研究課題/領域番号 |
22K18126
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長濱 弘季 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00804072)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 低エネルギーイオンビーム / イオンビーム質量分離 / 磁気光学トラップ |
研究開始時の研究の概要 |
現代物理学が抱える大きな謎の一つである、物質-反物質非対称性の解明を目指すために、重元素・フランシウム(Fr)の永久電気双極子モーメント(EDM)を高精度で探索するための基盤を開発する。EDMの測定精度は、測定対象となるFr原子の個数に依存するため、本研究では、加速器で生成したFr原子を高効率で磁気光学トラップに供給し、世界最大個数のFr原子を捕獲することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究において、加速器を用いて生成したフランシウム(Fr)原子を高効率で磁気光学トラップで捕獲する装置を開発することで、高精度で電子EDM探索を行う基盤を作る。 当該年度では、加速器で生成したFrを一価の陽イオンビームとして引き出し、さらにビームエネルギーを100eVという低エネルギーで中性化標的のイットリウム箔に照射することに成功した。また、ビーム輸送系の電極に交流電場を印加することで、ビーム中に含まれる不純物を約70%減らすことができ、イオン光学シミュレーションと概ね一致することを確認した。以上により、ビーム不純物によるイットリウム箔表面汚染を抑制し、また、Frイオンを低エネルギーで照射することで、箔表面近傍にFrイオンを付着させることができた。イットリウム箔を加熱することにより、電子再結合反応で中性化したFr原子を箔表面から脱離させ、磁気光学トラップへと輸送するが、その中性化および脱離効率は、イットリウム箔の表面状態に強く依存する。また、脱離に必要な温度は、Frが箔表面に近いほど低くなることがわかっており、なるべく低温で加熱することで、磁気光学トラップセルの真空度悪化を抑制することが、トラップ効率を高める上で重要である。 イットリウム箔は大気中で安定な酸化膜を約120層形成することが知られており、さらにその上に、汚れの層や吸着分子膜の層を形成している。これらの層をアルゴンイオン銃によるスパッタリングで予め除去することで、本来の純粋なイットリウム層を露出させ、Fr原子の中性化・脱離効率を最大限高めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度では、従来のビームエネルギー(1keV)の10%のビームを高効率にイットリウム箔まで輸送することに成功した。また、Fr生成源の金標的近傍に設置された2つの偏向電極に、逆位相の交流電場を印加するための回路を設計・開発した。交流電場の振幅・周波数・位相を最適化することで、ビーム中に含まれる不純物をおよそ70%減少させたことを確認した。さらに、イットリウム箔表面にある酸化膜層などの不純物層を、アルゴンイオン銃を用いたスパッタリングで除去することに成功し、箔表面に付着したFr原子のうち30~60%を300℃という比較的低温の加熱で脱離させることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後、イットリウム箔の表面清浄化を推進するために、アニーリング処理を検討する。さらに、イットリウム箔から脱離したFr原子のうちキャピラリーを通過した個数を測定する装置、およびFr原子を捕獲するための磁気光学トラップセルを開発する。セル内壁にはFr原子の吸着を防止するコーティングを施す必要があり、コーティング材として、パラフィン、OTS、PDMSなどが有力候補である。これらの材料を真空蒸着によりセル内壁にコーティングするための装置を開発する。
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