研究課題/領域番号 |
22K18315
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村越 敬 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40241301)
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研究分担者 |
福島 知宏 北海道大学, 理学研究院, 講師 (50801560)
南本 大穂 神戸大学, 工学研究科, 講師 (80757279)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2022年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | 振動強結合 / 水 / 酸素発生反応 / 水和 / 多電子移動反応 / プロトン共役電子移動反応 / 強結合状態 / 電極速度論 / 振動分光 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、水分子の振動と強く結合する赤外領域での共振特性を有する構造電極を構築する。この電極界面における水分子の結合強度と空間分布を分光計測により明らかとし、電極系界面のプロトン伝導度ならびに熱力学物性との相間を検証する。この結果に基づきプロトン移動度を指標として界面水分子の結合強度が最大となる条件を明確化し、電極構造設計にフィードバックする。この電極を用いて、多電子移動反応にプロトン移動が協調する電気化学反応の表面反応速度について、その電極反応に即した電極電位、pH、電解質依存性を精査し、反応速度が最大となる条件を明確化する。これら電極応答を速度論的に解析し、強結合系の特徴を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究においては水分子と共振場が強く相互作用したポラリトン状態に着目し、界面プロトン移動度制御に基づく多電子移動電極反応の効率化を目指す。共振器中において電解質水溶液のプロトン移動度が一桁上昇したことに端をなしており、共振器構造体を電極―電解質界面へと導入することによって、界面プロトン移動度制御を行い、触媒活性である過電圧低減や反応選択性を導入する試みである。 共振器でのイオン伝導度を通して一般的な水和制御指針を見出している。水和特性の異なるカチオン種において、イオン伝導度の変調を検討した。共振器での分子振動のポラリトン状態の観測から振動超強結合状態にあることを見出しており、共振条件において飛躍的なイオン伝導度の向上が観測されることを見出した。これらのイオン伝導度の変化は特に水和ネットワークが崩壊的となる負の水和状態において顕著であることを見出した。またこれまでに作成してきた共振器配列構造電極における電極特性のスクリーニング手法の確立や分光計測手法の確立を実証した。 高活性プロトン移動電極の調製に向けて、室温水溶液下における無機材料合成手法である液相析出法によりNi系合金電極を調製し、その酸素発生反応活性を調査した。ドーピング元素の種類や組成を厳密に制御した結果、高い酸素発生反応活性を有する層状腹水酸化物やNi-Fe合金の調製に成功した。さらには、当該手法の再現性良く均一な表面を得られるという特性を基に、電気化学顕微振動分光手法を行うことで、その高活性に起因する反応中間体を明らかにするとともに、機械学習解析で得られた電気化学データ、振動分光データを評価することで、共振器配列構造電極に導入する触媒材料の設計指針を得た。 以上の検討によりポラリトン状態形成に基づく界面プロトン移動度制御が可能な電極系の創出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は振動強結合を示す構造電極の作成と電気化学計測によるイオン伝導および電子移動反応の評価を行った。CaF2の窓板上にTi 2 nm、Au 8 nm、SiO2 20 nm蒸着することによって、鏡面を作成し、二枚の鏡面で電解質水溶液を挟み込むことによって、Fabry-Perot共振器を作成した。Pt電極を挿入することによって、二極式電気化学交流インピーダンス計測を行った。共振器モードから共振器長は赤外分光計測によって決定を行い、共振器長1 μm - 5 μm程度の厚さで、0.1 μmの精度で共振器長を決定し、共振器長に依存したイオン伝導度を決定した。10 mMの電解質水溶液において水のOH伸縮モードが共振器モードが一致した時に顕著なイオン伝導度の向上が観測された。イオン伝導においては粘性摩擦と誘電摩擦によって説明がされるが、振動強結合下においては特に共振器との間でのコヒーレントな結合によって、誘電摩擦の減少が生じ、イオン伝導挙動が促進されることを見出し、負の水和特性を有するCsイオンのようなカチオンにおいて顕著なイオン伝導度の向上を見出した。これにより電極電解質界面における水和環境へとあたえる影響に関して検討を着手し、界面イオンの移動度全般への適用性を見出した。 さらにはガラス基板上に作成する共振器配列構造電極の精度をエッチング条件を最適化することにより向上させた。また共振器内部における分子の分光を行うために偏光依存および角度依存赤外分光により、分光計測からポラリトン状態との相関に関して検討を行った。さらには水電解反応における動画観測評価を導入することにより、泡成長速度から評価を行った。さらに液相析出法を利用することにより、厚さが制御可能な触媒層の作成に成功し、電極の創出を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究成果として構造電極の作成、強結合によるOER活性の向上、機械学習による反応原理の網羅的探索、光学特性の観測を可能とした。次年度以降は以下の項目に注力して研究をすすめる。 特に真空場の電場強度を大きくすることが可能な構造体を探索し、赤外領域におけるフォトニックバンドのエネルギー帯、Q値の制御を行い、強結合に最適な電極基板の作成を行う。反射、透過分光計測の入射光角度依存性に関して検証を行うことによって、フォトニックバンドの構造を明らかとする。さらには水分子の電子状態、振動モードと結合させることによってポラリトン状態として、モードの空間分布、真空場の電場強度を変数とした結合強度を理解する。また電極として利用可能なものとするために鋳型法などを利用して電極面積の大面積化を行い、実用電極に向けての検討を開始する。 またこれまでに見出している電極反応速度論解析および強結合下での電子移動反応速度解析に向けて、理論構築も進める。特にコヒーレントな分子数とモード体積に着目し、電磁気学的計算をもとに計算を進めることによって、構造の最適化を行う。特にこれまでに代表研究者が見出しているプラズモンを基礎とした表面格子共鳴(SLR)の構造体を利用して、電極への利用と1電子1プロトン移動過程および多電子多プロトン移動過程の多段階プロトン共役電子移動過程に着目し、強結合のあたえる電荷移動過程に対する一般性を見出す。 以上の検討から光学特性―構造―触媒活性の相関に関して見出し、強結合機能電極系の特徴を明らかとする。
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