研究課題/領域番号 |
22K18325
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分31:原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大竹 翼 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80544105)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | 蛇紋岩化反応 / 水素 / ハルツバージャイト / フロースルー / 開放系 / pH / 二次鉱物 / かんらん石 / 準安定相 / 触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
地球表層環境では, 低温蛇紋岩化反応により水素が温泉水ともに湧出していることが確認されているが, その反応メカニズムは分かっておらず, 工学的な応用には至っていない. 本研究課題では, 低温蛇紋岩化反応における水素生成促進メカニズムを明らかにし,室内実験において水素生成量を増大させることを研究の目的とする. そのために, バッチ式およびフロースルー式の実験を行い, 水素生成量を最大化するための条件を導き出す. さらに, 地球化学モデルを構築し, 更なる水素生成量増大に向けて理論的な予測を行う. 本研究の成果は資源探査学, 生命の起源など様々な学術分野に大きなインパクトを与えることができる.
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研究実績の概要 |
これまで横置き式であった熱水フロースルー式実験装置において, カラム内での流体の経路と反応をより均質に行わせるために, 縦置き型への改良を行なった. その結果, 横置き型と比較して水素生成量が多少大きくなったが, 以前モデリングの予測結果と比較すると小さい値に留まっていた。今後, リークの原因をさらに追求する必要がある. また, フロースルー実験装置で溶液の初期pHを変化させる実験の予備実験として, バッチ式実験においてpHを変化させる実験を行なった。その結果, 初期pHを低下させると水素生成量は増加したが, 最終的なpHや溶存イオン濃度に大きな変化はみられなかった。このことは1次鉱物の溶解が水素生成の主要因であること, 溶液の化学組成は2次鉱物の沈殿によって規定されているというこれまでの考察と整合的な結果であり, フロースルー実験にて通水溶液のpHを低くすることで, 水素生成量の増大が期待される。 バッチ式実験において沈殿した二次鉱物を特定するために, 実験系の容量を大きくし, さらに初期鉱物を取り除くために実験後溶液の上澄みのみを濾過することによって低密度と思われる沈殿物の回収に成功した.回収した固形物を電子顕微鏡 (FE-SEM, TEM)で観察・分析したところ, 針状結晶の集合体で, これらはCaやNaを一部含む低結晶性Mg珪酸塩鉱物であると考えられる。この鉱物が溶液組成を規定していると考えられるが, その一方で水素生成の要因となる鉄は含まれていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フロースルー実験装置の改良を行うことができたが,水素量は予想した通りには増大しなかった。いまだにリークの原因となっている箇所があると考えられるため。バッチ式実験では初期pHが水素生成量に影響することが明らかになったため, この知見をフロースルー式実験に活かすことができる。実験時に生成した二次鉱物の同定には成功したが, 水素生成の要因となっている鉄が含まれておらず, 鉄を含む鉱物相の同定には至っていない.
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今後の研究の推進方策 |
改良したフロースルー実験装置リークの原因を追求する必要がある。特に水素補修の方法についてさらなる検討が必要である。その後に, 初期pHを変化させた実験を行う。実験後の固体については, これまでのところバッチ式実験での沈殿物しか分析できいないが, フロースルー式であれば, カラムの前後で生成物の量も異なるはずであり, より連続的な固体の変化が観察できる可能性があり, 今後分析を進めていく。鉄を含む沈殿相は未だ同定ができていない。反応率を上げた実験後の固体分析により, 鉄を含む沈殿相の同定を進めていく。
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