研究課題/領域番号 |
22K18366
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分44:細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
八木田 和弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90324920)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2023年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 概日リズム / 概日リズム障害 / シフトワーク / 生物時計 / 個体差 / マウスコホートモデル / Chronic jet-lag / NAFLD / 腸内細菌叢 / 非遺伝的要因 / 体内時計 / 発生発達 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、急速に進む都市機能の24時間化により、生活スタイルが不規則になりやすい環境にある。現在、我が国におけるシフトワーク従事者は1200万人以上にのぼる。さらに、夜でありながら光が溢れる環境は、子供たちの生活リズムを大きく変化させ、心身の発達に成長後も続く影響を及ぼす可能性も指摘されている。このように概日リズム障害は、幼若期・成人期・老年期の全てのライフコースに関わる医学的課題である。 本研究は、概日リズム障害の未病から病態成立に至るまでのプロセスを再構成することで未解明であった病態メカニズムを明らかにし、ヒトの概日リズム障害の早期検出法の開発につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究は、「マウスコホート系」の方法論によって、概日リズムの不適合がもたらす病態(概日リズム障害)の、未病から病態成立に至るまでのプロセスを再構成することを目指す。 本年度は、非アルコール性肝疾患(NAFLD)に焦点を当て、概日リズム不適合とNAFLD病態成立の関連性についてマウスコホートモデル系を用いた解析を進めた。概日リズム不適合(Chronic Jet-lag : CJL)条件に47週間暴露し、その過程で経時的に体重・活動リズム・摂食量を計測。さらに47週間後に肝臓の組織学的解析、RNA-seq、血清マーカー解析、腸内細菌叢解析、などを個体ごとに実施し、個体別の多層的生体解析データセットを取得。対照群と比較し、CJL群では有意な脂肪肝発症率の上昇を認めたが、CJL群内での病態に非常に大きな個体差が見られることが明らかとなった。さらに、このNAFLD発症の個体差に着目し、関連する概日リズムの生理学的特性について解析した。その結果、恒常暗条件下における活動リズムをカイ二乗ピリオドグラム解析によって得られた周期及びリズム安定性(Qp)がCJL暴露によるNAFLD発症と有意に関連することを明らかにした。これらの結果は、概日リズムの生理学的特性に着目することで個体差と疾患感受性の因果関係解明につながることを示唆するもので、個体差と疾患の因果関係解明に向けた体系的研究に発展するための、挑戦的開拓研究の意義を果たしたものといえる。 マウスコホート系を活用した発生発達期のマウス母体リズムの胎児への影響解析系の確立については、すでに母子同調を担う胎盤機能に重要な遺伝子の欠損マウスの作成に成功しており、母子同調のメカニズム解明に向けて着実に研究が進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、「マウスコホート系」の方法論によって、概日リズムの不適合がもたらす病態(概日リズム障害)の、未病から病態成立に至るまでのプロセスを再構成することを目指している。これまで、非アルコール性肝疾患(NAFLD)に焦点を当て、概日リズム不適合とNAFLD病態成立の関連性についてマウスコホートモデル系を用いた解析を進め、個体ごとの概日リズム特性がNAFLDの発症しやすさと関連することを明らかにした。概日リズム不適合(Chronic Jet-lag : CJL)条件に47週間暴露し、その過程で個体別の多層的生体解析データセットを取得。対照群と比較し、CJL群では有意な脂肪肝発症率の上昇を認めたが、CJL群内での病態に非常に大きな個体差が見られることが明らかとなった。NAFLD発症の個体差に着目し、関連する概日リズムの生理学的特性について解析した結果、周期及びリズム安定性(Qp)がNAFLD発症と有意に関連することを明らかにし、論文発表した(iScience, 2024)。この成果は新聞等にも取り上げられるなど、社会的インパクトも大きく、個体差と疾患の因果関係解明に向けた体系的研究に発展するための、挑戦的開拓研究の意義を果たしたものといえ、予想以上の研究の進展があったと考えられる。 マウスコホート系を活用した発生発達期のマウス母体リズムの胎児への影響解析系の確立については、すでに母子同調を担う胎盤機能に重要な遺伝子の欠損マウスの作成に成功しており、母子同調のメカニズム解明に向けて着実に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
概日リズムの不適合がもたらす病態(概日リズム障害)の、未病から病態成立に至るまでのプロセスを再構成するためのヒトの概日リズム障害の病態再現に目処がついたため、これを用いて病態成立プロセスの解明をさらに進める。これに加えて、ヒトの多因子慢性疾患に共通する「個体差」のメカニズムの解明を目指す。具体的には、遺伝的要因による個体差を最小限に抑えたマウスを用いた病態再現系であることを利用し、病態発症や重症度に寄与する非遺伝的要因を同定する。これらを通し、環境要因によって生じるヒト慢性疾患の初めての再現モデルとして、疾患の予防法開発の基盤を構築するための方法論を確立する。特に個体差の成立メカニズムの解明と、そもそも「個体差」の実態を明らかにするための解析を進める。 マウスコホート系を活用した発生発達期のマウス母体リズムの胎児への影響解析系の確立については、母子同調のメカニズムについて詳細な検討を始めている。すでに母子同調を担う胎盤機能に重要な遺伝子の欠損マウスの作成に成功しており、これを用いて母子同調の主要な同調因子を同定し、明暗シフトによる母子同調の撹乱モデルを用いた解析を進める。
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