研究課題/領域番号 |
22K18287
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分19:流体工学、熱工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮内 雄平 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (10451791)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
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キーワード | 太陽光吸収 / カーボンナノチューブ / 複素屈折率スペクトル / 太陽光 / 太陽熱 / 励起子 / 非平衡 |
研究開始時の研究の概要 |
太陽光エネルギーを人間の生存・生活に必須の水の蒸留精製、蒸気発生、温水生成等のための熱として直接利用すれば、太陽電池で一度発電してから熱に変換するよりも圧倒的にエネルギー利用効率が高い。しかしながら、太陽光は低密度エネルギーであり、急速加熱・高温生成には高コストな集光設備が必要となることが課題である。本研究では、カーボンナノチューブ(CNT)における量子熱光物性研究の最新の成果を足がかりとして、水などの透明熱媒体へのエネルギー伝達を従来にない高流束で可能にする新概念を提案し、太陽光を用いた従来の伝熱限界を超える急速水加熱・蒸気発生を実証する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、前年度に引き続き、高純度な半導体型カーボンナノチューブ(CNT)からなる薄膜の広帯域複素屈折率の異方性に関する測定を進め、角度・偏光分解測定により、薄膜の複屈折性を詳細に明らかにし、論文として報告した。また、太陽光加熱実験に向けて、ソーラシミュレータからの擬似太陽光を照射しながら正確に基板温度計測を行うための実験系の構築を進めた。半導体型CNT薄膜と金属を組み合わせたCNT太陽光選択吸収体の数値シミュレーションによる設計と試作も行った。上記で構築した実験系と試料を用いて、まず、擬似黒体基板と、作製したCNT太陽光選択吸収体基板をそれぞれ1SUNの擬似太陽光照射下に設置し、CNT太陽光選択吸収体を用いることで、より高温まで到達できることを確認した。この実験結果と解析を通じて、放射および吸収特性をより理想的な条件に近づけ、最高到達温度をさらに高めるために、以下(1)から(3)の対応が必要であることが判明した。(1)基板温度測定用の熱電対からの熱リークにより最高到達温度が制限を受けているため、温度測定に非接触の放射温度計を用いる。(2)基板裏面からの放射による熱リークを防ぐため、基板裏面の放射を反射して基板に戻す仕組みを導入する。(3)半導体型CNT薄膜の膜厚が、太陽光吸収の波長選択性に大きな影響を与えるため、半導体型CNT薄膜の膜厚制御を精密に行う。年度後半は、これらの項目に対応するための新しいチャンバー構造、基板保持構造等の設計、並びに、CNT薄膜作製技術の検討を進めた。また、CNTから熱媒体への共鳴エネルギー移動の効果を検討するため、近赤外ストリークカメラによる励起子寿命測定系を立ち上げ予備的な測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高純度な半導体型カーボンナノチューブからなる薄膜の複屈折性を詳細に明らかにし、この成果を論文として発表することができた。また、研究計画に沿って、擬似太陽光照射下での基板加熱実験を進めている。研究開始時には予期していなかった課題として、上記(1)から(3)の課題が浮上したため、その対応に時間を要したものの、現時点で、これらの課題に一定の解決の目処が得られているため、概ね順調とした。なお、予期せぬトラブルとして、年度後半に主要設備の1つである可視域のCCD検出器が故障した。この検出器修理に時間を要するため、この検出器を用いる実験について今後多少の遅れが生じる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究ではまず、これまでに判明した上記(1)から(3)の課題に対処し、CNT太陽光選択吸収体により、1SUN照射条件下で、設計通りの最高到達温度を達成できることを実証する。並行して、CNTから熱媒体への共鳴エネルギー移動の効果の検討を進める。その後、上記検討により最適化したCNT太陽光選択吸収体を用いて、擬似太陽光照射条件下での水の加熱実験を行う実験系の構築を行い、本研究のコンセプト実証へと進む。
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