研究課題/領域番号 |
22K18007
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分62020:ウェブ情報学およびサービス情報学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉田 壮 関西大学, システム理工学部, 准教授 (70780584)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ソーシャルメディア / レコメンデーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、主義主張といった価値観の多様性に配慮したソーシャルメディア推薦技術の実現を目標とする。具体的に、集団内の価値観の多様性を検出する手法、個々の価値観の意味を理解する手法および、共通の興味関心に沿いながらも異なる価値観を持つ情報を推薦する手法を構築する。さらに、推薦情報の多様性を制御できるメカニズムを導入した提案技術を携帯端末アプリに実装する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ソーシャルメディアにおけるフィルターバブルの解消を目指し、価値観の多様性に配慮した情報推薦技術の実現に取り組んでいる。2023年度の主な成果は以下の通りである。 1) 多様な価値観を含む推薦リストを生成するパーソナライズ推薦法の改良:分離表現学習を導入した新しい推薦アルゴリズムを開発し、推薦精度と多様性の大幅な向上を実現した。2) 異種ネットワークを用いたSNS上のユーザー間の対立の検出法の開発:ユーザー、記事、タグ情報をノードとする異種ネットワークに基づいたグラフ深層学習を新たに開発し、価値観の検出性能の向上を実現した。提案手法は、ネットワーク構造と異種ノードの特徴を同時に学習することで、ユーザー間の対立関係をより正確に捉えることができる。3) ノイズの多いデータセットを用いた深層学習法の開発:ラベルノイズに頑健な深層学習を開発し、SNSデータから構築されるノイズの多いデータセットへの対応を可能とした。このようなノイズに頑健な深層学習モデルを開発し、データセットの品質に依存せず、安定した性能を発揮できるようにした。提案手法は、損失関数の設計とデータ拡張手法の工夫により、ノイズの影響を最小限に抑えることができる。4) 大規模SNSデータの構築:より正確な評価実験を行うため、人手でアノテーションを施したデータセットを構築した。 これらの成果により、ソーシャルメディア利用者に対して、異なる価値観や意見を持つ情報を効果的に推薦する手法を提供することができる。本研究の意義は、フィルターバブルによる情報の偏りや対立構造の悪化を防ぎ、より健全な情報環境の実現に寄与することである。ソーシャルメディアが社会に与える影響の大きさを考えると、本研究の社会的重要性は高いと言える。今後は、開発した手法の実環境への適用とその効果の検証を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、以下の進捗が得られている。 1) 多様な視点の情報を推薦するアルゴリズムの改良を行った。分離表現学習を導入した新しい推薦アルゴリズムを開発し、推薦精度と多様性の大幅な向上を実現した。提案手法の有効性が高く評価され、データ工学と情報マネジメントに関する国内フォーラムにてプレゼンテーション賞を受賞した。また、この成果をまとめた論文を査読付き雑誌に投稿し、現在審査中である。2) SNSからの価値観の検出およびその意味理解法の有効性評価で使用した、機械学習を用いた自動アノテーションで構築されたデータセットに加え、より正確な評価実験を行うため、SNSから収集された投稿に対して人手でアノテーションを施したデータセットを新たに構築した。構築したデータを用いたシミュレーションの実施と評価が今後の課題として挙げられる。3) SNSからの価値観の検出およびその意味理解法の改良を行った。ユーザー、記事、タグ情報をノードとする異種ネットワークを導入し、異種ネットワークに基づいたグラフ深層学習を新たに開発することで、価値観の検出性能の向上を実現した。提案手法の成果をデータ工学と情報マネジメントに関する国内フォーラムにて発表し、この成果をまとめた論文を査読付き雑誌に投稿して現在審査中である。4) SNSデータから構築されるデータセットはラベルの誤りなどノイズが多く含まれる傾向にあることが確認されたため、このようなラベルノイズに頑健な深層学習を新たに開発した。提案手法は順調に成果を挙げ、2023年度内に査読付き論文誌に採録された。 以上の進捗から、本研究はフィルターバブル解消に向けたソーシャルメディア推薦技術の実現に向けて前進していると言える。今後は、大規模データを用いたシミュレーションを実施し、提案手法の精度だけでなく、スケーラビリティや実環境への適用可能性を慎重に検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、研究は順調に推移しているので、当初の計画通り研究を進めることを考えている。今後は、以下の方策に基づいて研究を推進していく。 1) これまで開発してきた手法の性能改善(SNSデータの時間軸の活用):SNSデータには、ユーザーの価値観や対立構造が時間とともに変化していく特性がある。この時間軸の情報を活用することで、提案手法の性能をさらに向上させることができると考えられる。具体的には、時系列データに対応したグラフ深層学習モデルの開発や、時間とともに変化するユーザーの興味関心を考慮した動的な推薦アルゴリズムの構築に取り組む。これにより、より動的で適応性の高い推薦システムの実現を目指す。 2) 構築した大規模データを用いた評価:2023年度に構築した大規模SNSデータを用いて、提案手法のシミュレーションを実施し、その効果を検証する。大規模データを用いることで、提案手法のスケーラビリティや実環境への適用可能性を評価することができる。また、異なる特性を持つ複数のデータセットを用いることで、提案手法の汎用性についても検討する。シミュレーション結果をもとに、手法の改良や新たな課題の発見につなげていく。 3) 実用化に向けた改良(高速化、可視化技術の開発):研究成果を実用化するためには、提案手法の計算効率や応答速度の向上が不可欠である。そこで、並列分散処理や近似計算などの手法を導入し、アルゴリズムの高速化に取り組む。また、ユーザーが推薦結果を直感的に理解できるように、推薦理由の説明や可視化技術の開発にも注力する。これにより、ユーザーの信頼を獲得し、システムの利用促進につなげる。 以上の方策を通じて、本研究で開発したソーシャルメディア推薦技術の性能向上と実用化を目指していく。フィルターバブル問題は社会的に重要な課題であり、本研究の成果が問題の解決に寄与することを期待している。
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