研究課題/領域番号 |
22K17934
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
加藤 由季 神戸大学, 海事科学研究科, 研究員 (00913146)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ユーザインタフェース / 一人称視点 / 三人称視点 / 状況認識 / 操船 / ヒューマンインターフェイス |
研究開始時の研究の概要 |
近年,陸上から船舶を監視,および操縦する遠隔操縦船の実用化が進められているが,遠隔地からの状況認識や意思決定は未知な部分が多い.そこで本研究では「視点(一人称/三人称)」に注目し,その違いが船舶の航行において認知的にどのような影響を持つかを実証実験を通して明らかにすることを目的とする.具体的には,視覚情報処理や操船学の観点から作業仮説を構築し,新たに開発する操船シミュレータにより検証する.
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研究実績の概要 |
近年,陸上から船舶を監視,および操縦する遠隔操縦船の実用化が進められているが,遠隔地からの状況認識や意思決定は未知な部分が多い. 搭乗操縦船における状況認識では,船橋から目視された周囲の景観,つまり「一人称視点」を基本とした情報が重視される.一方,遠隔操縦船 において各種センサから取得され制御パネルに表示される定性的・定量的情報は,船舶のレーダ映像のように上空から見下ろす「三人称視点」を基本として提供されることがしばしば認められる.視点の違いは,網膜に投影される対象物の像や配置を大きく変えるため,異なった状況認識を行う原因の一つになり得る.これらのことから,本研究では,操船情報を構成する諸要因のうち特に大きな影響を持つと見込まれる「視点(一人称/三人称)」に注目し,その違いが船舶の航行において認知的にどのような影響を持つかを実証実験を通して明らかにすることを目的としている. 第1年度においては,まず,視覚情報処理に関する種々の研究を参照し,一人称と三人称を比較することで,一人称の方が自船近傍の局所的情報(各々の近傍他船と自船との関係)は迅速かつ詳細に把握できる一方,三人称の方が大域的情報(対象海域全体の交通状況)の取得,および複数の対象物間(自船を含む)の関係の把握に長ける,という認知的特性の違いがあることを見出した.これを航海における安全性と効率性にあてはめ,本研究の作業仮説を「一人称による操船は自船近傍の局所情報を取得することに適していることから安全志向,三人称では自船周辺の大域情報の取得に適していることから効率志向となる」と設定した. 次に,視点以外の条件を統制する機能を持つ簡易操船シミュレータを開発し,この作業仮説を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
第1年度の計画においては、次の2点を計画していた。(1)一人称および三人称視点による対象物知覚の認知的特性を視覚情報処理の知見に基づいて分析し、これを操船学や安全工学の知見と結びつけることで、操船において各視点による状況認識がどのようになり得るかに関する作業仮説を構築する。 (2) 次に、この作業仮説を検証するため、視点以外の条件を統制する機能を持つ簡易操船シミュレータを開発する。これらの計画が前倒して実施しできたゆえ、実験まで行うことができた。実験の結果,海上の静止した対象物を避ける操船において、自船の上空から見下ろした俯瞰映像(三人称)の表示による操船であると、搭乗操縦船において操縦席から周囲を見る景観映像(一人称)の表示による操船に比べ、衝突する傾向が顕著であった.このことから、「障害物を避ける」という本能と結びついた行動は三人称では生起しにくいことが示唆された。この結果は、すでにインパクトファクターのある国際学会「The Journal of Navigation」に採録された。本研究は計画以上に進捗することができている。 Kato, Y., & Horiguchi, T. (2022). Effect of perception difference between first- and third-person perspectives on local and global situation recognition in ship handling. The Journal of Navigation, 75(3), 727-744. doi:10.1017/S0373463322000224
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今後の研究の推進方策 |
第1年度では,最短距離で航走する際に接近を許容する対象船が明確になるシナリオを設定して実験をすることで,行動および行動対象が明確なり,「安全性/効率性」の操船行動について議論することができた.しかしながら、遠隔操縦において,新旧さまざまな運航形態の船舶が混在することによる混乱を対象とするには、複数の船舶が関係する判断に迷いが生じるような交通状況においても、どのような特性があるのか明らかにする必要がある。また、遠隔操縦者への教育方法を構築するには、認知的特性の異なる道具による状況認識は、経験による学習にどのような傾向をもたらすのかについても、明らかにする必要がある。これらのことは、一般運用が普及いない現時点では、ほとんど明らかでない。 そこで、第2年度および第3年度では、操船経験から習得する技能において、輻輳海域における一人称視点と三人称視点の違いが及ぼす安全性/効率性への認知的特性による効果を明らかにすることを目的とする。
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