研究課題/領域番号 |
22K18043
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹内 悠 京都大学, 工学研究科, 助教 (70835272)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 下水再利用 / 膜処理 / 光触媒 / 微量化学物質 / ウイルス / UV-LED |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、紫外発光ダイオード(UV-LED)と光触媒膜を組み合わせた促進 酸化処理における、ウイルスと微量化学物質の分解除去特性の解明である。本処理は低環境負荷・低コストな促進酸化処理として期待されるが、反応系が最適化されていないうえ、下水中ウイルスや微量化学物質の分解除去特性が明らかにされていない。本研究では、ウイルスや微量化学物質の分解除去率に寄与する因子(UV波長・UV照射強度・光触媒密度・接触時間)を特定し、これらの因子の除去率への影響を定量的に評価することで、処理プロセスの設計指針と運転制御手法を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、下水再利用の安全性の向上に資する新たな促進酸化処理プロセスの開発である。光触媒を担持したセラミック膜と紫外線(UV)照射を組み合わせた促進酸化処理(UV/光触媒/膜処理)に着目し、酸化力に優れるOHラジカルを効率的に生成する光触媒とUV波長の組み合わせを検討した。また、従来の下水処理では除去されない微量化学物質を対象に、異なるUV波長におけるUV/光触媒/膜処理での除去性を評価した。 UV/光触媒/膜処理での光触媒ごとのOHラジカル生成効率を比較すると、TiO2、(SiO2)(TiO2)、SrTiO3の順に高い結果となった。光触媒担持量2.0 mg/cm2において、TiO2を担持したリアクターでは(SiO2)(TiO2) を担持したリアクターの約20倍のMSA生成濃度が得られ、高いOHラジカル生成効率を示すことが明らかとなった。また、254 nm、265 nm、310 nmのUV波長領域では、いずれのリアクターにおいても波長ごとのOHラジカル生成効率に差異は見られなかった。 UV/TiO2/膜処理での微量化学物質の分解除去性を評価するため、下水処理水中の残存が懸念されるDEETを対象に純水系における分解除去実験を行った。光触媒を担持していない膜処理およびUV/膜処理ではDEETは除去されなかったのに対し、UV/TiO2/膜処理では70-82%の除去率が得られたことから、DEETの除去に対するUV/TiO2/膜処理の有効性がうかがえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では下水処理水中に残存する難分解物質の除去を目的として、UV、光触媒、膜処理を組み合わせた促進酸化処理プロセスの開発を試みた。対象とした光触媒のうちTiO2が高いOHラジカル生成効率を示すほか、UV/TiO2/膜処理ではOHラジカルの酸化分解効果により、膜やUV照射では除去できないDEETをある程度除去できることが明らかとなった。また、OHラジカルの生成量とDEETの除去率の観点からは、波長265 nmや310 nmのUV-LEDが波長254 nmの低圧水銀ランプの代替として機能することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はDEETに対する除去性評価にとどまっており、その他の難分解物質や病原微生物に対する性能評価を実施できていない。今後は対象物質を拡充させ、UV/TiO2/膜処理での汚染物質の除去特性を体系的に理解する必要がある。また、プロセスの実用化のためには下水処理水を用いた連続運転性を評価する必要があるが、光触媒をケーキ層として膜に担持している現行のリアクターでは、膜の逆洗時に光触媒が剥離する恐れがあるため、光触媒の膜への固定化法の検討が必要である。さらに、下水二次処理水中の有機物がOHラジカルを消費することにより、対象とする汚染物質の除去率が低下する可能性があるため、除去率の向上のためには、UV/TiO2/膜リアクターを複数配列した多段型プロセスとするなどの工夫が必要である。その上で、処理プロセスの除去性、運転性、経済性について総合的に評価する必要がある。
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