研究課題/領域番号 |
22K18286
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分19:流体工学、熱工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村上 陽一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (80526442)
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研究分担者 |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40525573)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,350千円 (直接経費: 19,500千円、間接経費: 5,850千円)
2026年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 分子熱工学 / ナノ孔内の輸送現象 / 共有結合性有機骨格 / 二次電池 / イオン輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,補助事業期間を通じ,カーボンニュートラル・超スマートエネルギー社会の実現に資する,高性能が期待される超高秩序分子骨格系を用いた新世代の全固体電池創出に挑戦する.具体的に,機能発現を担う原料分子の設計と最適化,その分子骨格化と固体電解質化,全固体電池試験セルの形成,その特性評価および最適設計指針の確立等を通じ,新世代の全固体電池の創出,その特性解明,および最適設計指針の構築を遂行する.また,創出した分子骨格材料内におけるイオン輸送現象の究明を通じ,学術が未発達な超高秩序分子骨格系におけるイオン輸送の学理を開拓し,分子熱流体工学と化学との新融合領域の創成を遂行,達成してゆく計画である.
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研究実績の概要 |
カーボンニュートラル社会、超スマートエネルギー社会の実現のため、高性能で高信頼な二次電池の創出が望まれている。近年、化学分野では、共有結合性有機骨格 (Covalent Organic Framework, COF)というナノスケールの周期構造と多孔性をもつ固体系が、多くのユニークな特長と多彩な応用可能性により注目を集めている。本研究は、未だ存在せず、高性能が期待できる超高秩序な分子骨格をもつ3次元COFを用いた新世代の全固体電池の創出に挑戦する。具体的に、本研究は以下2点を目的とする。(i) 超高秩序分子骨格系を用いた新世代の全固体電池創出を創出し、社会と産業の発展に貢献すること。(ii) 学術が未形成な超高秩序分子骨格系におけるイオン輸送の学理を開拓・究明し、分子熱流体工学と化学との新たな融合領域を創成すること。 二年度目である当年度は、応募時の研究調書に記載したアイデアであるポリエチレングリコール(PEG)鎖をもつ新規COFの開発と特性評価を完了させ、最大の難関だった結晶構造決定に成功し、成果を化学の著名誌であるJournal of the American Chemical Societyから出版した(2024年1月)。本成果はCOFで初めて三種類の構造異性体を制御的に生成したもので、骨格異性体間の熱力学的な差異を解明し、ナノ骨格系の基礎学術に新たな知見をもたらした。一方、当該COFではナノ孔がPEG側鎖で閉塞される問題が判明したため、当年度は様々な種類のリチウムイオン伝導性を与えるビルディングブロック分子(COFの原料分子)を新たに選定し、それらを用いて新COFの創出に挑戦した。さらに、COFの二次電池応用を進める上で基礎的理解が不可欠なCOFの物質導入特性や熱伝導特性をCOF-300という典型的な三次元COFを用いて解明し、その成果を2023年8月に論文出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度は、上述のように、本課題の申請時の研究計画調書に記載した当初アイデアであるCOFの開発と特性決定を完了し、その成果を論文出版するなど、本課題の計画の初段部分を遂行できている。一方、この当初アイデアにおける課題が見いだされたが、後述のように、その問題に対する解決方策もたてており、現在はその遂行途上であるため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、研究計画調書に当初記載したアイデアのPEG鎖を側鎖にもつ3次元COFの開発及びその骨格構造の決定を完了し、学術的には極めて有意義な成果を得たが、本課題が目指す材料創製の面では、明らかにした骨格構造及びガス吸着等温線の解析から、当該の新COFはその長い側鎖のためにナノ孔が閉塞しており、そのために内部の比表面積が微小であるという課題が明らかになった。この当初の予期しなかった課題に対処するため、今後の研究では、側鎖が可能な限り短く、かつ、リチウムイオンの輸率を向上させるため、負に帯電したアニオン骨格をもつ新規3次元COFの創製を追求することを解決方策として研究を進めてゆく計画である。
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