研究課題/領域番号 |
22K17924
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
研究代表者 |
藤平 晴奈 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 柏野多様脳特別研究室, 客員研究員 (70887653)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 蝸牛シナプス障害 / 対クリック刺激法 / 加齢 / 隠れ難聴 / 聴覚末梢 / 蝸牛シナプトパシー / 他覚的評価 |
研究開始時の研究の概要 |
「隠れ難聴」とは、聴力検査では問題がないが、ノイズのある環境下において音声(speech) の聴き取りが困難になる症状のことを指す。隠れ難聴の最大の要因として、内耳器官の蝸牛における内有毛細胞と蝸牛神経との間の接合部(シナプス)における障害(以下、蝸牛シナプトパシーとする)が考えられている。本研究では、隠れ難聴のメカニズムを解明するために、生きているヒトにおいて蝸牛シナプトパシーを評価する方法を確立して、その評価値と隠れ難聴(ノイズ下での聴取成績)との関連性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
<目的> 「隠れ難聴」とは,聴力検査では問題がないが,ノイズや響きのある日常的な環境下において音声(speech) の聴き取りが困難になる症状のことを指す.隠れ難聴の最大の要因として,内耳器官の蝸牛における内有毛細胞と蝸牛神経との間の接合部(シナプス)における損傷(以下,蝸牛シナプス障害とする)が考えられている.しかし,生きているヒトで蝸牛シナプス障害を評価する方法は確立されておらず,蝸牛シナプス障害が実際に隠れ難聴に関連しているのかについては明らかになっていない.本研究では,隠れ難聴のメカニズムを解明するために,ヒトにおいて蝸牛シナプス障害を評価する方法を確立して,その評価値と隠れ難聴(ノイズ下での聴取成績)との関連性を明らかにする.
<本年度の研究成果> 本年度は,動物実験で検証された方法(対クリック刺激法)をヒトに応用して,蝸牛神経由来の反応を捉えることによって蝸牛シナプス障害の評価を試みた.蝸牛シナプス障害は,加齢に伴い障害の程度が大きくなることが示唆されている.そこで73名の若年者と中年者を対象に実験を行い,対クリック刺激法による蝸牛神経由来の反応が若年者と中年者で差がみられるのか,そしてノイズ下での音声聴取成績と関連を示すのかについて検証した.その結果,対クリック刺激法の2音目に対する蝸牛神経由来の反応は,若年者と中年者で有意な差が認められ,ノイズ下での音声聴取成績と有意で比較的強い相関を示した.この結果から,対クリック刺激法を用いて蝸牛神経由来の反応を捉える方法は,ヒトにおいて蝸牛シナプス障害を評価する指標になりうることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた実験が実施され,さらに次年度計画にもあったノイズ下での音声聴取成績との関連性についての結果も得ることができた.本課題に関する成果発表は国内学会で7件行っている.また,特許1件を現在出願中である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果から,対クリック刺激法を用いて蝸牛神経由来の反応を捉える方法は,ヒトにおいて蝸牛シナプス損傷を評価する指標になりうることが示唆された.しかし,ヒトを対象とした実験では,蝸牛シナプス障害で選択的に損傷を受けるとされる蝸牛神経のlow-SR fiberが蝸牛神経由来の反応にどの程度寄与しているかについて述べるには推測の域を出ない.今後の研究においては,蝸牛神経における計算機シミュレーションによって蝸牛シナプス障害を模擬することで,対クリック刺激法を用いた蝸牛神経由来の反応が蝸牛シナプス損傷を評価できているのか検証する.さらにシミュレーションから蝸牛シナプス損傷を評価する最適な条件(刺激レベルや刺激呈示間隔など)を見つけ出し,その条件においてヒトで測定し,蝸牛シナプス損傷の評価手法の確立を目指す.
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