研究課題/領域番号 |
22K18199
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山脇 夢彦 福井工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (90887085)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 光有機触媒 / 光重合 / 二分子型光有機触媒 / 脱炭酸反応 / ウイルス対策材料 / 有機光触媒 / ポリマー合成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機光触媒を使用した穏和な条件でウイルス受容性有機分子へ容易にポリマーを付与できる技術開発を行う。本研究は、以下の特徴により新規性・独創性に優れ、波及性が高い。 ・可視光LEDによる穏和な反応により、糖やペプチドにポリマーを付与できる。 ・2分子型有機光触媒よる選択的反応と触媒回収が容易なクリーンな技術である。 ・RAFT剤の適応により分子レベルで制御された抗ウイルス材料やウイルス検知薬を作れる。
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研究実績の概要 |
・令和4年度【可視光LED使用した有機光触媒による糖やペプチドへのポリマー付与検討】 405nm可視光LEDを使用し、申請者が最近の研究で発見した有機光触媒ジベンゾクリセン (DBC)およびジシアノベンゼン(DCB)を用いて糖カルボン酸やペプチドのカルボン酸部分を 起点にアルキルラジカルを生成させ、アクリル酸モノマーを用いてポリマーを付与する技術の確立を行った。具体的には、糖骨格カルボン酸やバリンなどのアミノ酸やジペプチド(10mM)を用いてDBCおよび1,4-DCB(2mM)、モノマー(1M)存在下、アルゴンガス雰囲気下で18WBlueLED光(可視光)を2時間照射し光脱炭酸させポリマーを得た。モノマーとしてはアクリル酸エチル、アクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸メチルなどのアクリル酸モノマーや、アクリロニトリルが適応でき、それぞれの対応するぽりまーが得られた。また、それぞれ分子量10000~30000程度のポリマーが得られた。また、光触媒の種類や濃度を様々実験したところ、光触媒の濃度を高くしたり、逆電子移動が速いジシアノナフタレンやジシアノアントラセンの使用により、比較的分子量が小さいポリマーが得られることが分かった。このことより、光触媒の濃度や種類によって分子量を調整できることが明らかになった。 また、光脱炭酸反応が想定している反応機構で進行しているか確認するために、モノマーをアミノ酸やペプチドに対して当量加え様々な実験を行った。結果として、想定している反応機構により、光脱炭酸反応が進行していることが明らかになり、次年度に計画している選択的合成の糸口を得た。 この結果は、査読あり学術論文誌のEuropean Journal of Organic Chemistry, 2022, e202201225.に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に開発目標としていた【可視光LED使用した有機光触媒による糖やペプチドへのポリマー付与検討】は実験により明らかにすることができ、様々な反応基質や、適応できるモノマーについても明らかにすることができた。また、光触媒の種類や濃度についても十分に実験することができ、分子量の調整ができることが分かった。また、反応機構においても、低分子単位で明らかにすることができ、国際的な学術論文誌[Visible-light-induced Decarboxylative and Deboronative Radical Addition to Alkenes in Two-Molecule Photoredox System Using Dibenzo[g,p]chrysene M. Yamawaki, R. Hashimoto,Y. Kawabata,M. Ichihashi, Y. Nachi, R. Inari, C. Sakamoto, T. Morita, Y. Yoshimi. European Journal of Organic Chemistry, 2022, e202201225.に掲載され、本研究の基盤となる研究をすることができた。 上記より、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
R4年度の【可視光LED使用した有機光触媒による糖やペプチドへのポリマー付与検討】より、適切な反応条件を見出すことができたため、次のステップへ移行する。当初の計画通り、令和5年度【有機光触媒の種類に応じた選択的ポリマー付与技術の確立】を行う。本研究の有機光触媒はその種類や組み合わせによって酸化還元電位が変化し、1級カルボン酸や3級カルボン酸などを選択的に反応できる。この様々な有機光触媒の組み合わせにより位置選択的なポリマー付与技術の確立を行う。これは、反応させるカルボン酸と有機光触媒の酸化還元電位をサイクリックボルタンメトリー(CV)法を用いて測定しながら行う。また、具体的には、1級と2級のカルボン酸を有するグルタミン酸を用いて、選択的なポリマー合成を目指す。グルタミン酸はアミノ酸であり、医薬品や医療材料として用いられることもあるため、この反応が実現できれば大きなインパクトを与えると考えている。 また、同時にMALDI-TOFMS (マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)の測定により、得られたポリマーがどのような構造を有しているかを分子レベルで解明し、アミノ酸等の導入率を明らかにしたいと考えている。
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