研究課題/領域番号 |
22K18305
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
成島 尚之 東北大学, 工学研究科, 教授 (20198394)
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研究分担者 |
山本 卓也 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10804172)
上田 恭介 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40507901)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,480千円 (直接経費: 19,600千円、間接経費: 5,880千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
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キーワード | 脱酸 / チタン融体 / 高純度化 / 原子状水素 / 酸素 / 鉄 / プラズマ |
研究開始時の研究の概要 |
酸素はチタンの主要な不純物であるが、これまでチタン融体からの酸素除去プロセスは確立されていない。本研究では水素プラズマを利用したワンステッププロセスでの酸素除去を目指す。これによりチタン部材製造コストの1/3を低減し、レアメタルに分類されているチタンをコモンメタルへと進化させる。チタンにおいて「永遠の課題」とされてきた「チタン部材の低コスト化と用途拡大」を解決する「チタン製精錬プロセスの革新」に水素プラズマアーク溶解の観点から挑戦する。比強度と耐食性に優れるチタンの移動体や化学プラントへの適用を拡大し、軽量化と長寿命化に伴う省エネルギーにより2050年カーボンニュートラルに貢献する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は引き抜き機構を有するプラズマ溶解炉(鋳型の直径:30 mm)を用いたチタン融体からの酸素除去に関して以下の研究を遂行した。 (1)プラズマアーク溶解時の溶融領域調査:脱酸実験にも使用するTi-6Al-4V合金を溶解原料として、タングステンをトレーサーに用いた溶融領域の調査を行った。水素プラズマアーク溶解におけるプラズマガス中の水素ガス(H2)分圧は0.05気圧および0.5気圧とした。比較のためにアルゴンプラズマアーク溶解における溶融領域の調査も行った。プラズマ電流は300 Aとした。溶解後試料断面のタングステン濃度プロファイルから、アルゴンプラズマアーク溶解で約8 mmであった溶融深さが、水素ガス導入に伴い約20 mmまで増加した。水素添加に伴い、プラズマ電圧が30 Vから40 Vに増加することおよびプラズマの熱伝導度上昇が溶融深さ増加の理由と考察した。 (2)二段階プラズマアーク溶解による酸素除去:酸素除去(脱酸)を検討する溶解原料として、初期酸素濃度を約0.15 mass%、0.3 mass%, 1.4 mass%の3レベルで変化させたTi-6Al-4V合金を用いた。いずれの初期酸素濃度を有するTi-6Al-4V合金融体においても、水素プラズマアーク溶解→アルゴンプラズマアーク溶解の二段階プロセスを用いることで酸素濃度の低下(脱酸)が確認された。 (3)繰り返し二段階プラズマアーク溶解による酸素除去:所定の初期酸素濃度を有する棒状のTi-6Al-4V合金を溶解炉側面からフィードしつつ、水素プラズマアーク溶解→アルゴンプラズマアーク溶解を繰り返すプロセスによる脱酸を検討した。初期酸素濃度1.4 mass%のTi-6Al-4Vを溶解原料とした繰り返し二段階プラズマアーク溶解において酸素濃度の低下(脱酸)が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で示した3項目について進捗状況を自己点検する。 (1)プラズマアーク溶解時の溶融領域調査:溶融領域の把握は脱酸実験の基礎となるデータである。水素プラズマアーク溶解で溶融領域が拡大することおよびプラズマガス中の水素ガス(H2)分圧は0.05気圧でも溶融領域拡大に有効あることを明らかにした。本項目に関しては「概ね順調に進展している」と評価する。 (2)二段階プラズマアーク溶解による酸素除去:引き抜き機構を有するプラズマ溶解炉を用いて、水素プラズマアーク溶解→アルゴンプラズマアーク溶解の二段階プラズマアーク溶解を実施し、幅広い初期酸素濃度(0.15-1.4mass%)を有するTi-6Al-4V合金融体からの酸素濃度の低減(脱酸)を確認することができた。基本的な脱酸挙動のデータを取得できた。本項目に関しても「概ね順調に進展している」と評価する。 (3)繰り返し二段階プラズマアーク溶解による酸素除去:プラズマ溶解中に原料のフィードが可能というプラズマ溶解炉の利点を活かした溶解原料をフィードしつつ二段階プラズマアーク溶解を繰り返すというプロセスを構築した。このプロセスにおいてもTi-6Al-4V合金からの酸素濃度の低減(脱酸)が可能であることを示した。本項目に関しても「概ね順調に進展している」と評価する。 以上を総合的に考え、全体として「概ね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は最終年度となる。以下の方策の下、研究を推進する。 (1)二段階水素プラズマアーク溶解による脱酸機構の検討:水素プラズマアーク溶解→アルゴンプラズマアーク溶解の二段階プロセスにおいてTi-6Al-4V合金融体からの脱酸が確認されたが、脱酸機構には不明の点が多い。Ti-6Al-4V合金融体中の溶存酸素-溶存水素間反応の観点から脱酸機構を熱力学的に検討するとともに脱酸効率の向上を図る。 (2)一段階プロセスによる酸素除去:二段階プロセスではなく、水素プラズマアーク溶解のみ(一段階水素プラズマアーク溶解)で脱酸できれば効率的である。引き抜き機構を有するプラズマ溶解炉を用いて、一段階水素プラズマアーク溶解によるTi-6Al-4V合金融体からの脱酸を図る。溶解時に脱酸剤として機能する水素源の検討も含めて、一段階プロセスによる脱酸に挑戦する。 (3)プラズマアーク溶解による鉄除去:酸素とともにチタン中の主要な不純物元素である鉄の除去にも取り組む。令和5年度に予備実験を行い、アルゴンプラズマアーク溶解および水素プラズマアーク溶解によりTi-6Al-4V合金融体からの鉄除去が可能であることは確認している。溶解時間やプラズマガス中の水素ガス(H2)濃度が脱鉄に及ぼす影響を解明し、脱鉄機構を検討する。 (4)積極的な研究成果の公表を行い、研究を取りまとめる。
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