研究課題/領域番号 |
22K18249
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
中川 裕 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (70227750)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2026年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 識字教育 / グイ語 / ガナ語 / カラハリ狩猟採集民 / 正書法 / コイサン / 識字 / 音韻論 |
研究開始時の研究の概要 |
アフリカ識字活動はカラハリ狩猟採集民をいわば置き去りにしてきた。それには彼らの音韻的特異性・文化的特殊性・現実的諸事情が識字教育の障壁となったという経緯がある。一方で、現在のカラハリ狩猟採集民たちは母語を文字で綴ることを望み、当事国政府もそれを奨励し始めた。本研究は、新しい着想により、母語話者を中心とする現地関係者たちと協働することで、社会に馴染み持続しやすい識字学習インフラを考案し発展させる。この実践のために、世界最大級の音素対立を表記するアルファベット系正書法を設計する。また、「この極限域において、文字で母語を書き綴る営みにはどんな現象が起きるか?」という新しい文字学的問題を探求する。
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研究実績の概要 |
今年度の主な研究実績は以下のとおり要約される。(1)ボツワナ現地におけるグイ・ガナ語を話す協力者をさらに2人追加選定し、彼らのスマホに本プロジェクトが開発したグイ語正書法キーボードアプリGuiKeyをはじめとする識字活動ツールをインストールし必要な設定をした。(2)昨年度開始したWhatsAppグループ|Gui-||Gana writersに、初級者版を追加開設し、5人のメンバーと、テキスト送信と音声メッセージ送信による正書法実習を開始した。(3)昨年度、初級向け正書法セッションを終えた日本滞在中のグイ語とガナ語の話者を対象に、正書法による書記技能向上のための、グイ・ガナ談話録音の「文字起こし訓練」を継続実施した。(4)母語話者による利用を踏まえたグイ・ガナ辞書 A G|ui G||ana dictionary for native speakersを編集し、prepublication versionとして印刷製本し、(2)(3)の協力者および現地社会の関係者と関係機関に配布した。(5)次の正書法教材を作成し、(2)(3)の協力者に配布し、集中的な研修会を開催した:(i)正書法による2つの物語の小冊子、(ii)二つの物語の正書法字幕付き動画クリップ、(iii) 一つの民話の紙芝居(京都大学ASAFAS高田明研究室との共同制作)、(iv) 90子音を学ぶためのカードゲーム、(v)詩歌テキスト冊子。 今年度までの研究成果を報告するために、翌年度の日本アフリカ学会学術大会にフォーラムの企画を応募し、採択となった。母語話者=共同研究者2人および国内研究協力者3人とともに2024年5月に開催される同大会でフォーラム発表の予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内在住の母語話者=研究協力者およびボツワナ現地の母語話者=研究協力者とのオンライン識字活動が効率よく進み、ソフトウェア的な識字インフラの制作と更新も順調である。また、学会発表として、今年度までの調査研究実績の報告も今年5月には実現する。
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今後の研究の推進方策 |
初級母語ライターの訓練を、現地でのワークショップ開催によって推進する。また、中級母語ライターのさらなる書記技能向上のために、民話・昔話・詩歌を含む読本の共同作成と共同読解のワークショップを開催する。2023年度末にドイツの調査チームが開始したTaa語正書法プロジェクトと、積極的な情報交換をして、今後どのような連携が可能で、相互的に有効かを討議する。さらに、グイ・ガナ社会における母語書記の言語社会学的ニッチの調査を行う。
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