研究課題/領域番号 |
22K18054
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
中野 光議 南九州大学, 環境園芸学部, 講師 (50784956)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 二枚貝 / 生態系エンジニア / 貝殻 / 水路 / 底生無脊椎動物 / 魚類 |
研究開始時の研究の概要 |
シジミ属に属する淡水性二枚貝は、河川・湖沼といった自然水域において生態学的機能を発揮し、付着藻類や底生無脊椎動物の増加をもたらしている。一方で、小規模で人工的な水域は自然水域よりシジミ類が多く生息し、その貝殻が大量に堆積しているにも関わらず、そこでのシジミ類の機能は明らかにされていない。また、シジミ類の機能が魚類に与える影響は明らかにされていない。 本研究は、(1)シジミ類の殻が魚類の採餌に与える影響、(2)貝殻を隠れ家として利用する魚類の生態学的特徴、(3)貝殻が魚類の生存・成長に長期的に与える影響を明らかにすることを目的に行う。
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研究実績の概要 |
当該年度は、貝殻の堆積が底生無脊椎動物の増加をもたらすかどうかを明らかにするため、メソコスムでの実験、および農業水路での調査を行った。 南九州大学の屋外人工水路(メソコスム)にシジミ属、もしくはマツカサガイの殻があるケージと、貝殻がないケージを1ヶ月以上沈め、ケージ内の底生無脊椎動物の種数と個体数を調べた。また、ビデオカメラで水生生物によるケージ利用を撮影した。春季(5~6月)と秋季(9~11月)の合計2回の実験を行うことで、季節の影響も検討した。春季の実験では、シジミ属の貝殻があるケージの方が貝殻なしのケージより底生無脊椎動物の種数と全種の合計個体数が多かった。ユスリカ科とガガンボ科、および貧毛綱の幼虫は、貝殻があるケージでのみ生息が確認された。秋季の実験では、底生無脊椎動物に対するマツカサガイとシジミ属の貝殻の効果は認められなかった。秋季の実験は台風通過直後に行ったこともあり、落ち葉の流入量が多くてケージ上に頻繁に堆積した。落ち葉が底生無脊椎動物の隠れ家や餌場となり、貝殻の効果が不明瞭になった可能性がある。ビデオカメラの映像から、タカハヤがケージ内で採餌を行っていたこと、ヌマエビ科等の底生無脊椎動物が貝殻を住み処として利用していたことが明らかになった。 農業水路での調査は、多数の環境条件が複合的に底生無脊椎動物に影響を与える自然条件下において、貝殻の相対的な重要性を推定するために行った。宮崎県の農業水路に20cm四方のコドラートを60個設置し、コドラートごとに物理学的環境条件(底質粒度、流速、水深)と二枚貝の量、および底生無脊椎動物の量を調べた。底生無脊椎動物全種の合計個体数を目的変数とし、物理学的環境条件のみを説明変数とする一般化線形モデルでは、決定係数は0.219であった。説明変数に貝殻を追加すると決定係数は0.393まで大きくなり、マツカサガイの表面積が有意な正の効果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに実験を行い、データ解析まで行うことが出来た。シジミ属の殻のみを使用する予定であったが、イシガイ目に属するマツカサガイの貝殻を行ってシジミ属と比較する実験も行うことができた。また、メソコスム実験の結果の再現性を農業水路で調べることもでき、重要性と説得力を補強することができた。また、現段階で研究成果を査読付き英文論文1件、学会発表2件として公表している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は予定通り、二枚貝の貝殻を利用する魚類の生態学的特徴を明らかにするため、水槽を用いた実験を実施する。ただし、令和4年度のメソコスム実験の解析結果から、貝殻と魚類との関係はビデオカメラの撮影に加えて別の操作実験を実施することが必要であると判断された。この実験を令和5年度の計画に追加する。
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