研究課題/領域番号 |
22K18061
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 祥万 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 特任講師 (80881200)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | エネルギーフロー / エクセルギーフロー / 熱融通 / 地域熱 / 蓄熱 |
研究開始時の研究の概要 |
地域での脱炭素を目指すうえで「熱」の脱炭素化が急がれる。本研究の目的は、熱融通による地域の「熱」の脱炭素ポテンシャルを評価し、効果の高い地域を選定するとともに、熱融通技術に求められる技術要件を明らかにすることである。熱需要や排熱は分散しているうえに長距離の輸送が困難なため、都道府県レベルでの検討では不十分である。また熱融通はカスケード利用が基本であり、温度情報が必要であるため、地域レベルまで落とし込んだエクセルギーフローで議論する必要がある。そこで本研究では温度情報を付した基礎自治体の「地域エクセルギーフロー」を開発し、熱融通技術の効率を定量化、それらを組み合わせて目的を達成する。
|
研究実績の概要 |
本研究は①基礎自治体単位の温度情報を組み込んだ地域エクセルギーフローの作成と妥当性評価,②温度領域別の熱融通技術の効率定義,③地域の熱の脱炭素ポテンシャルの評価と技術改善項目へのフィードバックから成る.①について、昨年は各県の都道府県別エネルギー消費統計をベースデータとし,各基礎自治体レベルの各部門のエネルギー消費は活動量指数として従業員数もしくは事業所数を用いて按分していた.しかしより高い精度の解析のために、生産額が公表されている自治体については可能な限り生産額を活動量指標として採用して按分し、公表されていない自治体については当該都道府県の生産額から、生産額が公表されている自治体の合計を差し引き、従業員数もしくは事業所数を活動量指標として用いて按分した。さらに下水終末処理施設、バイオマス利用施設の調査を進め、独自のデータベースを更新し、エネルギーフローに反映した。次に②として昨年に検討していた気固反応系のみならず相変化を用いた潜熱蓄熱に技術の対象を広げ、潜熱蓄熱の年間シミュレーションモデルを構築した。この潜熱蓄熱は低温の熱融通のみならず高温未利用熱、余剰再エネ電力による蓄熱にも対応している。③において各自治体において、150℃以上の未利用熱を150℃まで蓄熱するとし、100~150℃の蒸気需要に充当することを想定し、未利用熱の蓄熱可能ポテンシャル、出熱可能ポテンシャルを②で算出した蓄熱効率、出熱効率を用いて算出し、未利用熱のカスケード利用による地域の低温蒸気需要の代替効果を試算した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで,全国のエネルギーフローは総合エネルギー統計により明らかになっていたが,熱融通は全国レベルや都道府県単位で実施できず,より狭い範囲で融通する必要があるため,総合エネルギー統計や都道府県別エネルギー消費統計の情報からでは全国の熱融通のポテンシャルを明らかにすることが困難であった.全国の熱融通ポテンシャルを明らかにしたうえで,向上のために必要な熱融通技術の目標までフィードバックするためには,根底となる基礎自治体単位での熱エクセルギーフローを明らかにすることが重要であった. 今年度は昨年度に開発したベースモデルのアップデートとして特に整理がされていないバイオマス熱利用の情報を個別に調査して組み込んだ。また、各自治体において150℃までの未利用熱を回収し、150℃以下の蒸気需要に充当するモデルを構築し、自治体内での蒸気回生ポテンシャルを算出した。また、昨年までに検討した熱融通技術の1つである気固反応系に加えて、今年度は高温未利用熱や余剰再エネ貯蔵にも適用可能な潜熱蓄熱、顕熱蓄熱に焦点を広げ、各技術を適用した場合の年間シミュレーションモデルを構築、基礎自治体レベルのエネルギーフローに組み込む技術情報を生成した。これらにより次年度に技術適用によって各自治体および広域連携により削減できる温室効果ガス排出量を定量化、各技術情報へフィードバックする体制が整った。 これは当初の研究計画通りであり,概ね順調に研究が進行していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,基礎自治体単位のエネルギーフローにおいて,引き続きバイオマス、廃棄物関連の情報をアップデートしたうえで,基礎自治体単位の熱エクセルギーフローの精緻化を目指す. ただし、現在は未利用熱を、業種・燃料種に関わらずすべての低温蒸気需要に充当するモデルを組んでいる。すなわち、バイオマス由来の未利用熱が多く、そのバイオマス由来の蒸気需要も多い場合は、バイオマス由来の未利用熱をバイオマス由来の蒸気を削減するために使われる計算となっている地域も発生しているため、エネルギーフローにおいて各未利用熱、需要の源となる燃料種を特定したうえで、優先的に化石燃料を削減するモデルに修正する。 また,②では各種熱融通技術の基本情報の生成は完了したので、温度域ごとに蓄熱・出熱効率という形態で情報を整理し、エネルギーフローへ組み込むことを目指す。これにより複数の熱融通技術の役割とそのポテンシャルの違いも明確化することが可能となる. さらに③として,得られた全国での熱融通ポテンシャルを向上させるための技術項目を特定し,改善を図ったときの効果を,数値解析を用いた感度解析により明らかにすることで技術の目標にフィードバックする.基礎自治体同士の広域連携によりどの程度熱融通ポテンシャルが向上するのか,向上する地域はどこなのかを特定することも可能であるため,次年度以降に複数の組み合わせ(小規模な都市雇用圏や二次医療圏など)を試行し,広域連携での熱融通ポテンシャルを算出していく.
|