研究課題/領域番号 |
22K18346
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
矢野 勝也 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (00283424)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 21,710千円 (直接経費: 16,700千円、間接経費: 5,010千円)
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キーワード | サツマイモ / エンドファイト / 窒素固定 / 安定同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
通常作物の生育は窒素肥料に強く依存するが、高い窒素固定能を有するサツマイモはその例外である。この窒素固定能は植物細胞間隙に生息する細菌(エンドファイト)によると考えられており、ニトロゲナーゼ遺伝子をゲノム上に保有する細菌がサツマイモ体内から多数検出されている。しかし、培養可能な細菌だけ単離・増殖・接種しても、本来の高い窒素固定能を再現できない。この結果は培養困難な細菌が真の機能実体である可能性を示唆する。本研究では、サツマイモ体内で高い窒素固定能を実際に発現した細菌を培養に依存することなく直接可視化して特定し、特定した細菌の挙動を追跡する。
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研究実績の概要 |
通常作物の生育は窒素肥料に強く依存するが、高い窒素固定能を有するサツマイモはその例外である。この窒素固定能は植物細胞間隙に生息する細菌(エンドファイト)によると考えられており、ニトロゲナーゼ遺伝子をゲノム上に保有する細菌がサツマイモ体内から多数検出されている。しかし、培養可能な細菌だけ単離・増殖・接種しても、本来の高い窒素固定能を再現できない。この結果は培養困難な細菌が真の機能実体である可能性を示唆する。本研究では、サツマイモ体内で高い窒素固定能を実際に発現した細菌を培養に依存することなく直接可視化して特定し、特定した細菌の挙動を追跡する。 サツマイモに適用する前に、根粒で窒素固定することがわかっているダイズを用いて、地下部に15N2ガスを供与した後、根粒中の根粒菌に15Nが検出されるかどうかを検証した。その結果、ラマン顕微鏡を用いることで、根粒磨砕液中の根粒菌に15Nを検出することができ、この方法論が有効であることを確認できた。 次に、塊根を発育させたサツマイモ根系に15N2ガスを供与し、細根・塊根からの抽出液を得た。これら抽出液中の細菌では14Nしか検出できなかったものが存在する一方で、一部の細菌には15Nが検出された。この結果は、ある種の細菌がサツマイモ体内で実際に15N2を固定したことを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
15N2ガスを供与したサツマイモ体内から、高濃度の15Nを含んだ細菌をラマン顕微鏡で識別することができた。これは当初の計画通りであるとともに、サツマイモ体内で実際に窒素固定が行われることを初めて立証したものである。 また、ポット栽培でサツマイモ窒素固定能を評価した結果、少量の窒素が必須であるが窒素施肥量に応じて速やかに飽和すること、この飽和状態においてはリン施肥量に応じて直線的に窒素固定能が増加すること、ただしカリウム施肥にはほとんど変化しないことを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高濃度15Nを含んだ細菌をシングルセルレベルで回収して遺伝子解析し、その特定を進める予定である。それが特定されれば、その細菌に特異な遺伝子配列を用いたPCRで追跡することが可能となり、真に窒素を固定する細菌の挙動を把握できるようになる。 遺伝子型が同じであるにも関わらず、サツマイモの窒素固定能は苗の生産地や個体間で大きく異なる。この原因として考えられるのが、サツマイモの苗に生息する細菌(特に、植物体内で実際に窒素固定能を発揮するエンドファイト)がサツマイモ個体ごとに異なっている可能性である。この可能性を検証する上で、植物体内で真に窒素を固定する細菌の特定が重要となる。
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