研究課題/領域番号 |
22K18057
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
末吉 正尚 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 研究員 (70792927)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | Climate change / Temperature / Thermal regime / Freshwater fish / 水温 / 魚類 / 気候変動 / 将来予測 / 生物分布 / 分断化 / 淡水魚 / 局所絶滅 / 個体群 |
研究開始時の研究の概要 |
将来の気候変動下において、河川に生息する生物は主に上流へ移動することが予想されている。この際、ダム等の横断工作物は移動を阻害し、生物の分布域を縮小させる可能性が指摘されている。本研究では、魚類と水温の予測モデルを開発し、将来の分布変化を予測することを第一の目的とする。次に、ダムによって移動が阻害された際の生息域の縮小を定量化し、影響を受けやすい特徴を明らかにすることで、将来保全すべき種をリスト化する。最後に、ダム周辺での二つの影響緩和策:1. ダム上流への個体の移植、2.下流への選択取水(水温操作)によって、分布域の縮小がどの程度緩和できるか予測、評価する。
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研究実績の概要 |
本年度は、水温予測モデルの精度向上と疑似温暖化による魚類の分布変化予測を行った。昨年度の成果により、夏季の日平均水温が最も多くの魚種の分布に影響していたことが分かったため、水温の予測は最も暑くなる8月の日平均水温をを用いた。昨年度観測を始めた琵琶湖流域のデータを追加して、木曽三川流域と琵琶湖流域で水温と環境要因との関係を一般化線形モデルによって解析した結果、標高と河畔林率(河川50mバッファー内の森林率)が強く影響していることが分かった。標高が高いほど、河畔林率が増えるほど水温は低下する傾向がみられた。また、流域内の火成岩表層地質割合が高いほど、水温が低くなる傾向もみられた。このことから、将来の気候変動下に置いて、河畔林を管理することで水温上昇を抑えられる可能性が示唆された。 次に、現在の水温を2℃上昇させた場合(疑似温暖化)の魚類の生息密度の変化を予測した。魚類データの存在する木曽三川流域で予測した結果、ほとんどの魚種は密度が減少する地点よりも増える地点の方が多い傾向がみられた。この結果は、調査地が扇状地から山地にかけての中上流域に偏っているため、多くの種は温度が上がっても適正水温内に収まるか、若干上流へと分布がシフトするだけでおさまったことが理由として考えられる。一方で、イワナのような源流に生息する魚種は変化なしもしくは減少が予測された地点のみであった。このように、温暖化は河川の源流に近い分布域を有する種ほど影響が負の影響が大きくなることが示された。 次年度以降は、気候モデルによる気温予測値と環境要因から将来の水温を予測し、調査地だけでなく流域全体の魚類の分布変化を予測する。また、琵琶湖流域では採捕調査の代わりに環境DNAを用いた魚類分布調査を行うことで、複数流域で魚類の分布予測が行えるように進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5-6年度の計画は「温暖化時の分布変化予測」「分布域変化の定量化と絶滅リスク評価」」である。本年度は、このうち温暖化時の分布変化の疑似的再現と生息密度変化の定量化を行った。さらに、当初予定していた木曽三川流域だけでなく、琵琶湖流域での水温観測ネットワークを構築することで、2流域での予測を行える体制を整えることができた。 おおむねこの2年間で行う研究計画の土台となるモデル構築と、計画時にはなかった複数流域の比較ができる体制を整えることができ、順調に研究を進展するとともに、より汎用性の高い結果を示すことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度は、今年度開発した水温予測モデルを用いて流域全体の水温予測と魚類の分布変化予測を行い、すでに開発済みの各魚種の生息域サイズ-生息確率モデルを用いて、局所個体群の絶滅リスク評価とダムの有無による絶滅リスクの変化を示す予定である。同時に、琵琶湖流域で環境DNAによる魚類調査を行い、新たに魚類-水温モデルを構築する。 R7年度は、絶滅リスクに応じた各魚種の保全優先順位付けと、影響を受けやすい生態学的特性を明らかにする。そして、木曽三川および琵琶湖流域に存在するダムを対象に、個々のダムで選択取水(下流域の水温を一定温度低下)と上流への個体移植を行うことで、各魚種の分布域がどれだけ拡大するか定量化する。この定量値をもとに、効果の高いダムと緩和策の組み合わせをリスト化する。
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