研究課題/領域番号 |
22K18115
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
田中 亜以子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (50851953)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ジェンダー史 / 性別観念 / 近代日本 / 心の性別 / ジェンダー表現 / ジェンダー・アイデンティティ / 「心の性」 / 性別観 / 女形 |
研究開始時の研究の概要 |
「ジェンダー」という言葉は、性差に対する私たちの認識を確実に変化させた。では、明治期に「性別」という言葉が新たにつくられたとき、それは人々の認識をいかに変化させたのだろうか。本研究は近世後期から近代にかけての男女差に関する言説を辿るなかで、明治期につくられた「性別」という観念が、いかに、どのようなものとして構築されていったのかを明らかにするものである。具体的には、男女差に関する医学的・科学的言説や民衆思想・民衆宗教における言説の分析を通して、生まれつきの男女差に対する理解の変容を明らかにするとともに、そうした変容が性表現や性役割の理解の仕方に与えた影響を検討する。
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研究実績の概要 |
2023年度については、江戸時代の性別観を明らかにする研究を行った。 具体的には、「変生男子」「変生女子」とよばれる江戸時代の性転換現象に関する言説に着目し、性転換がどのようなものとして把握されていたのかを分析することを通し、同時代の性別観念のあり様を考察した。その結果、以下のことが明らかになった。 ①性器は、男女の区別を示すもっともわかりやすい指標とみなされていた。しかし、②性器自体が性差を生み出す源泉ではなく、性差の本質は「気」とよばれる陰陽のエネルギーにあると考えられていた。そして③「気」の流動性によって、物理的な身体も男性から女性へ、あるいは、女性から男性へと変化することもあり得ると考えられていた。④このように身体を流動的なものとみなす一方、男女の服装や役割などは、社会的ルールに厳格に従うことが求められた。⑤ただ、男女の性差のすべてが社会的ルールと考えられていたわけではなく、気質や動作など、「気」によって本質的に形づくられるとされていた性質も存在した。⑥さらに男性を形作る「陽」のエネルギーが女性を形作る「陰」のエネルギーよりも優れているという理解から、男女の間には優劣や上下関係が存在するとされていた。 以上、①から⑥の特徴を近代以降の性別観と比較するならば、江戸時代には近代以降とは異なる身体観が存在し、身体の性別と性表現や性役割の関係も異なっていたことがわかる。これらの内容については、2024年3月14日から17日にシアトルで開催されたAsssociation of Asian Studiesにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
体調不良により、論文化が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
Association of Asian Studiesにて発表した内容を早急に論文化する。その上で、近世から近代にかけての性別観念を理解するうえで重要な、感情や気質のジェンダー化について検討する研究に従事する。近代における生物学的な性別観は、男女の間のさまざまな本質的性差の構築によって可能になった。したがって、本研究では江戸末期から明治期にかけて、男女の感情や気質のあり方について、新たな二元論的考え方が登場していった過程を明らかにする。
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