研究課題/領域番号 |
22K18051
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64030:環境材料およびリサイクル技術関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日野 彰大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (90908782)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 相分離 / 海洋生分解 / マイクロプラスチック |
研究開始時の研究の概要 |
生分解性プラスチック製品は,複数種のポリマーなどを混合・複合化することが多い。性質の異なるポリマー同士を混合するとほとんどが相分離構造を有するため,生分解の進行が不均一になり,遅い部分が微細化しながら残ると考えられる。しかし,海洋中では必ずしも微細化が生分解を促進するとは限らず,複合化によってむしろマイクロプラスチック(MP)の蓄積を招く可能性がある。そこで,本研究では生分解性へ影響を与える要因の一つとして,非相溶系生分解性複合材料における相分離構造に着目し,その生分解挙動を詳細に明らかにすることで,生分解性複合材料によるMPの発生可能性について検討を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では,海洋での生分解性マイクロプラスチック(MP)発生要因の一つとして,非相溶系生分解性複合材料における相分離構造に着目し,生分解性複合材料によるMPの発生と蓄積可能性について検討する。これにより,海洋中へMPを蓄積させない生分解性プラスチック複合材料の設計を可能にすることを目的としている。研究開始1年目である本年度は,先行して実験を進めていた「MP化した生分解性プラスチックの生分解挙動」についてまず検討した。 海洋生分解性を有するポリマーと難海洋生分解性であるポリマーの2種類のホモポリマーを選択し,凍結粉砕によって粉体にした。これらの粉体を標準ふるいによって分級し,四つのフラクションを得た。これを用いて,酵素による酵素加水分解実験,大阪湾沿岸で採取した海水を用いた生分解試験,NMRを用いた分解生成物の分析を行った。これらの結果から,酵素分解の段階において粒径が生分解速度に大きく影響することがわかり,難分解性であれば粒径に関係なく分解できないことを実験的に示した。さらに,酵素加水分解速度および生分解速度は,ポリマー粉体の比表面積の対数と相関があることが分かった。 一方で,「非相溶系相分離構造の不均一な分解によるMPの発生とメカニズム解明」についても研究に着手した。非相溶なポリマーをある手法でフィルム化することで,目視可能な大きさのマトリックス/ドメイン構造を有するフィルムを作製することができた。このフィルムを用い,フィールド試験に供し,その分解性やマトリックス/ドメイン部分の分解挙動の違いについて検討した。これらの結果から,メカニズム解明につながることが期待できる結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた通りに,ホモポリマーの生分解性プラスチックを凍結粉砕によってトップダウン的に作成したMPを用いて,粒径の観点から生分解挙動を検討した。この結果をSCI論文として1報発表することができた。さらに,相分離構造を有するフィルムを作製し,フィールド試験での分解性やマトリックス/ドメイン部分の分解挙動の違いについて検討した。これらの結果から,メカニズム解明につながることが期待できる結果を得ることができていることから,研究はおおむね計画通りであり,順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も引き続き,非相溶系相分離構造を有するフィルムを用いて,MPの発生メカニズムの解明を目指す。特に,電子顕微鏡等を用いて材料自体を直接観察し,相分離構造の変化を評価することに注力する予定である。さらに,MP化した生分解性プラスチックの生分解挙動に関しては,特に有機物の吸着が生分解性に与える影響について評価を行う予定である。これらのデータがまとまり次第,学会やSCI論文として積極的に発表する。
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