研究課題/領域番号 |
22K18268
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山田 洋一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20435598)
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研究分担者 |
上野 裕 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (00775752)
渋田 昌弘 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70596684)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
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キーワード | 超原子分子軌道 / SAMO / 有機半導体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機半導体分子の超原子分子軌道(Superatom Molecular Orbitals, SAMOs)と呼ばれる、分子の外側に大きく広がった電子軌道を理解、制御し、利用する「SAMO工学」を世界に先駆けて開拓する。特にSAMO工学の基盤となる薄膜や界面構造の創出と理解に重点を置く。これにより、既存の有機エレクトロニクスの電荷輸送特性の問題を解決し、新原理の有機エレクトロニクス素子創出のための基礎学理を築く。現状ではSAMO研究は黎明期にあるが、本研究では世界的にもユニークなSAMO研究の専門家チームを組織し、挑戦的課題を遂行する。
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研究実績の概要 |
超原子分子軌道(SAMO)とは、低次のRydberg軌道として理解される、有機分子の周辺に広く広がった、対象性の良い電子軌道である。これを電子電動に利用で きれば、有機半導体の移動度向上に大きく貢献できる。しかし、SAMOはそのエネルギーが高く、これを実用化するにはエネルギーの制御手法が求められる。さらに、単分子のSAMOではなく、固体(薄膜)状態のSAMOが応用上重要となる。 本研究は、山田らがこれまで進めてきた薄膜のSAMOに関するプロジェクト(基盤研究(B):Li内包C60薄膜を利用した超原子分子軌道(SAMO)の精密研究)で得られた成果を発展させ、有機半導体のSAMO研究を進展させる計画である。 本年度は、その展開の第一歩として、Li@C70の薄膜の評価に取り組み、Li@C60とは異なる特徴をみいだしてきた。フラーレンの内部空間中のLiの位置によるSAMOエネルギーが変化する可能性を実験的に示し、Li@C60に関しては理論計算論文を出版した。また、Li@C60やさらに高次の内包フラーレンに関する計算結果の論文化を準備している。 一方、本研究では、新規なSAMO計測の手法の開拓を進めてきており、電解電子放射顕微鏡(FEM)を用いた単分子のSAMOイメージングが可能であることが明らか にしてきた。これにより、内包フラーレンに限らず、単分子のSAMOを実時間、実空間で観察することが可能となってきた。これに関する原著論文が現在投稿中(プレプリントはSSRNに掲載済み)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、山田らがこれまで進めてきた薄膜のSAMOに関するプロジェクト(基盤研究(B):Li内包C60薄膜を利用した超原子分子軌道(SAMO)の精密研究)で得られた成果を発展させ、有機半導体のSAMO研究を進展させる計画である。本年度はその準備段階である。また、本研究で必要となる物品(STMコントローラ)がヨーロッパの混乱の影響により納品が大幅に遅れており、いまだ本格的な研究に着手できてはいないが、以下に示すように、着実に成果があがってきている。 本年度は、 SAMO研究展開の第一歩として、Li@C70の薄膜の評価に取り組み、Li@C60とは異なる特徴をみいだしてきた。これに関して応用物理学会において発表を行ってた。この過程で、フラーレンの内部空間中のLiの位置によるSAMOエネルギーが変化する可能性を実験的に示し、Li@C60に関しては理論計算論文を出版した。また、Li@C60やさらに高次の内包フラーレンに関する計算結果の論文化を準備している。 一方、本研究では、新規なSAMO計測の手法の開拓を進めてきており、電解電子放射顕微鏡(FEM)を用いた単分子のSAMOイメージングが可能であることが明らかにしてきた。これにより、内包フラーレンに限らず、単分子のSAMOを実時間、実空間で観察することが可能となってきた。これは当初研究計画にはない方向であったが、SAMO研究には非常に有用となる。これに関する原著論文が現在投稿中(プレプリントはSSRNに掲載済み)である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初は初年度に納品予定であったSTMコントローラが納品される予定であり、それを用いた本格的なSTM研究が開始できる。これにより、本研究計画tで予定されている、分子複合体のSAMOの研究が可能となる。 また、今年度に開発した、電解電子放射顕微鏡(FEM)を用いた単分子のSAMOイメージングの更なる発展を狙う。これで分子複合体のSAMOなどを実時間、実空間での計測を狙う。 研究分断者の渋田の2PPE計測は今年度順調に計測することができた。今後はデータ解析と理論計算を進めて論文化が可能である。また、研究分担者の上野は、新たな内包フラーレンの合成が出来つつある。また、内包フラーレンとホスト分子の複合体化の研究も進めており、来年度はこれらの分子のSAMOの実空間計測が可能となる予定である。
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