研究課題/領域番号 |
22K17971
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
白石 允梓 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 特任准教授 (20632144)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 分業 / 社会性昆虫 / 自己組織化 / ネットワーク / 数理モデル / 行動解析 |
研究開始時の研究の概要 |
アリのコロニーには指示を出すリーダーはいないにも関わらず、個々の自律的な判断に基づき様々な環境変動に対応しながら、コロニー内で役割を分業させ協働した採餌や清掃、巣の構築、防衛行動をとることで繁栄を遂げてきた。分業しながら協働行動を成立させるために必要になるのは個体間のコミュニケーションである。本研究では、分業が行われる基礎的なメカニズムの解析を目的に、動画像解析による個体間相互作用のネットワーク構造を定量化して、ネットワーク構造を組み込んだ分業メカニズムの数理モデルを構築する。実験と理論モデルの両面から、効率的な自己組織化メカニズムの一端を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、数理モデルによる反応閾値モデルにおけるワーカー同士の相互作用の効果についての数値解析による研究、在来種の大型ありであるクロオオアリを用いた行動計測実験と、新たな計測システム構築のためのシステム開発を行った。数理モデルによる理論研究では、アリを含む社会性昆虫の労働分業を説明する数理モデルである反応閾値モデルは実際にどんな物理量が定量化できてワーカーの行動に関係するかは明らかになっていない。本研究では実際の現象との対応に着目し、ワーカー同士が情報を得るために個体間の相互作用を導入した。まず、既存の反応閾値モデルを大域結合系として捉えて、相互作用を導入したモデルと比較し、拡張モデルで相互作用を決定するネットワーク構造の影響をGini係数を用いて定量化した。Gini係数は経済学で富の不平等を定量化する指標で、ここではコロニー内での労働量の分配の偏りを定量化する指標として導入した。Gini係数によりネットワーク構造として2次元格子型では分業が起こりにくくなり、Scale-freeネットワークでは一部のより分業化が促され、Small-worldネットワークではさらに分業化が促されうることが示唆された。この点をより詳しく見るために餌を与えた後の行動変化を観測し、餌についての情報がどのように伝えられているかを明らかにするための行動計測を行い実際の黒大アリのコロニーにおいての個体間相互作用ネットワークの計測を試みている。また、現在のところ共同研究者での実験装置を利用しているが、さらに大規模なデータ解析を進めるために新しい計測システムの開発にも取り組んでいる。研究成果についての公表は、行動計測実験とシステム開発については行えていないが、数理モデルについての研究は、国内学会、国際学会での口頭発表を行い、国際研究集会において発表した内容を発展させ関連論文誌において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クロオオアリによる行動計測では、アリのコロニーにメープルシロップを薄めた餌を与え、アリが巣内から出てどのように情報を伝搬しているかを計測することで分業という現象が起こる際に見られるダイナミクスをネットワーク構造の視点から明らかにするように取り組んだ。しかし、分業という現象が見られる採餌行動では、一部のワーカーと呼ばれる働きアリが大半の労働を担う傾向がある。これにより行動計測が成功していても、ネットワーク構造解析ではネットワークとしての情報を得ることが難しいことが分かった。そのため、餌の種類の変更や、採餌以外にもゴミの運搬や緊急時の卵の移動などさまざまなアリの社会行動について計測が可能であるかの検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
餌の種類の変更や、採餌以外にもゴミの運搬や緊急時の卵の移動などさまざまなアリの社会行動について計測が可能であるかの検証を進めている。また、新型の計測システムでは、基本的な動作確認を行う段階に達しているため、より多くのデータを取り込んでいく予定である。数理モデルについては、観測が可能な各個体の行動回数などの時系列変化を指標にした活動の連続性を指標とした個体の疲労を取り入れたモデルの拡張に取り組む。
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