研究課題/領域番号 |
22K18277
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小高 裕和 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (50610820)
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研究分担者 |
一戸 悠人 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 研究員 (30792519)
井上 芳幸 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70733989)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2027年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2026年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 液体アルゴン放射線検出器 / MeVガンマ線天文学 / コンプトンカメラ / MeVガンマ線 / 重元素合成 / コンプトン望遠鏡 / 連星中性子星合体 |
研究開始時の研究の概要 |
周期表を彩る100種類に及ぶ多種多様な元素は、138億年の宇宙史においてどのように創られたのか?その全容を解明することは天文学のみならず現代科学の大きなテーマである。特に鉄より重く核融合が難しい超重元素の起源は未解明であり、その最有力サイトが重力波検出により脚光を浴びた連星中性子星の合体である。本研究の目的は、中性子星合体イベントからの微弱な核ガンマ線を捉えられる高感度ガンマ線望遠鏡を開発することである。そのために、液体アルゴンを検出器媒体に用いた新しい概念に基づくガンマ線コンプトン望遠鏡を、素粒子物理実験で実用化された技術を基盤として構築し、さらにそれを人工衛星に搭載する技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、超新星や連星中性子星合体などの重元素合成の有力候補サイトからの微弱な核ガンマ線を捉えることができる高感度ガンマ線望遠鏡を開発することである。そのために、液体アルゴンを検出器媒体に用いた新しい概念に基づくガンマ線コンプトン望遠鏡を、素粒子物理実験で実用化された技術を基盤として構築し、さらにそれを人工衛星に搭載する技術の開発を目指している。
2023年度は、世界初の液体アルゴンを利用したコンプトン望遠鏡の実証機の開発を目指して、地上試験用の液体アルゴンクライオスタットを建設し、コンプトンカメラとして動作する液体アルゴンタイムプロジェクションチェンバーの開発を行った。コンプトンカメラにおけるガンマ線の検出情報は励起したアルゴンのシンチレーション光およびアルゴンから電離した電子の読み出しによって得られる。シンチレーション光検出器として用いるSiPM検出器の多チャンネル結合読み出しの回路と電離電子読み出しのための半導体検出器用読み出し集積回路を採用したアンプ基板の製作を行った。これらの組み合わせたコンプトンカメラ試作機を完成させ、液体アルゴン条件下での最初の動作確認試験において、シンチレーション光と電離電子信号を確認することに成功した。
また、液体アルゴン検出器の飛翔体搭載対応のため、JAXA国内気球実験「GRAMS液体アルゴン放射線検出器の気球搭載試験」を実施し、フライトと検出器の運用に成功した。これは気球搭載可能な小型で最小構成の液体アルゴンタイムプロジェクションチェンバーを製作し、実際に気球フライト中に放射線検出器として安定動作させるための技術の確立を目的としたものである。2023年7月27日に北海道の大樹航空宇宙実験場から放球し、太平洋上を約3時間飛行し、全機器を無事に回収した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は世界初の液体アルゴンを用いた大面積ガンマ線検出器の実現という挑戦的なテーマに取り組んでいる。そのために必要な開発項目を整理し、現在はその第一歩となる次の3つの課題を進めてきた:(1) 小型かつ高性能のコンプトン望遠鏡実証機の設計、(2) 最小構成のアルゴン検出器気球搭載試験、(3) 全天 MeVガンマ線放射モデルに基づくサイエンス計画の立案。(1)について、概ね予定通り製作を完了し、最初の液体アルゴン条件下での動作試験に成功した。(2) についてはJAXA国内気球実験のフライトと検出器の安定運用に成功し、当初計画を超える成果が得られている。(3) についてもサイエンスの計画立案のためのシミュレーションモデルの構築を進めており、概ね順調だと言える。以上から、研究プロジェクト全体としては現時点で計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2023年度に進めた世界初の液体アルゴンを利用したコンプトン望遠鏡の実証機の動作試験を進める。すでに実施した液体アルゴン条件下での動作試験のデータを吟味し、コンポーネントの改良や運用方法の改善を行う。2024年度に複数回の液体アルゴンを用いた実証実験を計画しており、段階的アップデートを経て、最終的にコンプトンイメージングの実証を目指す。また、サイエンス計画の構築のために、バックグラウンドを含めた全天シミュレーションを実施し、性能予測を行う。
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