってバルサルバ洞内で作られる流れが変わることも理解することができた。その他にT-splineの技術を応用することで、B-splineのみでは難しい、球や円状のようなトポロジーに対しても滑らかに離散化する方法にも取り組むことができた。その結果心臓弁尖や赤血球といった生体組織を再現することが可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではB-splineで離散化された解析格子を基としてT-splineによる局所細分化を行ってきたが、より効率の良い解析格子を扱うため、はじめからT-splineにより離散化する。これにより流入側や流出境界付近などより粗い格子で離散化し、効率よく解析を行う。他にも、パッチと呼ばれるB-splineのブロック間で低い連続性となっていた部分についても高次の連続性を持った格子として生成することができる。よってT-splineによって離散化された解析格子をT-splineにより局所細分化するという格子生成プロセスを確立する。 本年度、周期全体で時間を細分化したことにより、時間細分化が現象を捉える上で効果的であることが分かった。時間細分化を局所的に行い、水撃作用を捉えることに取り組む。この際大動脈壁の変形が伝播することで変化する圧力の様子を捉える精度を目指す。そのために必要な時間解像度について明らかにする。 さらに前年度開発した、僧帽弁尖と腱索の接続表現を可能とする離散化手法を用いて僧帽弁の流体構造連成解析に取り組む。僧帽弁は大動脈弁のような動脈弁に比べて柔軟な構造物であるため、格子の構造や移動がより複雑になることが予想される。必要に応じて格子の移動手法にも取り組む。結果大動脈弁と僧帽弁を有する左心室内流れを明らかにし、左心室内の流れと、その各弁尖への影響を評価する。
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