研究課題/領域番号 |
22K18294
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小野 行徳 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80374073)
|
研究分担者 |
堀 匡寛 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (50643269)
影島 博之 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (70374072)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2024年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
|
キーワード | シリコン / 超伝導 / 超流動 / 2次元超格子 / MOSトランジスタ / 平坦バンド |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では、シリコン/シリコン酸化膜(SiO2)界面電子系における「2次元超格子・平坦バンド」形成技術を確立し、これを用いて「MOSトランジスタの超伝導化(チャネル抵抗ゼロ)」に挑戦する。このために、LOCOSを用いた新規デバイス作製プロセスを確立するとともに、MOSトランジスタの電子スピンの電気的読み出し手法を用いて、MOSトランジスタ電子系の磁性状態を評価する。またこれらの基礎検討に基づき、ゲート制御可能な超伝導シリコンデバイス「MOSジョセフソン・トランジスタ」を創生する。
|
研究実績の概要 |
昨年度、2次元周期凹凸構造(2次元超格子)の作製手法をLOCOS酸化法から2段階熱酸化法に変更し、良好な構造を形成できることを確認し、2次元周期構造作製手法手法を確立することができた。しかしながら、作製したMOSトランジスタの基板ゲート耐圧が低いことが判明した。このため、トランジスタ作製手法の改良を行った。具体的には、シリコンのエッチング工程とソースドレイン形成工程の順序を入れ替えた。これにより埋め込み酸化膜のエッチングを防ぐことができ、良好な耐圧を確保できることを確認した。 試作したMOSトランジスタの極低温化下における磁場印可計測を行った。まず手始めに凹凸構造を有していない通常のMOSトランジスタにおいてシュブニホコフ・ドハース振動を観測し、電子相関の発現を評価する上で重要となる有効質量の値を算出した。その結果、電子密度が低下するにつれて、有効質量が若干増加するいう従来の結果を再現することができた。現在、周期的凹凸構造を有するMOSトランジスタについて、有効質量の評価を進めている。 超流動の発現を念頭に、電子・正孔2層系のドラッグの検討を行った。ドラッグ抵抗の電子密度、正孔密度依存性を詳細に調べることにより、ドラッグがクーロン相互作用によるもの(クーロン・ドラッグ)であることを明らかにした。また、ドラッグ抵抗がGaAsなどの他の材料に比べ一桁大きく、強いクーロン相互作用が発生していることを見出した。また、電子層と正孔層を極近接(~5 nm)させることのできる新たな電子・正孔2層形成手法を発案し、これを実験的に実証した。また、当該電子・正孔2層系おいて、励起子が形成されていることを示唆する結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2次元周期的構造の形成プロセス、およびこれに基づく2次元超格子MOSトランジスタの作製プロセスは、ほぼ確立されたといってよい。また、磁場印可計測による2次元電子系の有効質量計測手法もほぼ確立することができた。良好な基本特性が得られていることから、今後、順調に測定が進展するものと期待できる。スピン計測用のEDMRに関しては、新たな感度向上手法を提案し、その基本原理を確認するなど、順調に推移している。 超流動の発現を念頭に開始した電子・正孔2層系のドラッグの検討も順調に推移しており、今後計画している温度依存性(特に極低温領域)の計測の準備が整った。 新たに電子層と正孔層を極近接(~5 nm)させることのできる電子・正孔2層形成手法を発案し、その実験的検証に成功したことは予想を上回る大きな成果と言える。同成果は論文にまとめ、Nature Publishing Groupの物理系雑誌であるCommunications Physicsに採択・掲載されている。また、同成果に関して報道発表を行い、日刊工業新聞等に記事が掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
2次元周期的構造の形成プロセス、およびこれに基づく2次元超格子MOSトランジスタの作製プロセスに関しては、その骨格を確立することができた。今後は、2次元周期構造のパターンのバリエーションを増やす方策、および実際の凹凸構造の幾何学的詳細を調べていく。さらに、より微細なパターン形成のための電子線描画条件の最適化を検討する。 2次元超格子MOSトランジスタの極低温計測に関しては、有効質量の電子密度依存性を、特に、正方格子、三角格子構造を中心に詳細に調べていく。また、金属・絶縁体転移密度に関して、通常(平坦界面を有する)MOSトランジスタとの比較を検討する。 超流動発現を念頭に行ってる電子・正孔2層系のクーロンドラッグについては、現在行っているSOI膜厚20nm程度のデバイスに関しては極低温計測を実施し、励起子形成のための条件(電子密度等)を調べていく。また、さらに薄い領域に関する測定を行い、ドラック電圧の増大可能性を検討するとともに、電子・正孔再結合電流の評価を開始する。また、極近接された電子・正孔系については、励起子の再結合過程を詳細に調べるとともに、より微細なデバイスの作製、また、このために必要となるプロセスを検討する。 上記の計画において、分担者・堀は、電子・正孔2層系に関して、デバイスの測定、および解析を担務す。分担者・影島は、2次元周期構造を有するMOSトランジスタにおける有効櫃量の理論的解析、および、電子・正孔2層系の解析に必要となる計算手法を検討する。研究代表者・小野は、研究を統括するとともに、MOSトランジスタの測定全般、およびその解析を担務する。
|