研究課題/領域番号 |
22K18289
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分20:機械力学、ロボティクスおよびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土屋 智由 京都大学, 工学研究科, 教授 (60378792)
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研究分担者 |
廣谷 潤 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80775924)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
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キーワード | コグニティブコンピューティング / 機械学習 / 非線形振動子 / MEMS / SOI / ベンチマークタスク / リザバーコンピューティング / センサ |
研究開始時の研究の概要 |
モノのインターネット(IoT)技術の基盤となるセンサを小型化、低消費電力化しながらセンサ側で「検知・認知・判断・行動」可能な知能化エッジ端末として実装するために微小電気機械システム(MEMS)の機械構造上で機械学習による人工知能処理が可能なセンサ一体型コグニティブコンピューティング(CC)デバイスを目指します。具体的にはMEMS加速度センサに非線形振動子を一体作製し、これを物理リザバーとしてニューラルネットワークの一つであるリザバーコンピューティングによって、例えばヒトの運動による振動からその動作を検知する一体化デバイスを実現します。
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研究実績の概要 |
本年度は非線形振動子をアレイ化した物理リザバーによる機械学習性能の向上の検討と加速度センサに組み込んだ非線形振動子によるセンサ一体型物理リザバーによる機械学習タスクの実施を行いました。 まず、両端支持梁支持構造の静電駆動、静電容量検出型の同一形状の非線形振動子を3個、5個、10個と一列に並べ、静電力で結合したMEMS振動子アレイをsilicon-on-insulator(SOI)ウエハ上に製作し、物理リザバーとして機械学習のベンチマークタスク(パリティ、短期記憶)を実施してアレイ化による性能向上を検討しました。アレイ化によって振動子の応答が複雑になるとともに記憶容量が向上することがシミュレーションでも実験でも確認できました。一方で、加工ばらつきによって特性が異なり、また、モード局在化の影響を受けて性能がばらつくことが明らかになりました。 次に、加速度により生じる慣性力を両端支持梁に軸力として伝え、これによる共振周波数の変化で加速度を検出する、周波数変調型加速度センサに非線形振動子を組み込んだ加速度センサと物理リザバーを一体化したデバイスを設計、試作、評価しました。実際には加速度検出のための振動子の非線形性を従来より高めることでこれをリザバーとしています。シミュレーションによる設計で0.2%程度の共振周波数変化がリザバー性能を高めるために必要であることが分かり、これを考慮して設計、試作しました。実際に加振器を用いて加速度センサに振動を印加しての機械学習タスクを実施しています。動作周波数、マスク信号の周期などを変化させながら、人間行動による振動を測定し、そこから「歩行」「ジョギング」の判別を行うタスクに取り組み、最適条件では95%以上の高い判別性能を示すことが明らかになりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の目標としてMEMS非線形振動子のアレイ化による機械学習性能への影響評価と加速度センサと物理リザバーの一体化デバイスの開発、評価を掲げ、計画以上に進展を見せた。 まず、非線形振動子を用いた物理リザバーコンピューティングでは振動子のアレイ化による性能向上を確認し、リザバーの状態の複雑性が学習性能に直結することを確認することができ、期待以上の成果であった。モード局在化に注目した解析にも取り組み、新たな知見を得ることができている。 また、加速度センサと物理リザバーを一体化したデバイスについては他のグループが行った変位による変調を用いた加速度センサに対して、提案して試作した軸力として周波数変調を起こすリザバーによって、より高い性能が得られることが判明した。これも期待以上の大きな成果である。 これらの成果は順次に国際会議や国内会議で報告し、注目を集めている。成果は著しいと考えている。今後は振動ジャイロや表面弾性波フィルターのデバイス構造をリザバーとして用いる検討を進めていくなども進めており、当初の計画に対して大幅に前倒しで研究成果が出ており、進捗は計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
非線形振動子アレイについては、3個、5個、10個のの非線形振動子を静電容量結合した振動子アレイについてこれまで、単一空間ノード、つまり一つの振動子からのみ変位信号を取得しいたのに対して、すべての振動子の変位信号を取り出して、時間、空間の両方に展開したノードによる機械学習に取り組む、これまでと同様に機械学習ベンチマークタスクを実施し、アレイ化による性能向上の実現とそのメカニズムの解明を行う。また、振動子の特性ばらつきによって生じると予想されるモード局在化現象と学習性能の関係について調べ、アレイ化がどのように非線形応答に影響し、学習に寄与するかを検討する。 加速度センサ一体化リザバーについては、本年度はリザバーとなる非線形振動子の共振周波数を考慮して設定したデータのサンプリングレートの影響で、実際の人間行動の振動信号の周波数とサンプリングレートが適合しなかった。そこで、加振器で時間圧縮した波形を加えている。本年度は人体への装着しての実験を目標に、センサの改良設計に取り組む。 さらには新たな展開として準備を進めている振動ジャイロスコープ用の円環型振動子や圧電基板を用いた表面弾性波フィルターデバイスを用いた物理リザバーコンピューティングにも取り組みを展開する。
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