研究課題/領域番号 |
22K18246
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三宅 太文 早稲田大学, 次世代ロボット研究機構, 次席研究員(研究院講師) (50907277)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 筋電 / 訓練ロボット / 骨格筋 / ロボット / 生体情報 / 予防訓練 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,個人に応じた効果的な最小の運動負荷を与える訓練システムの構築を目指す.まず,筋電位と近赤外光の信号を統合的に処理することで骨格筋への適切な負荷の推定手法を確立する.次に,円周方向と長軸方向に複数のチャンネルを設け,各チャンネルの信号を比較処理することで,センサシステムの適切な装着位置の推定アルゴリズムを構築する.そして,最終的に訓練システムを1か月間毎日使用した際の長期的な訓練効果の評価を行う.
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研究実績の概要 |
まず,抵抗運動を実施する上で一般的に用いられるゴムバンドの力特性を模するワイヤ駆動式のハードウェアを開発することができた.慣性計測装置により関節角度を取得する方式にしたため,将来的に多様な関節に対してゴムバンド式ワイヤ張力制御に基づく抵抗訓練を実施できる見込みが得られた. さらに,人へ抵抗負荷を印加した際の筋電図(EMG)情報をリアルタイムに取得することで,個人に応じて適応的に印加抵抗負荷量を調整可能なインタラクティブな訓練ロボットを開発することができた.この時,抵抗力とEMG積分値の関係が2対数曲線で近似することができた.漸増的に抵抗負荷を増大させたときに,抵抗力-EMG積分値のプロットが,あるタイミングで1つ目の対数近似曲線から逸脱することが分かった. 本研究では,この逸脱するプロットの抵抗力が筋肥大に有効な最小負荷であると考え調査を進めた.実際に,筋量の異なる若年者6名と高齢者4名の計10名でロボットによる抵抗負荷実験を実施したデータを解析した.若年者6名において,逸脱プロットから導出した抵抗負荷と装置が印加可能な一段階下の抵抗負荷を比較したところ,導出した抵抗負荷でのみ大腿部が膨張していることが分かった.また,導出した抵抗負荷によって高齢者4名の大腿部の直径も膨張させられることが分かった.従って,本ロボットを用いることで,各人にとっての最小負荷を導出することでき,それらの抵抗負荷を印加することで効果的に筋肥大を促進できることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では,筋電図(EMG)に基づき,個人に応じて抵抗負荷を調整可能なワイヤ駆動式の抵抗負荷印加ロボットを開発し,その効果を検証することができた.まず,膝関節の角度を基にワイヤの張力を制御することで,下肢抵抗運動を実施する上で一般的に用いられるゴムバンドの力特性を模することができた.リアルタイムに力と表面筋電図(EMG)情報を取得可能なため,個人に応じて適応的に印加抵抗負荷量を調整可能なインタラクティブな訓練ロボットである.EMGの測定は,患者の筋状態を判断するための比較的容易かつ非侵襲的な方法である.抵抗負荷の増加に伴い,疲労抵抗性の筋線維群から疲労感受性の筋線維群へと動員される筋線維群が変化する.筋肥大の成長を促す代謝物質の分泌につながる疲労しやすい筋線維群の動員をEMGから推定する方法論を提案した.そして,抵抗力と大腿部のEMG積分値の関係が2対数曲線で近似することができることを明らかにした.漸増的に抵抗負荷を増大させたときに,抵抗力-EMG積分値のプロットがあるタイミングで1つ目の対数近似曲線から逸脱することを発見し,そのプロットの導出手法を確立した.実際に筋量の異なる若年者6名と高齢者4名の計10名でロボットによる抵抗負荷実験を実施したデータを解析し,導出した抵抗負荷を印加することで効果的に筋肥大を促進できることが示された.特に若年者6名において,逸脱プロットから導出した抵抗負荷と装置が印加可能な一段階下の抵抗負荷を比較する実験を実施し,本システムで導出する抵抗負荷が筋肥大を促す最小負荷であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度で開発した筋骨格訓練システムの汎用化を目指す.身体の代謝情報を取得可能な近赤外光センシングを追加し,筋電位と近赤外光を統合的に処理し,無負荷あるいは低負荷領域でのロボット介入(抵抗負荷印加)によって適切な最小抵抗負荷を推定する.円周方向と長軸方向それぞれに筋電センサと近赤外光センサを複数配列し,生体信号の強度の違いを見ることで,適切なセンサ配列を検討する. さらに,四肢の各部位に関して,負荷に対する筋電と近赤外光のセンシング情報に基づく運動強度取得方法を検討する.さらに,力センサにより人にかかる負荷の強度を,慣性情報により動作の回数を取得するシステムを構築することで,訓練時における多様な運動情報を取得可能とする.ユーザによって異なる運動状態であっても,一律に運動情報を処理し運動負荷を算出することが可能なモデルを検討する. 2023年度で開発する新規システムの開発と効果検証のために,抵抗負荷を印加し,負荷に応じた生体信号を取得する実験を行う.様々な負荷回数に対し,超音波を用いて筋の膨張率を評価することで筋の成長を促す負荷の強度(負荷閾値)を導出する.そして,負荷閾値に達するまでの生体信号の情報を統合的に処理し,筋肥大が発生するための最小負荷強度と回数を導出する回帰的なモデルを構築する.さらにテストデータとして同様の実験を実施することで,提案するシステムの構成と回帰モデルの妥当性を検証する.
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