配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
研究実績の概要 |
デジタルファブリケーションにおける立体造形の高速化と再利用化のため,従来の樹脂を積層する造形手法とは異なり,本研究では,磁性かつ熱可塑性のある粒状の素材を用いて短時間で立体物を造形する高速造形手法を目指す.そのため本研究では,簡易に接着・分離可能な磁性熱可塑性粒状素材の開発と理論化,磁力制御装置の開発および形状を操作する最適な設計方法の検証を行う.ユーザは,画面上で形状のモデルを作成すると,装置部で素材が変形して,暫く待つと軟化・変形して,設計したモデルの形状に変化する.このために電磁石で制御可能な磁性熱可塑性樹脂を開発し,最適な素材量や磁力分布などを検証し,変形との関係性を理論化する.短時間で形状を確かめることが出来,また材料も再利用可能であるため資源のロスも少ない. このコンセプトを元に,水面上に任意の数字を表示するFloating Pixelsを開発した.これは磁性樹脂を用いて3D印刷した磁性球を水面に浮遊させ,下から磁石を取り付けた複数のリニアアクチュエータを制御して,任意の数字を表示する. 今年度は,発展した薄型静音制御デバイスの開発や,形状記憶樹脂や3Dプリンタ用の磁性素材などを活用して様々なアプローチでコンセプトの実現を目指した.これらは,Siggraph Asia 2024やSXSW 2024,インタラクション2024にて展示発表を行った. 今後は,これまでの成果をより発展させ,さらなる高解像度化を目指しながら,数字や低解像度の情報だけではなく,文字や文章,複雑な図形などの高度な情報を表示して,立体化する技術へ展開していく.研究目的の実現に向けて手法を確立させるとともに,共同研究先との製品化にも取り組み社会実装を目指す.さらには,研究のみならずアート領域の作品として展示することも考えている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,デジタルファブリケーションにおける立体造形の高速化を目指し,新しい造形手法について研究開発を進めている.これまで,低融点樹脂と鉄粉を混ぜた変形可能な磁性樹脂の開発およびリニアアクチュエータと磁石を用いた磁性樹脂の制御装置を開発してきた.今年度は,薄型かつ静音を実現するためにコイルを電子基板に印刷する手法を用いて,安価で薄型の磁性体制御装置を開発した.これによりデバイス上の磁性体を変形させて任意の形状を短時間で作成するだけでなく,物体の移動なども行えるようになった.また砂鉄などの磁性体を用いることで砂の上に文字を表示するアート作品としての応用も実現した.これらはSXSW 2024にて展示発表を行った. また柔軟な磁性素材を用いる以外にも,他の素材や現象を用いて,同様のコンセプトを実現する方法について検討している. 他にも熱湯を用いて簡易に任意の形状に変形できる素材の開発を行った.具体的には,熱可塑性の樹脂のシートとネオジウム磁石を用いて,磁石をシート状に格子上に配置し,底部から吸引と反発により様々な曲面に変形できる.変形後は,熱湯で加熱することで形状を固定できる.これにより,コップの熱湯を用いて変形できるなど,家庭で簡易に形状のカスタマイズができ,医療用ギプスやサイズに合った持ち手にしたりなど,様々な応用が可能である. また磁力で変形する手法を応用し,表面が動的に変形する布を開発している.磁性素材を布に3Dプリンタを用いて直接印刷して,凹凸物を印刷,裏側に磁石を配置することで,表面の凹凸形状を変更することができる.これにより,任意の模様に瞬時に修正できる服などが実現できる.これらは,Maker Faire Tokyo 2023やインタラクション2024にて発表を行っている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでの成果をより発展させ,さらなる高解像度化を目指しながら,数字や低解像度の情報だけではなく,文字や文章,また複雑な図形などの高度な情報を表示して,立体化する技術へ展開していく.そのために,複数のリニアアクチュエータの同時制御や磁石の選定や素材開発などを進めていく. また本コンセプトの応用も同時並行で検討し,磁力だけではなく,空気圧制御などを組み合わせて,画面上のコンテンツを立体化する方法などを,多方面から実装・開発して研究を進めていく.実際に,本手法の基本構想である,形状変化するディスプレイは,空気圧制御とエラストマー素材を用いることで,ディスプレイ表面に装着することで,画面上のコンテンツに凹凸を与え,立体形状を表現する手法AirPolygonを開発している.これは,SIGGRAPH ASIA 2024,SXSW 2024にて展示発表を行い,多くのフィードバックを得ることができた. また研究目的の実現に向けて手法を確立させるとともに,共同研究先との製品化にも取り組み社会実装を目指す.さらには,研究のみならずアート領域の作品として展示することも考えている.
|