研究課題/領域番号 |
22K18136
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
青木 宏展 千葉大学, デザイン・リサーチ・インスティテュート, 助教 (20887731)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | デザイン / 災害伝承碑 / 3Dデータ / 触れる展示 / 災害伝承 / 地域防災 / 文化財 |
研究開始時の研究の概要 |
災害が多発する日本においては、その被害を伝え、警鐘を鳴らす石造物が数多く建立されてきた。しかしながら、それらのなかには災害伝達の機能が潜在化し、適切な管理がなされることなく消失の危機に瀕するものも少なくない。そのため、地域の歴史・風土のなかで育まれた造形物の維持・管理・継承体制を再構築し、生活者が造形を認知する機会が必要とされている。そこで本研究は、地域の災害を伝える石造物の造形3Dデータを取得・活用し、視覚障害者をはじめとした、多様な生活者らに防災意識の醸成と共有化を促進するための手法を導出することを目的とする。
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研究実績の概要 |
初年度である本年度は、主に以下を実施した。 ①千葉県安房地域における災害伝承碑の調査:千葉県安房地域において、現状報告のなされている災害伝承碑に加え、地域の生活者からの聞き取り調査により、必ずしも十全な調査がなされていない関東大震災関連の災害伝承碑を確認した。本件については、3Dデータの取得を進めるとともに、地域の学芸員らとも協働の上、引き続き調査を進めたい。 ②石造物の碑文の3Dデータの明瞭化のための試行:東京都墨田区内に位置する石造物について、その碑文を3Dデータ内で明瞭に確認するための3Dデータ生成の試行を行った。 ③「触れる展示」についての試作・公開と有識者等からの評価:東京都墨田区内に位置する「海難供養碑」について、3Dデータを活用し、視覚障害者をはじめとした多様な生活者へ石造物を公開するための試みとして「触れる展示」に着目し、触れる展示の試作を行うとともに、試験的な公開を行うとともに、視覚障害者ならびに有識者からの評価を得た。評価の結果、本研究の目的である「多様な生活者らへ向けた防災意識の醸成と共有化を促進する」ための指針として、「対象の災害伝承碑が有する諸情報の抽出・整理・把握を徹底したうえで、目的に応じた立体モデル等を制作する」ことを導出した。災害伝承碑の内容のみならず、災害伝承碑には、その対象が有する「造形規模」「材質」といった物質的な情報に加え、「歴史・成立背景」「制作技法」「地域における位置付け」等多くの情報が潜在している。それらの情報を活用し、鑑賞者らが当該伝承碑に対して、興味・関心を抱くことができるような共有手法を引き続き考究していきたい。 いずれにせよ、対象とする災害伝承碑に対し、3Dデータの「取得・保存・活用」を一連の活動と位置付け、それらの実践に基づきつつ、研究を進展させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記したように、千葉県および東京都墨田区において災害伝承碑の調査ならびに3Dデータの生成、活用に関する実践を行った。その結果、当初予定していた以外にも、必ずしも十全な調査のなされていない災害伝承碑を確認することができた。このように潜在的な災害伝承碑はまだ地域に点在すると考えられ、潜在的であるがゆえに消失も懸念されることから、引き続き調査を進めつつ、それらの3Dデータ取得を行っていきたい。 また、3Dデータの活用については、「触れる展示」の試験的な実施や評価等、当初計画していた以上の活動を展開できた。これらの知見に基づき、引き続き伝承碑の共有化の手法を模索していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度にあたっては、引き続き災害伝承碑の調査を行うとともに、3Dデータの「取得・保存・活用」を一連の活動と位置付け、それぞれについて実践活動を展開したい。 とりわけ、3Dデータの取得については、上述の通り、潜在的な災害伝承碑を中心に実施したい。また、3Dデータを取得する活動自体が、災害伝承碑への観察や気づき、ひいては造形を超えて地域への認識の深化等につながると想定されることから、生活者らとともに3Dデータの取得を行う手法についても検討したい。また3Dデータの活用については、引き続き「触れる展示」を主軸として、多様な生活者へ造形を共有する方策を考究したい。
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