研究課題/領域番号 |
22K18065
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
楊 潔 富山大学, サステイナビリティ国際研究センター, 研究員 (10883556)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 気候変動 / 再生可能エネルギー / 気温 / 降雨量 / 閾値分析 / 中国 / 気候災害 / 電力部門 / 低炭素化 / 化石電源比率 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は電力部門における気候変動による脆弱性に着目し、深刻化している気候災害が地域電源の低炭素化に与える影響について検討する。具体的には、中国の電力部門に着目し、非化石電源比率を電力部門の低炭素化の指標とし、干ばつ、豪雨、台風といった気候災害の種類、発生頻度と強度が地域電力部門の低炭素化に与える影響と、その影響メカニズムについて統計分析を用いて検討する。気候災害が地域電力部門の低炭素化に与える影響を定量化することにより、電力部門における気候変動適応策立案に活用可能な知見を提供することを目指す。
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研究実績の概要 |
気候変動に伴う異常気象の激甚化・頻発化が観測され、電力インフラにおける気候災害リスクへの脆弱性が高まるとともに、非化石電源比率の高い電源構成において電力の安定供給は大きな課題となっている。本研究では、2003年から2019年までの17年間の地域データに基づき、統計分析を用いて気候災害が地域電源の低炭素化への影響を分析することを通じて、電力部門における気候変動適応策のあり方について検討することを目的としている。具体的には、風力発電と太陽光発電の導入設備容量を電力部門の低炭素化の指標とし、寒波、熱波、干ばつ、豪雨といった極端な気温や降雨量の変化から生じる気候災害が再エネの導入に与える影響を検証した。 その結果、まず気候変動の影響がエネルギーの種類や極端気象の性質により異なり、極端気象の発生頻度と強度が重要な役割を果たすことが示唆された。また、風力発電は熱波よりも寒波の影響が大きく、太陽光発電は寒波と熱波の両方から負の影響を受けることが分かった。全体的に見ると、降水量に関わる異常気象は風力発電に大きな負の影響を与えない一方で、太陽光発電は干ばつに対する適応性が高く、豪雨に対する脆弱性が高いことが確認された。さらに、異質性分析では、太陽光発電が風力発電よりも異常気象の影響を受けやすく、異なる季節において太陽光発電容量により顕著な負の影響を与えることが示された。また、風力発電は北部および南西部地域での異常気象に対してより脆弱であり、太陽光発電は東部地域でより影響を受けることも明らかにした。これらの発見は、再生可能エネルギーの割合が高い地域において気候脆弱性が高い可能性があること、および季節と地域による顕著な異質性が存在することを強調した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、当初の研究計画通りに、研究課題は順調に進んでいる。本研究の研究期間は全体で3年であり、R4年度の前半には主にデータの収集・整理に集中した。具体的には、2003年から2019年にかけて中国各県の再生可能エネルギーと気候に関するデータセットを構築し、研究補助員の協力を得ながら11月までにデータの収 集と整理を完了した。R4年度の後半では、統計分析と初稿の作成に向けて研究活動を進めていた。R4年度の11月からは予定通りに統計分析を行い、その結果を研究会で発表することで有益なコメントを得ることができた。そして、ヨーロッパ環境資源経済学会での研究発表に向けて、2月には論文の初稿を完成した。 R5年度の7月に第28回ヨーロッパ環境資源経済学会(EAERE2023)に参加し、研究発表を行なった。また学会で有益なアドバイスを得ることができた。R5年度の後半では、学会で得たコメントに基づき、より詳細な統計分析を行うことで、研究結果の信頼性を高め、論文の初稿の修正・改善も計画通りに完成した。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度からは、以下の推進方策に取り組んで研究を進める予定である。①R6年度5月中に論文原稿を英文校正に提出し、最終修正が終わってからプレプリントとしてSSRNに投稿する。②R6年度5月中にSSRNに投稿すると同時に、国際学術誌に投稿し、R6年度内に論文が掲載されることを目指す。③投稿から掲載までの間に、日本国内の環境経済学研究会に参加し、また気候変動分野の専門家を招待し、小規模研究会を開催することで研究成果の発信や分野への学術貢献に努める予定である。
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