研究課題/領域番号 |
22K18080
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
山本 健介 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (60829703)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | イスラエル / パレスチナ人 / ヨルダン / 若者運動 / 右傾化 / パレスチナ / エルサレム / 右派 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、2010年代以降のパレスチナ問題の質的な変容を、エルサレムをめぐる紛争の事例から読み解くものである。特に、この時期に主流化したイスラエル右派の政治実践と、パレスチナ人のあいだで新たなアクターとして浮上した若者勢力の政治・社会運動に注目する。その際、本研究はそれぞれの行動を静態的な対立の構図ではなく、相互に影響関係を持って展開するものとして捉えることで、紛争の動態的な変遷を解明する。この分析を通じて、最終的な紛争解決に関わる将来像ではなく、眼前にある社会のあり方や性質が紛争の主たる争点として先鋭化されていく様子を中長期的なプロセスのなかで描出する。
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研究実績の概要 |
2022年度は文献資料の解析と分析、学会での報告を実施し、2010年代以降のイスラエル政治の右傾化のなかで新たに立ち上がってきたパレスチナ人の若者運動の動向について研究を行った。 まず東エルサレムの公共領域をめぐるイスラエル政府とパレスチナ人の抗争についての研究として、2019年に生じた「ラフマ門事件」を取り上げた。この事件を扱う上ではローカルな次元での紛争の展開だけでなく、アメリカのトランプ大統領による和平案の発表や水面下で進んでいたイスラエルとアラブ諸国の関係正常化のなかで、ヨルダンやサウジアラビア、トルコといった地域諸国がエルサレムの聖地管理権をめぐり様々な主張を展開していったという国際的な文脈が重要となる。現地紙の報道などを読み込み、この域内政治、国際政治の動きとローカルな紛争の動態を接合して、分析の結果を国際学会で報告した。また、イスラエル国内に事実上併合されたエルサレムの特殊な文脈を際立たせるため、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区といった他の占領地における若者運動と比較しつつ、若者たちが緩やかなグループ形成を通じて社会秩序の維持を目指す動きについて総合的な調査・分析を行った。特に事例としてはコロナ禍における相互扶助の活動などに関する現地の報道やSNSでの言説などを解析し、その結果の一部を一般向きの講演で報告した。さらに、右傾化するイスラエル政治のなかで苦境に置かれたイスラエル市民のパレスチナ人についても研究会で報告を実施し、エルサレムに住むパレスチナ人の運動との共通性と差異性について指摘した。 2022年にエルサレムで生じたイスラエル政府とパレスチナ人の衝突においても若者勢力の存在感は大きく、本研究課題の重要性をますます確信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は2010年代におけるパレスチナ問題の新展開を中長期的な変化として捉える研究の一環として、エルサレムの公共領域と公衆衛生分野をめぐる紛争問題について取り上げた。いずれもこれまでの研究で言及されてきたものの詳細な分析が加えられてこなかったトピックであったが、その研究に着手し成果を発表できた。こうした研究発表や講演を通じて、次年度以降に論文として公表する内容について、様々なアドバイスを得るとともに自身の考えを深められたことは大きな意義があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施した国際学会での発表と一般向きの講演内容は、一層議論をブラッシュアップし、現地での追加調査を踏まえた上で、論文にまとめ査読誌に投稿する予定である。また、エルサレムのパレスチナ人が一定の自治権を行使している教育分野(制度やカリキュラム)をめぐるイスラエル政府とパレスチナ人の角逐について、現地語文献の収集と聞き取り調査を実施し、2023年度中に学会や研究会での報告を行う予定である。次年度は、新型コロナ・ウイルスの感染拡大と情勢悪化によって2022年度に実施できなかった現地調査を行い、イスラエル政治の右傾化とパレスチナ人の若者運動に関連した新たな研究トピックの開拓にも挑戦したい。
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