研究課題/領域番号 |
22K18132
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
藤原 孝将 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, 研究員 (50847150)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | メスバウアー分光 / 放射光 / 核共鳴散乱 / X線集光 |
研究開始時の研究の概要 |
メスバウアー分光法はγ線による無反跳核共鳴励起エネルギーを精密に分析することで、磁気状態や化学種の同定等が可能な分析手法である。本研究では発散角の小さい放射光メスバウアー光源を利用し、これを10μm程度まで集光した光を使って2次元走査計測と深さ弁別計測を組み合わせた3次元放射光メスバウアー顕微鏡の開発を行う。これにより鉄化合物の化学種や結晶相、磁気状態等の分布を非破壊的に観測することを可能にする。またこの技術を用いてレーザーピーニングされた試料の化学相分布の3次元的な可視化を行う。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、10μm程度まで集光した放射光メスバウアー光源を使い、2次元走査計測と内部転換電子のエネルギー弁別計測を利用した深さ分解計測を組み合わせた放射光3次元メスバウアー顕微分光測定の開発を行っている。令和4年度までに、集光光学系および多目的4軸回折計の整備が完了し、当初の目標に近い、20μm程度の集光放射光メスバウアー光源の開発に成功している。さらにこの集光ビームを用いて、3次元計測の測定を57Fe試料をレーザーピーニング加工された試料を用いて行うことができていた。 令和5年度はこのスペクトルを解析し、3次元空間に改質相を可視化させることに成功した。このように鉄の化学相を3次元可視化させる新規測定技術として特許出願を行った。また高分解能分光器の導入を行い、高出力化させることに成功したものの高分解能分光器からの出力は想定より少なかったため引き続き調整を行う。時間波高変換器の開発は想定以上に難航しており、今後別の手段等も含め再考の必要がある。また低温の内部転換検出器の開発も難航しているところである。 対外活動ではメスバウアー産業利用会や、メスバウアー分光研究会などの国内の研究会を中心に顕微計測技術について発表を行い、ニーズを探っている。 更に放射光学会若手研究会にてこの3次元計測について招待講演を行った。今後ISIAMEなどのメスバウアーの国際会議や鉄鋼協会等でも発表を検討している。 以上の成果は原著論文1件、国内学会・研究会4件、特許出願1件の発表に結びついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた集光ミラーの整備や、多軸回折計の整備は予定通り完了し、さらに新型のマルチチャンネルスケーラーを用いた多チャンネルの波高弁別計測も問題なく実施した。さらに内部転換電子検出器も問題なく動作したため、57Feにレーザーピーニング処理を施した試料の測定及び解析は令和5年度中に行うことができており、特許出願も行うことができた。特許出願の関係とデータの再検討で少し時間がかかってしまったもののこれは当初の予定よりも若干早く進行している。また近日中に論文投稿を予定していることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは令和6年度以内に放射光3次元メスバウアー顕微分光装置および57Feのレーザーピーニングにかかわる論文の出版を目指し、同時に、より高分解能の深さ分解計測を行うための波高-時間変換器の開発や正しい化学相の分析を行うための低温用内部転換検出器のR&Dを行う。同時にメスバウアー分光の産業利用に関わる国際シンポジウムであるISIAMEや鉄鋼協会などで積極的な発表を行うことでこの測定技術を広くアピールするとともに産業利用への展開を考えていく。 令和7年度以降はさらに高焦点顕微鏡と組み合わせることで、鉄鋼材の欠陥部や腐食箇所に着目した測定を可能にする。化学相の精密な同定や特殊環境下での測定のために低温・高温あるいは電場印加可能な内部転換電子検出器の開発を行い、自然鉄の実材料で測定ができることをめざしていく。また国内外の学会や論文発表し、3次元放射光メスバウアー顕微分光の利用の展開を探る。
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