研究課題/領域番号 |
22K18037
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63040:環境影響評価関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
黄瀬 佳之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00818528)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | オゾン / 時刻別暴露 / 光合成 / ブナ / CO2吸収 / 森林 / 夜間 / 影響評価 |
研究開始時の研究の概要 |
対流圏オゾンは植物の気孔から葉内に吸収され、光合成低下ひいては地球温暖化に寄与しうることがモデル計算で明らかになっている。一方、実際の森林での調査で、オゾンによるブナの成長低下程度はモデルによる試算の約3倍であり、大きなギャップがあることが判明した。 先行研究では、森林は夜間のオゾン濃度が高いため気孔が閉じ気味でもオゾンが葉内に吸収されること、さらに、夜間のオゾン吸収量は多くはないにもかかわらず植物への悪影響は極めて著しいことが報告されている。そこで、本研究では夜間影響を考慮したオゾンの新規影響評価モデルを開発し、日本の森林の二酸化炭素吸収量に対するオゾンの影響を評価する。
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研究実績の概要 |
対流圏オゾンは植物の気孔から葉内に吸収されて光合成や成長を低下させる。森林は夜間のオゾン濃度が高いため気孔が閉じ気味でもオゾンが葉内に吸収されること、さらに、夜間のオゾン吸収量は多くはないにもかかわらず植物への悪影響は極めて著しいことが報告されている。しかし、このプロセスはオゾンの影響評価モデルでは考慮されていない。そこで、夜間影響を考慮したオゾンの影響評価モデルを開発し、日本の森林のCO2吸収量に対するオゾンの影響を評価することを目的とした。本年度は、日本の代表的な落葉広葉樹であるブナを対象とし、山梨大学甲府キャンパス圃場に設置したオープントップチャンバーを用いて苗木を前年度から引き続き育成した。処理区として浄化空気区、日中曝露区、夜間曝露区、24時間曝露区の4段階を設けた。曝露時のオゾン濃度は80ppbに制御した。曝露試験の結果、夜間においても気孔が開いており、夜間曝露区ではオゾンの吸収に伴って光飽和の純光合成速度が低下することが明らかになった。しかしながら、その低下程度は比較的小さく、日中曝露区や24時間曝露区のほうがオゾンによる光合成低下は顕著であった。また、ガス交換特性に関して、オゾンによる気孔閉鎖は認められなかった一方で、最大カルボキシレーションや最大電子伝達速度の低下が起こっており、それらが光合成速度の低下に作用することが明らかになった。そこで、CO2吸収に対するオゾンの影響モデルを開発するために、オゾン吸収量と最大カルボキシル化速度との関係を解析した。その結果、いずれの処理区においてもオゾン吸収量に比例して最大カルボキシル化速度が低下する関係が認められた。しかし、夜間のオゾン吸収が植物に顕著な被害をもたらす傾向は認められなかった。このことは、オゾンの影響評価モデルが日中・夜間に関係なく適用できることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的に掲げていた通り、浄化空気区、日中オゾン曝露区、夜間オゾン曝露区、24時間オゾン曝露区の4段階を設けてブナを育成した。各処理区のオゾン吸収量の算出をJarvisモデルによって行い、オゾン吸収量と最大カルボキシル化速度との関係式に基づいて光合成速度に対するオゾンの影響を評価するモデルを開発するなど、目的を達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに申請者らは群落のガス交換(CO2, H2O, O3)推定モデルを開発している。同モデルを、植物表面や土壌への沈着を考慮して気孔からのオゾン吸収量を推定できるように改良する。改良したモデルを用いて、ブナ林のオゾン吸収量の推定を行うとともに、オゾンによるCO2吸収量の低下を試算する。従来は夜間のオゾン吸収量を考慮していなかったが、その考慮の有無がCO2吸収量に与える影響を評価する。
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