研究課題
若手研究
細胞の外部刺激を様々な受容体で感知する一次絨毛(cilia)は、先端が切り出されcilia小胞として細胞外へ放出することが知られているが、哺乳類細胞においてcilia小胞の生理活性は十分に理解されていない。一方、申請者らは、少子高齢化に伴う血液製剤の供給不足解消に向け、iPS細胞から巨核球細胞株を作製し、生体内の血小板造血観察に基づいた乱流刺激による生体外血小板製造培養法を開発した。本研究では、乱流刺激によって放出されるcilia小胞内の生理活性物質による巨核球成熟メカニズムを究明し、巨核球分化過程で観察される成熟不均一性の本態を解明する。
細胞の外部刺激を様々な受容体で感知する一次絨毛(cilia)は、先端が切り出されcilia小胞として細胞外へ放出することが知られているが、哺乳類細胞においてcilia小胞の生理活性は十分に理解されていない。一方、申請者らは、少子高齢化に伴う血液製剤の供給不足解消に向け、iPS細胞から巨核球細胞株(imMKCL)を作製し、生体内の血小板造血観察に基づいた乱流刺激による生体外血小板製造培養法を開発した。本研究では、乱流刺激によって放出されるcilia小胞内の生理活性物質による巨核球成熟メカニズムを究明し、巨核球分化過程で観察される成熟不均一性の本態を解明する。本年度は、imMKCLにおけるcillia局在の可否について検討を行った。ciliaマーカーであるacetyl-α-tubulinとARL13bの局在を免疫染色法で調べたところ、静置、振盪培養共にimMKCL細胞表面突起部のacetyl-α-tubulin上にARL13bが観察されなかった。また、ciliaメカノセンサー生理機能の一つである細胞内カルシウム流入を振盪培養条件下で調べたところ、せん断応力依存的なカルシウム流入は観察されなかった。最後に、静置培養下でのimMKCL成熟期を透過型電子顕微鏡で詳細に観察したところ、従来型のcilia構造と異なる絨毛突起が観察された。以上の結果から、imMKCLの乱流刺激応答はcilia非依存的な経路が存在することが示唆された。そこで、乱流環境下のせん断応力で応答するメカノイオンチャネルに着目し、imMKCLにおける乱流環境下でのimMKCLの細胞内外における陽イオン勾配を調べたところ、静置培養と比べ乱流環境下のimMKCL成熟期では、細胞外へのK+イオンの放出が抑制されていることが示唆された。以上の結果より、高効率な血小板産生にはK+イオンの放出量が重要であることが示唆された。
3: やや遅れている
当初着目していたcilia構造が、従来型のcilia構造と異なる絨毛突起であることが示唆され、cilia非依存的な経路を探索したためやや遅れている。乱流環境下のimMKCL成熟期において細胞外へのK+イオンの放出が抑制されていることを見出したため、今後は乱流環境下でのK+イオンチャネル経路に着目し研究を遂行する。
K+イオンチャネル阻害剤を用いて血小板産生数を計測する。imMKCL成熟期での振盪・静置培養条件下でのRNA seq解析を通じて、K+イオンチャネルの発現を比較し、血小板産生に重要なK+イオンチャネルをスクリーニングする。候補遺伝子を過剰発現もしくは発現制御をしたimMKCLを作製し、細胞内のK+イオンの動態観察や血小板産生能を比較し、血小板産生に重要なK+イオンチャネルを同定する。
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検査と技術
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Blood
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