研究課題/領域番号 |
22K18374
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分47:薬学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹内 恒 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (20581284)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
|
キーワード | NMR / in cell / 細胞内移行速度 / 細胞内創薬 / 動的構造 |
研究開始時の研究の概要 |
特定の創薬標的に対して薬剤を開発しようとする標的創薬は、従来、その開発を細胞内環境とはかけ離れた試験管内からスタートしてきた。一方、薬剤が実際に作用するのは、細胞内においてであり、その環境はより複雑かつ動的である。本研究では、研究代表者が開発してきた核磁気共鳴(NMR)法を用いた独自の構造創薬技術と、生きた細胞そのものを用いてNMR解析を行うin cell NMR技術を融合・発展させることで、細胞内における創薬標的と薬剤候補分子の原子レベルの相互作用解析と細胞内の創薬標的に対する候補分子の結合・解離・代謝のリアルタイム観測を同時に可能にする新たな技術「NMR細胞内創薬技術」を開発する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者が開発してきた核磁気共鳴(NMR)法を用いた独自の構造創薬技術と、生きた細胞そのものを用いてNMR解析を行うin cell NMR技術を融合・発展させることで、細胞内における創薬標的と薬剤候補分子の原子レベルの相互作用解析と細胞内の創薬標的に対する候補分子の結合・解離・代謝のリアルタイム観測を同時に可能にする新たな技術「NMR細胞内創薬技術」を開発することを目指している。 これまでのin cell NMR測定は、主に細胞をゲルの中に包埋するなどの方法で、NMRサンプル管内での位置を固定し、そのうえで培地を還流するバイオリアクターを用いて行なわれてきた。一方で、細胞をゲルの中に封入することは、細胞への薬剤のアクセスを阻害し、細胞内標的への結合・解離・代謝を計測するin cell NMR技術の確立を目指す本研究の目的にはそぐわない。 そこで、昨年度までに細胞を固定せずに、かつ十分な流速で培地を還流する新規バイオリアクターの設計を行い、これを用いてin cell NMR測定を行う方法を開発した。本年度は、細胞内に安定同位体標識を施したFKBP12を導入し、細胞外で還流する培地に中分子であるFK506を添加することで、その細胞内移行をリアルタイムで観測し、細胞内移行速度および細胞内における親和性を異なる温度で独立かつ定量的に求めることに成功した。その結果、結合親和性は変化しないが、温度の低下とともに、細胞内移行速度が低下することが明らかとなった。細胞内移行速度の低下は温度変化による溶液中の拡散速度の変化より大きかった。このことは、膜の粘性変化など細胞に特有の環境変化を、中分子の細胞内移行性が鋭敏に反映していることを示唆している。また、同様の手法を用いて、細胞内におけるFKBP12-FK506複合体の界面に運動性の違いが存在することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、I. 動的構造解析を細胞内で行うことで、細胞内における標的タンパク質のドラッガビリティを評価し、細胞内で候補分子の構造を最適化するin cell NMR技術。および、II. 細胞内標的への結合・解離・代謝を計測するin cell NMR技術の確立を目指している。本年度は、昨年度までに確立した新規バイオリアクター法を活用し、中分子の細胞内移行および細胞内親和性の定量解析をさらに推し進めており、十分な成果が挙がったと判断することができる。特に、温度低下に依存した、細胞内移行速度の低下は、膜の粘性変化など細胞に特有の環境変化反映している可能性が高く、本手法により初めてその存在を示すことができている点で独創的である。さらに、細胞内におけるFKBP12-FK506複合体の運動性解析に着手し、メチル運動性の細胞内外での定量解析を進めたことから、I、II両方の目的の実現に向けて順調に研究が進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
新規バイオリアクター法について知財の取得は引き続き取り組むべき課題となる。また今年度は昨年度と同様、細胞内に導入する標的タンパク質は13C標識を行っていたため、バックグラウンドに対するシグナル強度を十分なものとするために比較的高濃度での導入が必要であった。今後は、19F標識などを用いることで、導入量を減らし、より低濃度でのin cell NMR観測が可能な状況を作りたいと考えている。このために必要な新たな方法論に関する論文を投稿し、現在リバイス対応中である。また、細胞内における標的タンパク質の構造平衡を解析することで、過渡的な薬物結合サイト、クリプトサイトの細胞内における安定性の変化についての知見を得ることを目指し引き続き研究を進める。
|