研究課題/領域番号 |
22K18285
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小橋 真 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90225483)
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研究分担者 |
近藤 勝義 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (50345138)
鈴木 飛鳥 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90802603)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
24,440千円 (直接経費: 18,800千円、間接経費: 5,640千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 積層造形 / 多孔体 / 浸透シミュレーション / 毛細管力 / マグネシウム/チタン複合材料 / 界面電位差 / 新方式積層造形 / 毛管力浸透 / Mg/Ti複合材料 / プロセスインフォマティクス |
研究開始時の研究の概要 |
金属積層造形用の新しい粉末固化プロセスとして溶融浸透(MI)法を提案する。MI法はプリフォームの空隙に外部から溶融金属を自発含浸させるプロセスである。粉末冶金は、現代でも多くのカンとコツにたよる領域があり、この領域の変革に挑戦しなければ積層造形のように急速かつ国際的な学術の発展をリードできない。本研究では浸透シミュレーションの高度化に必要なデータを取得する多様な方法を検証する。また、高度化したシミュレーションを浸透現象のデジタルツインとし、機械学習によりプロセス条件を探索する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
本件研究では、新しい積層造形プロセスとして、Melt Infiltration:MI(溶湯浸透)プロセスを提唱し、MI法による粉末固化のダイナミクス理解を通じて積層造形方式としてのポテンシャルを明らかにすることに取り組んでいる。本研究の目的は、(1) MI法の学理体系化、(2) データ駆動型プロセス設計方法論を確立することであり、2023年度は以下のことを実施した。 (a) 浸透現象のダイナミクス可視化:多孔質プリフォーム中に液相が浸透する挙動を評価した。2023年度は多孔体中への含浸挙動の基礎現象を明らかにするために、金属多孔体中への水の含浸を評価して、毛管現象と多孔質構造の関係を明らかにした。浸透性能(浸透速度dh/dt、最大浸透高さhmax)を実測し、。浸透性能に及ぼす公家き構造の影響を系統的に整理した。(b) MI法によるTi/Mg複合材料の材料特性評価:MI法によるTI/Mg複合材料の力学特性および耐環境性能(ケルビンプローブフォース顕微鏡による表界面電位差計測と局所腐食挙動解析)を評価した。純Ti粉末とTi-6Al-4V合金粉末とを比較した。その結果、両者に大きな差異はなく、ガルバニック腐食挙動など大きな差異はないものと推測された。今後は、腐食試験も行う予定である。(c) 浸透現象の理論解析: VG-STUDIO毛管圧力オプションを用い、流束Q、浸透圧力ΔPなどを計算した。その結果、毛細管直径が急に広くなる部位において浸透が停滞することが明らかになった。また、浸透後の試料の気孔をX線CTで観察すると残留空隙が存在する部分は毛細管直径が急に拡張する部分と対応することも明らかにした。(d) ニューラルネットワークによる浸透現象の予測モデル:NN予測モデルを構築するために必要となるプリフォームの構造因子(粒子形状、空隙構造)の定量評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究は1点の変更点を除き、おおむね当初計画の通りであった。主な変更点としては、多孔体中の液体の動的浸透現象は、多孔体と水を用いたモデルを用いて行った。これにより、多孔体構造と浸透のダイナミクスを理解するための実験回数が飛躍的に増え、高い毛管力と低い圧力損失を両立するための多孔質構造に関する理解が高まった。ここで得られた知見をTi/Mg系に適用する点が未達であるが、多孔体中の流れの基礎的な学理を構築するためには、水モデルによる実験の追加は必須であったと考える。その他の項目では以下のように概ね計画通りであった。 ・MI法によるTi/Mg複合材料の材料特性評価:耐環境性能の評価と界面状態の評価を行った。また、合金成分の異なるTi粉末の比較も行った(ケルビンプローブフォース顕微鏡による表界面電位差計測と局所腐食挙動解析)。 ・浸透現象の理論解析: X線CTによるプリフォーム構造と浸透関係の理解を予定通り進めることができた。 ・ニューラルネットワークによる浸透現象の予測モデル:界面物性値に関しては、未達であるが、プリフォームの構造を定量的に評価することができ、計画に大きな変更はない。
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今後の研究の推進方策 |
浸透現象のダイナミクス測定には、多様な空隙形態をもつ多孔体を用い、水の動的浸透挙動の計測を引き続き行う。これにより、プリフォームの構造因子と動的浸透挙動に関する複雑な挙動を明らかにしていきたい。もちろん、得られた知見からTi/Mg系の浸透挙動を考察することも行う。 X線CT画像を用いたイメージベースシミュレーションによりTi多孔体中の溶融Mgの微視的入道挙動の解析を行っていきたい。これにより、浸透不良(残留気孔)の発生点に関する理解をより正確なものにする計画である。 ニューラルネットワークによる浸透挙動の予測モデルについては、ミクロ的、マクロ的視点から浸透挙動を予測することを行っていく。現時点ではプリフォームのミクロ構造因子を定量化している段階であり、マクロ構造因子と組み合わせて、浸透現象を予測していきたい。 複雑な形状のプリフォームを作製し、マクロレベルでのプリフォーム形状と浸透現象の関係も明らかにし、積層造形技術の基礎検討という本研究の位置づけを明確にしていきたい。
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