研究課題/領域番号 |
22K17909
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
都竹 千尋 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20884240)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | シャック・ハルトマン波面センサ / 動的光線空間 / 光線空間 / 光線追跡 / 画像復元 / ディープラーニング |
研究開始時の研究の概要 |
シャック・ハルトマン波面センサは,マイクロレンズアレイとその後側焦点距離に配置された撮像素子からなる光学機器である.これまでの研究では,マイクロレンズアレイ+撮像素子というカメラに類似した構造を積極的に活かした取得・処理方法が検討されておらず,光線群の明るさを記録するカメラとして応用されることがなかった.そこで本研究では,様々な位置・方向から入射される光線群の明るさ(光線空間)をリアルタイム撮影するカメラシステムを提案する.すなわち,動きを伴う光線空間(動的光線空間)を撮影できる光学系を波面センサに実装し,撮影した動的光線空間の処理について基礎研究する.
|
研究実績の概要 |
本研究では,シャック・ハルトマン(Shack-Hartmann,SH)波面センサの光学系がマイクロレンズアレイと撮像素子で構成されることに着目して,実空間を飛び交う動的な光線群の明るさを記録するカメラシステムの構築を目指すと共に,光線群に含まれるリッチな時空間情報に対する三次元信号処理の体系化を目的とする.今年度は,SH波面センサとメインレンズを組み合わせるアプローチで,ある時刻(一次元)における光線群の空間位置(二次元)及び入射角度(二次元)から成る五次元の情報,すなわち動的光線空間を画像群として撮影するカメラの光学系と実機撮影を検討した.
従来,動的光線空間はカメラアレイ,プレノプティックカメラ,もしくは符号化カメラによって撮影される.本研究で提案するカメラの光学系はプレノプティックカメラに類似する.一般に,プレノプティックカメラはレンズピッチが小さなマイクロレンズアレイが内蔵され,空間方向の密なサンプリングを達成できるが,角度及び時間方向のサンプリングが疎になるという性質がある.一方,本研究で提案するカメラは空間方向のサンプリングが疎であるものの,角度及び時間方向のサンプリングが密であり,従来のプレノプティックカメラと真逆の性質を持つ.この事実は,SH波面センサが光波面の歪測定を目的にマイクロレンズアレイを用いており,レンズピッチが大きいことから光学解析によって帰結される.
次に,SH波面センサの前方にメインレンズを配置し,動的光線空間の実機撮影を試みた.マイクロレンズアレイの焦点距離を5.6mm,レンズピッチを150μm,メインレンズの焦点距離を50mmとした.メインレンズから13cmの位置に被写体を配置し,ステージを回転させながら被写体を撮影したところ,計784方向の角度情報をもつ動的光線空間を30fpsで撮影することに成功した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の初年度計画は,SH波面センサとメインレンズを組み合わせたカメラの光学系の検討と実機撮影であったため,順調に計画が進んでいると判断される.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,動的光線空間の空間超解像について取り組む.本研究で撮影した動的光線空間は,空間方向のサンプル数が70×44に制限され,被写体のテクスチャにボケが生じる結果となる(光学解析から得られた知見に一致する).この空間サンプル数は,同じくプレノプティックカメラであるLytroのサンプル数540×375と比較すると約12%に留る.従って,超解像技術による空間サンプル数の改善が必要となる.この課題に関しては,動的光線空間の時空間情報を活かして,数理最適化や深層学習に基づく手法を検討していく予定である.
また,動的光線空間の雑音除去にも取り組む.一般に,SH波面センサは光波面の歪測定を目的に,光波面をマイクロレンズの焦点面で結像させることを想定している.このとき,焦点位置の撮像素子に膨大な数の光子が入力されるため,信号対雑音比が高い点像分布を撮影できる.つまり,光子の個数のゆらぎに起因する雑音はほぼ無視できると言える.一方,本研究のようにメインレンズを装着した場合,光子は撮像素子全体に分散される.従って,撮像素子ごとに光子の個数が不均一となり,結果としてガウス・ポアソン性の混合雑音が生じるため,その除去について検討を進めていく.
|