研究課題/領域番号 |
22K18135
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
大嶽 陽徳 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 助教 (20782551)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | 建築史 / ローカルアーキテクト / 更田時蔵 / 建築技術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で取り上げる建築家・更田時蔵は、大正12年に栃木県で最初の建築設計事務所を開設したのち、『旧大谷公会堂』(1926年竣工、国登録有形文化財)など同県内で多くの建築設計に携わったローカルアーキテクトの先駆者である。こうした近代日本における重要な建築家のひとりである更田時蔵に関する図面資料のなかで、近代を代表する建築技術である鉄筋コンクリート造および組積造の建築作品に限定して、技術的な側面の分析を行い、同時代に中央で定められた構造規準や同じ地域内で建てられた建築との比較を通して、更田時蔵の建築技術のオリジナリティと近代日本の建築技術のローカリティの一端を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究では、近代日本のローカルアーキテクト・更田時蔵による鉄筋コンクリート造(以下、RC造)および組積造の建築作品の図面資料を中心に、技術的な側面の分析を行い、更田時蔵の建築技術のオリジナリティと近代日本の建築技術のローカリティの一端を明らかにすることを目的としている。 この目的を達成するために、まず、更田時蔵によるRC造および組積造の建築作品に関する図面資料や現存作品資料を整理し(STEP1)、次に、それらと中央で定められた技術規準を比較して、近代のローカルアーキテクトによる中央の建築技術の導入態度を明確化し(STEP2)、最後に、大正~昭和初期に同じ地域で設計された、RC造および組積造の建築と比較することで、建築技術に関する更田時蔵のオリジナリティや近代日本のローカリティを明らかにする(STEP3)。 令和4年度は、設計図書を保管している「フケタ設計」の保管状況や移築解体中である『旧大谷公会堂』(1928年設計、大谷石による組積造の壁面に木造の小屋組、一部RC造)の工事状況を鑑みて、『旧大谷公会堂』を中心にSTEP1〜STEP3まで取り組み以下の2点の成果を挙げた。第一に、『旧大谷公会堂』に関する資料を収集・整理し、設計図書8点、竣工時の写真2点、解体工事に関する写真資料1377点などがあることを明らかにした。この時、施工段階における設計図書からの変更点を確認することで、更田時蔵は建物を建てる際に、建物の正面で意匠性を重視する一方で、建物の背面で技術的な簡潔性や施工的な容易さを重視していたことも解明した。第二に、RC造および木造の箇所に関しては、関東大震災後に中央で改定された技術規準を遵守しているのに対し、大谷石による組積造の箇所に関しては、それらを満たしておらず、技術的には宇都宮市の農村集落の大谷石建造物に近く、地域性を重視している態度を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、近代日本のローカルアーキテクト・更田時蔵による鉄筋コンクリート造(以下、RC造)および組積造の建築作品の図面資料を中心に、技術的な側面の分析を行い、更田時蔵の建築技術のオリジナリティと近代日本の建築技術のローカリティの一端を明らかにすることを目的としている。 この目的を達成するために、まず、更田時蔵によるRC造および組積造の建築作品に関する図面資料や現存作品資料を整理し(STEP1)、次に、それらと中央で定められた技術規準を比較して、近代のローカルアーキテクトのよる中央の建築技術の導入態度を明確化し(STEP2)、最後に、大正~昭和初期に同じ地域で設計された、RC造および組積造の建築と比較することで、建築技術に関する更田時蔵のオリジナリティや近代日本のローカリティを明らかにする(STEP3)。 令和4年度は、設計図書を保管している「フケタ設計」の保管状況や移築解体中である『旧大谷公会堂』の工事状況を鑑みて、『旧大谷公会堂』を中心にSTEP1〜STEP3まで取り組み以下の2点の成果を挙げた。第一に、『旧大谷公会堂』に関する資料を収集・整理し、設計図書8点、竣工時の写真2点、解体工事に関する写真資料1377点などがあることを明らかにした。第二に、RC造および木造の箇所に関しては、関東大震災後に中央で改定された技術規準を遵守しているのに対し、大谷石による組積造の箇所に関しては、それらを満たしておらず、技術的には宇都宮市の農村集落の大谷石建造物に近く、地域性を重視している態度を見出した。 これは、交付申請書に記載の研究実施計画に対して、図面資料の保管状況や現存作品資料の工事状況に応じて、STEP1よりも、STEP2とSTEP3を先行させて取り組んでいる状況であり、今後他作品で同様の分析をすることで、目的を達成することが可能であることから、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、近代日本のローカルアーキテクト・更田時蔵による鉄筋コンクリート造(以下、RC造)および組積造の建築作品の図面資料を中心に、技術的な側面の分析を行い、更田時蔵の建築技術のオリジナリティと近代日本の建築技術のローカリティの一端を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、まず、更田時蔵によるRC造および組積造の建築作品に関する図面資料や現存作品資料を整理し(STEP1)、次に、それらと中央で定められた技術規準を比較して、近代のローカルアーキテクトが中央の建築技術を導入方法を明確化し(STEP2)、最後に、大正~昭和初期に同じ地域で設計された、RC造および組積造の建築と比較することで、建築技術に関する更田時蔵のオリジナリティや近代日本のローカリティを明らかにする(STEP3)。 令和4年度は、設計図書の保管状況や移築解体中である『旧大谷公会堂』の工事状況を鑑みて、『旧大谷公会堂』を中心にSTEP1〜STEP3まで取り組んだ。令和5年度は、STEP1における図面資料の情報の整理(設計図書のスキャンや資料リストの作成)を進めるとともに、現存している『旧大内村役場』については、配筋探査等の実地調査を行い配筋方法などを図面化して整理したうえで、STEP2とSTEP3まで取り組む。そして、令和6年度に、図面資料の情報を整理したRC造および組積造の建築作品を対象に、STEP2とSTEP3に取り組むことで上述の目的を達成する。 これまでの取り組みのなかで、近代日本のなかでのローカルアーキテクトの建築技術の位置付けが可能であることを認識しているものの、日本という枠組みを超えた国際的な視野のなかでの位置付けの必要性も感じている。RC造および組積造といった近代に日本が輸入した建築技術の震源地の西洋の建築に関する分析も実施し、より実りのある研究成果を得る予定である。
|