研究課題/領域番号 |
22K18046
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平片 悠河 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 学振特別研究員 (50887164)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | メタン発酵 / 嫌気性消化 / 廃棄物系バイオマス / 下水汚泥 |
研究開始時の研究の概要 |
毎年膨大な量が排出される下水汚泥・家畜排泄物などの廃棄物系バイオマスは、生物学的処理プロセスによる処理効率が悪い。これらのバイオマスの大部分は微生物が分解を苦手とする微生物細胞そのものである。細胞のような複雑な固形性有機物の分解・処理は必然的に遅く、現状の対応策(熱処理・アルカリ性処理)では膨大なコストを浪費してしまう。そこで本研究では、我々が新たに発見した世界的に前例のない、微生物細胞を自身の周りに凝集させ、直接高速で分解する微生物の実態解明を行うとともに、それを利用した革新的なバイオマスの可溶化・消化促進技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、我々が集積培養に成功した微生物細胞を自身の周りに凝集させ、直接高速で分解する微生物の実態解明を行うとともに、これらの微生物細胞分解細菌を利用した革新的なバイオマスの可溶化・消化促進技術の開発を目的としている。 2022年度は、(1)微生物細胞分解細菌の能力解明、(2)微生物細胞分解細菌の分離培養の試みの2項目について研究を実施した。(1) について、死菌細胞を基質としたプラーク法を行い、分解可能な細菌種を調査した結果、グラム陰性細菌 (Bacteroides属)とグラム陽性細菌(Micrococcus属)の両方を分解できることが明らかとなった。さらに、抗生物質の耐性を調査した結果、トブラマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシンの5種の抗生物質を培地に添加してもプラークの形成が確認されたため、様々な抗生物質に耐性を持つことが明らかとなった。今後は、抗生物質の添加とプラーク法を繰り返すことで微生物細胞分解細菌の分離培養を行っていく。 (2)において、すでに集積している培養系に加えて、嫌気性排水処理汚泥から採取したサンプルを中温(30-40度)にて死菌細胞を基質とした液体培養を行い、プラーク法を行った結果、形成されたプラーク中に系状性の細菌が優占していることが確認された。このプラークを採取し希釈培養を行った結果、Bacteroidota門の新属となる種を分離することに成功した。分離培養した菌株について、死菌細胞の分解能力を調査したところ、グラム陽性・陰性細菌に加え酵母も分解できることが明らかとなり、中温を至適条件とする微生物細胞分解細菌の分離培養に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画に従い、我々がすでに集積培養に成功した微生物細胞分解細菌の培養実験を行い、分解能力の評価と抗生物質への耐性といった純化につながるデータの取得ができている。さらにプラーク法によって集積した培養系より、全ゲノム解析を行う準備も進めている。さらに、この集積培養系に加えて、嫌気性排水処理汚泥より、中温において微生物細胞を分解できる新たな微生物株の分離培養にも成功し、その分解能力の評価も行なうなど、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として,引き続き研究実施計画に従って実験を進める。集積培養系からの純化において、微生物細胞分解細菌の増殖をより早めるため、彼らが利用可能な電子受容体の影響を追加で評価する。プラーク法によって集積・純化を進めた培養系から、微生物細胞分解細菌のDNAを抽出し、全ゲノム解析を行うことで保有遺伝子から代謝経路・至適培養条件を推定し、培養実験に反映していく。分離培養に成功した微生物株については、単一の微生物種の細胞だけでなく、実際の下水汚泥(余剰汚泥)の分解実験を行い、汚泥分解能力を評価していく。
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