研究課題/領域番号 |
22K18053
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山 彰彦 九州大学, 農学研究院, 助教 (50814662)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 河口域 / 塩性湿地 / エコトーン / 生物多様性保全 / 自然再生 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では福岡県の河口部を対象として,日本の環境保全・再生の観点から見逃されがちな「高層塩性湿地」に着眼した野外調査を展開する.まず,高層塩性湿地が存在する場と欠落している場の種多様性を比較し,本湿地景観がエコトーンとして機能していることを検証する.次に,塩性湿地の生物情報,および物理化学情報に基づき湿地を類型化することで,湿地タイプごとの特性を把握する.塩性湿地は多面的な生態系サービスを備えながら,近年の豪雨災害への対策のため,掘削による流下能力の確保が求められている.よって本課題は,優れた生態系サービスの譲受と,豪雨災害の回避・被害低減を両立するための重要な一手として期待される.
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研究実績の概要 |
河口域に形成される植生域(塩性湿地)は多面的な生態系サービスを有する点で,持続可能な開発目標を達成する上で重要な環境である.しかし,塩性湿地が形成される河口域は,人為的な改変を強く受ける場であるため,その保全・再生が急務である.本研目的の1つは,ヨシ原よりも高い地盤帯に形成される植生域のエコトーン機能を評価することである.2つ目の目的は,塩性湿地の生物情報と非生物情報(物理化学環境)に基づき,塩性湿地の特性を評価することである. 本課題では福岡県の河口部を対象とする.目的の達成に向けて,初年度から次年度までに,20水系の塩性湿地を調査し,生物情報と環境情報を集積する必要がある.昨年度(初年度)から今年度にかけて,県内の30水系を踏査し,計101ヶ所の塩性湿地を調査点とした.各調査点において,生物採集に加えて塩分や底質等の物理化学環境の測定を実施した.さらに,空撮画像から調査した塩性湿地のおよその面積を推定した. 得られた101ヶ所の生物データと物理化学環境データを用いて,2つ目の目的である塩性湿地の特性評価を試みた.生物相に基づいた類型化を行った結果,101ヶ所の塩性湿地は塩分と底質,および種数が異なる複数の生物相タイプに類型化された.一方,各類型群の湿地面積に有意な差は認められなかった.これらの結果から,塩性湿地面積よりも,上述した物理化学環境によって出現種数や生物相が規定されていると示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,30水系の河口域で塩性湿地を踏査した.結果として2つ目の目的に関する解析等は概ね完了し,国際雑誌への投稿に向けて準備を進めている.期待以上の成果として,塩性湿地を代表する植物であるヨシの生育する地中塩分の動態を評価した成果が査読付きの和文誌に掲載された.また,塩性湿地に生息する準絶滅危惧種のイトメに関する調査結果が査読付きの国際誌に掲載された. 一方,1つ目の目的に関するデータがやや不足しているため,次年度に補足的な踏査を行う予定である.以上を踏まえると,期待以上の進展が見られたものの,やや遅れている課題も見られるため,全体の研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
今後は1つ目の目的を達成するための補足的な調査,つまり塩性湿地の踏査を行う予定である.初年度同様に野外調査によるデータ集積は生物の活動が活発な春季から秋季に行う予定である.2つ目の目的に関するデータは概ね集積できたため,成果を取りまとめて国際誌への投稿を目指す. 研究当初はコロナ禍であったため,福岡県内に調査地を限定していたが,県外の健全な塩性湿地,あるいは人工的に造成された塩性湿地の踏査を行うことで,さらなる成果が期待できる.そこで,進捗が順調に進み,かつ余力があれば,健全な塩性湿地が現存し,塩性湿地の自然再生が行われている熊本県の球磨川水系と徳島県の那賀川水系での踏査を行いたい.
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