研究課題/領域番号 |
22K18318
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
伏屋 雄紀 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00377954)
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研究分担者 |
勝野 弘康 北海道大学, 低温科学研究所, 博士研究員 (70377927)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | チューリング・パターン / ビスマス単原子層 / 結晶成長 / パターン形成 / 反応拡散方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
最近我々は,ビスマス単原子膜に現れるナノスケールの奇妙な模様が,熱帯魚の縞模様など生物のパターン形成と同じ「チューリング・パターン」であることを初めて明らかにした.我々の成果は,単にビスマス原子膜模様の機序の解明や世界最小のチューリング・パターンの発見にとどまらず,「チューリング理論に基づく新物質構造の創生」という物質科学の新たな方向性をもたらした. 本研究では,我々が見出した新しい原理に立脚し,ナノ薄膜のパターン形成を数理生物学のチューリング理論に基づいて制御することで,新物質構造の創生と機能の開拓に挑戦する.
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研究実績の概要 |
これまでに我々は,ナノスケールのチューリング・パターン形成には,3種類の原子間ポテンシャルが重要な役割を果たすことを明らかにした.これらを構成要素とする原子変位の時間発展方程式を導出し,チューリング・パターンを得るシミュレーション法を開発してきた.この方法をより現実の系に近く,より精度の高いシミュレーション法を確立するために,分子動力学法を用いた方法の開発を行った.NbSe2基板上のBi単原子膜を想定して,Bi-Bi間およびBi-Se間の原子間力(レナード・ジョーンズポテンシャル)を考慮した分子動力学シミュレーション法を開発した.はじめ2次元系のシミュレーション法を開発し,次いで3次元系のシミュレーションの開発も行った.予想される格子配置がシミュレーションで得られ,手法の妥当性が確認できた. 第一原理計算によるシミュレーション開発も行った.Biについては,安定な薄膜構造が複数あることがこれまでの実験で確認されており,それぞれに対する第一原理計算を行った.先行研究では10BLまでしか計算されていなかったが,本研究で15BLまでの計算を行えるようになった. Bi原子膜を実験で調べるためには,基板上に配置する必要がある.しかしBiなど,トポロジーの観点から興味を持たれている物質では,原子膜の電子状態が基板の影響を大きく受け,従来知られていなかった効果を生み出す可能性がある.その具体的性質を調べるため,トポロジカルヘテロ構造Bi/BiSbの電子状態の性質を調べた.その結果,強い量子サイズ効果により,波動関数の長距離浸透(80nm以上)が起こることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画ではR5年度に行う予定であった,分子動力学法と第一原理計算によるシミュレーション開発を予定を前倒しして,R4年度から進めた.実空間での判別法も順調に進んでおり,さらに計画以上の研究として,トポロジカルヘテロ構造の電子状態計算も行うことができた.以上のことから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に沿って,シミュレーション開発を進める.分子動力学法では,2体ポテンシャルに加え,3体ポテンシャル(結合角ポテンシャル)を取り入れる.構造解析と評価については,画像解析の方法を確立し,チューリング・パターンの実空間での判別についての研究を進める.解析法の確立と並行して,パターン形成の実験研究も進むように,実験グループとの連携を深める.
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