研究課題/領域番号 |
22K18280
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 正一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60397023)
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研究分担者 |
平田 岳史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10251612)
辻本 拓司 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 助教 (10270456)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
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キーワード | SIMS / 同位体 / イメージング / コンドライト隕石 / プレソーラグレイン / 軽元素 / 重元素 / 隕石 / 太陽系起源 / 太陽系起源物質 / 銀河大移動 / 同位体イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
太陽系はいかにしてハビタビリティー(生物存在可能性)を獲得できたのか?この未踏課題に初めて答えを与えるのが銀河内での太陽系の大移動モデル(銀河大移動論)である.その目的に最適な試料は、始源的な隕石に普遍的に含まれる微粒子集合体中の太陽系形成以前の星屑である.しかし、この星屑は、存在頻度が非常に低い(1-10ppm以下)ため、これまで誰も十分な数の粒子の特徴をとらえることはできていない.本研究では、大規模化学マイニング手法により超高感度元素・同位体イメージング分析手法を適用し、元素・同位体情報を引き出す.その宇宙化学的情報と、天文学的な銀河ダイナミクスを融合することで、銀河大移動論の検証を行う.
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研究実績の概要 |
太陽系はいかにしてハビタビリティーを獲得できたのか?この未踏課題に初めて答えを与えるのが銀河内での太陽系の大移動モデル(銀河大移動論)である.このモデルの検証には46億年前に太陽系が銀河内のどの場所、環境で誕生したかを物質化学的に調べる必要がある.その目的に最適な試料は、始源的な隕石に普遍的に含まれる微粒子集合体中の太陽系形成以前の星屑である.しかし、この微粒子は、その小さなサイズにくわえ、存在頻度が非常に低い(1-10ppm以下)ため、これまで誰も十分な数の粒子から物質科学的な情報を引き出すことができなかった.そこで本研究では、隕石中の膨大な数の粒子集合体から、星屑の微粒子を世界最高性能の超高感度元素・同位体イメージング分析手法を適用し、太陽系形成以前の情報を保持する微粒子から元素・同位体情報を引き出す. R5年度に軽元素、重元素同位体イメージング法を応用した固体物質中の超微量ウラン濃度分布と鉱物学的記載を融合した隕石中の水質変質過程の評価に成功し、両者の関係が密接に変質過程と結びつくことを明らかにした。さらに固体物質中の水素分布に関する水素拡散挙動を評価するシステムの構築に成功し、水素に関する固体物質中の拡散挙動を評価する手法の構築に成功した。また、二次イオン質量分析法による水素の同位体イメージング分析において、一次イオン種による水素のイオン化現象の違いが、固体中の水の化学種の違いに大きく関わる可能性が高いことを明らかにし、論文に報告した。 これらを応用し、二次イオン質量分析法と凍結ステージ法を組み合わせ、超高感度3次元同位体イメージングによる水素を含む固体物質に応用した隕石の変成変質の評価方法の開発に着手し、複数の始原的な隕石物質の評価を開始した。来年度は、これら分析手法による隕石物質の始原性の評価を構築し、複数の始原的な隕石マトリクスから太陽系前駆物質の探索を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二次イオン質量分析法を応用した同位体イメージングシステムの構築、および液体窒素を用いた凍結冷却ステージ法による固体中の水素の挙動の解明のための装置導入が全て整ったため、当初の計画以上に進展していると評価した。また、これら分析手法のための準備として行ってきた研究について、投稿論文を2報まとめ上げたことも特筆すべき成果であるだろう。二次イオン質量分析法を用いた水素の定量分析手法の新しい評価方法の確立に成功し、これまで過去50年近く不明瞭であった固体中の水素の二次イオン化効率の違いを、2種類の1次イオンを用いることで化学種のOH, H2Oの違いによるイオン化効率が異なる可能性が高いことを突き止め、国際誌であるGeochemical journalのexpress letterの速報として、報告するに至った。さらに地球外物質のみならず、月、火星などの惑星の水分量及び水素同位体の推定に測定対象とされているアパタイト結晶の水素拡散挙動を明らかにし、分析対象となる結晶表面における機械研磨によるダメージを最小に抑えた新しい手法を確立することで、確度の高い物理パラメータである水素拡散係数を決定し、同じくGeochemical journalのarticleとして報告した。東京大学の平田研究室との共同研究により、ICP-TOF-MSを用いた隕石ナノ粒子数十万粒の高速同位体分析手法を隕石に適応し、これら成果をGeochemical journalのexpress letterにて報告するに至ったことも評価に値する。
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今後の研究の推進方策 |
始原的なコンドライト隕石の選定や評価には、複数の分析手法を組み合わせ評価する必要があり、鉱物レベルから原子レベル(同位体組成)までの統合的な評価方法を構築する必要がある。本研究では、これまでその評価が難しかった二次的な変成変質過程に対して、コンドライト隕石にクラストとして存在する明らかにプロセスの異なる領域であることが独立な手法で評価されている物質を用いることで、物質化学的知見を与えることが可能となっている。これらの工夫をさらに発展し、独自に開発した隕石ナノ粒子の同位体分析手法を適応することで、これまでの軽元素のみを用いた同位体組成による太陽系前駆物質の評価方法に対して、全く新しい評価方法を構築していく準備が整った。令和6ー7年度は、隕石からの実践的なデータ蓄積を進め、これら成果を積極的に学会や論文等で評価していく。
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