研究課題/領域番号 |
22K18271
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
中尾 裕則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (70321536)
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研究分担者 |
山崎 裕一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 主幹研究員 (70571610)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,350千円 (直接経費: 19,500千円、間接経費: 5,850千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
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キーワード | コヒーレントX線散乱 / 磁気イメージング / 軟X線回折顕微鏡 / コヒーレント回折イメージング / 共鳴X線散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
近年トポロジー起源の巨大な物性応答や次世代スピントロニクスでの利用などの観点より、磁気スキルミオンや磁気カイラルソリトンなどの磁気テクスチャの極小化に向けた物質開発が進んでいる。ところが研究代表者らが開発してきた磁気イメージング手法では、最近報告された数nmサイズの磁気テクスチャの観測は不可能である。そこで本研究課題では、これまでの手法を極小磁気テクスチャの観測が可能となる反射配置での高角散乱を利用した磁気イメージングへと昇華させ、極小磁気テクスチャの実環境下動的(オペランド)計測に挑戦するものである。
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研究実績の概要 |
近年、磁気スキルミオンや磁気カイラルソリトンといった幾何学的な特徴(トポロジー)を有する磁気テクスチャが盛んに研究されている。これまでに研究代表者らは、磁気テクスチャの磁性を担う3d・4f電子状態を直接観測可能な軟X線を利用した共鳴X線散乱法と光のコヒーレンスを利用したコヒーレント回折イメージング法を組み合わせた磁気イメージング手法を確立し、磁気テクスチャの実空間・動的計測を実現させてきた。しかしながら、トポロジー起源の巨大な物性応答や次世代スピントロニクスでの利用などの観点より、より小さな磁気テクスチャの物質開発が進んできている。そこで本研究課題では、これまでの手法を極小磁気テクスチャの観測が可能となる反射配置での高角散乱を利用した磁気イメージングへと昇華させ、極小磁気テクスチャの実環境下動的(オペランド)計測の実現に挑戦する。 構築した入射X線からコヒーレント光を切り出すための新たな照明光学系の試験を行ったところ、簡便な数ミクロンサイズの集光から、仮想光源を入れることによるサブミクロン集光が可能となった。このような光と開発してきた反射型コヒーレント回折イメージング用2軸回折計を組み合わせ走査型のドメイン観測が可能となった。さらに試料位置の温度ドリフトや振動の問題を回避するために開発した小型冷凍機を組み合わせることで、温度変化に伴い出現する秩序相のドメイン観測にも成功した。また、テスト実験を行うことで、回折実験での試料の走査法などの問題点もわかりつつあり、実験装置の利用展開と並行して、装置の改良も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
入射X線からコヒーレント光を切り出すために新たに構築してきた照明光学系を利用して、集光ビームを用いた実験が簡便に行えるように整備を進めた。その結果、利用するビームラインに依存して光学系はそれぞれ異なるものの概ね数μmサイズの集光ビームが簡便に利用可能となった。また、既設ビームラインへの仮想光源の導入などを行い、サブμm集光ビームも実現した。この集光ビームと開発してきたnm精度での制御が可能な回折計を組み合わせ、試料を走査しながらのブラッグ反射強度の空間マッピング測定が可能となった。ただしテスト実験を通じて、Q=0でのイメージング実験なら試料走査と焦点位置の調整軸が直交軸であるのに対して、回折実験では異なるための実験の難しさや、販売されているステージ性能の制約から唯一残っていたパルスモーターステージの駆動精度の限界など問題になりつつあり、実験装置の利用展開と並行して、新たなピエゾステージの購入などによる装置改良も進めている。 本研究課題で進める反射型のコヒーレントX線回折実験の難しさは、光の切り出し部と試料部の分離にある。具体的には、試料位置の温度ドリフトや振動よる像のボケの影響の軽減をする必要がある。また、物性実験では冷凍機の到達温度によって測定可能となる物質群の制限がかかるため良く冷え、かつ高空間分解能でのイメージング実験が可能な小型・軽量の冷凍機の開発が必要となった。そこで昨年度開発したのが熱膨張の影響が小さくかつ試料温度が30K以下にできる小型冷凍機である。この冷凍機と上述の回折計を組み合わせたテストをしたところ、温度ドリフトはあるものの再現良く測定が可能で、温度変化に伴い出現する秩序相のドメイン観測に成功したところである。 加えて、放射光のパルス特性を利用した外場に対する応答の時間分解測定の試みや反射型CDI解析手法の開発を並行して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように当初の予定通り順調に反射型コヒーレント回折イメージング用2軸X線回折計、照明光学系、小型冷凍機が立ち上がり、走査型のブラッグ反射強度マッピング実験が可能となった。その結果、装置の性能評価ができて判明した問題点などもあり、実験装置の利用展開と並行して、装置改良も進める。
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