研究課題/領域番号 |
22K18298
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
赤松 良久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30448584)
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研究分担者 |
中尾 遼平 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授(特命) (10814618)
愛知 正温 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (40645917)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,480千円 (直接経費: 19,600千円、間接経費: 5,880千円)
2024年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2022年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | トレーサー / 人工DNA / 地下水 / 土砂還元 / 環境DNA / 海綿 / リポソーム / 流域水・土砂動態 / 地下浸透流 |
研究開始時の研究の概要 |
既存の流域における水・物質の動態に関わる研究では,自然界に存在する栄養塩や同位体をトレーサーとして用いるため,顕著な濃度変化が必要であり,局所的な水・物質の動態の把握は困難であった.そこで,本研究では自然界に存在しない人工DNAトレーサーを開発し,トレーサーを用いた地下水動態や土砂動態の把握を実現する.具体的にはリポソームでプラスミドDNAを包み込み,マイナスに帯電した土砂透過型とプラスに帯電した土砂吸着型の2種類のトレーサーを開発する.前者を用いた地下浸透流の動態把握および後者を用いた河川における土砂動態の把握について,室内実験および現地実証実験により有効性を明らかにする.
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研究実績の概要 |
令和5年度はDNAトレーサーの開発および海綿レシーバーの開発を実施した.詳細を以下に示す. 1)DNAトレーサー開発:野外環境へ投入可能,かつ低コストで大量作成可能な構成脂質を使用した2種類のリポソーム封入トレーサーの作成に成功した.新素材の表面は負に帯電しており,土砂透過型のトレーサー候補として利用できる可能性が示された.2種類のリポソーム封入トレーサーの外径は,それぞれ約5 μmと約11 μmで異なり,投入する環境や目的に応じたサイズを利用できる. 2)レシーバー開発:海綿に吸着したトレーサーを分析まで安定的に保存するための条件検討を,凍結保存および界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)添加で行った.タンパク質分解酵素を用いた直接核酸抽出によるトレーサーの回収率は,未処理の12.5%に対し,凍結保存では26.5%,界面活性剤添加では9.6%であった.調査に使用した海綿の保存には回収率の向上の点から凍結保存が有効であることが明らかになった.また,新素材で開発したトレーサーの回収方法の検討を凍結(-20℃)および界面活性剤(0.1~1.0%SDS)処理で行った。トレーサーをろ過したガラス繊維濾紙からの回収率は凍結処理で4.1%、界面活性剤で3.8~4.6%であった.一方、海綿からの回収率は凍結処理で0.026%、0.1%SDSで0.101%と低かった.海綿へのトレーサーの吸着は強固であり,回収方法の検討を行う必要があることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低コストで大量作成可能な人工トレーサーの開発に成功するとともに,トレーサーを効率的に捕捉するための海綿レシーバーから効率的にトレーサーDNAを回収する手法も開発した.当初,計画していた野外での地下水・表層水への投入実験については天候の関係で,2024年4月の実施になったものの,研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
R6年度には開発した人工DNAトレーサーおよびレシーバーを用いて,野外において地下水・表層水に人工DNAトレーサーを投入し,下流域でレシーバーを用いて連続的にトレーサー濃度を計測することによって,トレーサーの到達時間により流達率や地下水流速を明らかにする.また,ダム下流に土砂還元のために設置した置土に人工トレーサーを投入し,出水後の置土流出後に下流の河床材料中に存在するトレーサー濃度を計測することにより,置土の到達の有無を明らかにする.
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