研究課題/領域番号 |
22K18381
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分50:腫瘍学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日野原 邦彦 名古屋大学, 医学系研究科, 特任准教授 (50549467)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2024年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | がん免疫療法 / 発現型バーコード / 1細胞RNAシーケンス / 空間的遺伝子発現解析 / 進化軌跡 / 薬剤耐性 / 腫瘍内不均一性 / 養子T細胞療法 / がんの進化 / 1細胞解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1つの細胞を転写ランドスケープレベルで追跡可能な発現型バーコード技術を利用し、ACTに対する固形がんの耐性化過程を追跡する。ACT過程における個々のがん細胞の運命を発現型バーコード情報から1細胞レベルで空間的に明らかにし、ACTに対する耐性進化軌跡の時空間的な理解を図る。多様性を示す個々のがん細胞の免疫応答に関する機能的な境界を高解像度で解明することに挑戦し、ACT耐性細胞の発生起源とその維持に関わる制御機構を突き止めることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、バーコード化した複数のがん細胞株を対象とし、これらの細胞株をマウス移植して生着させた後に得られた腫瘍組織のバーコード多様性の検証を行った。マウス体内(in vivo)において相当数のクローンが生着できるかどうか、薬剤投与実験も見据えてバーコードの多様性が長期に渡り維持されるかどうかを指標に、移植細胞数や移植実験系(PBS or Matrigelなど)に関する条件の最適化を行いつつ解析を進めた。その結果、10の3乗個以上のバーコード化細胞が生着・維持される細胞株を選別することができ、移植実験系としても最適化を図ることができた。さらに、これらのバーコード化細胞を用いた養子免疫療法の実験系の構築を目的とし、がん細胞や免疫細胞の移植数やタイミングの条件検討を行い、同条件下で移植・治療を開始したマウス群において免疫療法による効果が長期間持続する群と短期間のうちに再発してくる群が混在する実験系を構築することができた。今後、本知見のメカニズム解明に向け、さらに詳細な解析を進めていく予定である。また、上記の実験から得られた腫瘍サンプルを用いてバルクレベルのバーコード情報の解析を現在進めており、昨年度までに立ち上げたパイプラインを用いて解析したデータを可視化する方法論について、fish plotを用いた細胞運命追跡の可視化など、さらなるブラッシュアップを図った。加えて、空間トランスクリプトーム解析の予備検討を行うための組織切片をこれらの組織サンプルから調整した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、養子免疫療法や免疫チェックポイント阻害剤投与のモデルとなる複数のマウスがん細胞株の発現バーコード化を終えており、本年度はこれらの細胞株を実際にマウスへと移植して十分量のクローンを追跡できる細胞株を選別することができた。さらにこれらのバーコード化がん細胞を移植したのちに養子免疫療法を実施し、異なる治療応答性を示す実験モデルを構築することができた。今後このモデルにおける治療応答性の差異を分子レベルで比較検討することで、治療耐性化過程におけるがん細胞の多様な進化軌跡を明らかにできると考えている。また、これらの実験からバルクバーコード解析および空間的遺伝子発現解析用のサンプルも取得しており、これらの実験を行う準備を現在進めている。来年度に実施予定である空間的遺伝子発現解析においてどの様に発現バーコード情報を抽出するかを今後検討していく必要があるが、個々の細胞に発現するバーコード情報を1細胞レベルでトランスクリプトーム情報と共に取得するためのパイプラインは構築できているため、これを応用して空間的にバーコード情報を同定することができると考えている。このように、本年度は当初の計画通りin vivoで追跡可能なバーコード化細胞株モデルの選別とバーコード解析・空間解析系構築のためのサンプル準備を終えることができた。現在までのところ来年度以降の研究の実施に影響する大きな問題等も発生していない。以上のように、当初の研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
がん免疫療法に対する薬剤耐性進化軌跡を空間的に1細胞の遺伝子発現レベルで捉えるため、本年度に取得した予備検討用サンプルを用いて空間的遺伝子発現実験とその解析系を構築する。すでに10xVisiumの実験準備を終えており、今後速やかに実験と解析を進めていく予定である。解析に関しては、遺伝子発現情報に加えて発現バーコードの情報も同時に得られるため、これらのデータを同時に抽出してプロットする方法論を開発する。また、最近になってより高解像度の10x Visium HDも発売されたことから、本研究でのHDの使用も検討していく。これまでに予備的に実施したシングルセル解析においては発現バーコード情報を遺伝子発現情報と共に読み取ることができていることから、空間的遺伝子発現解析においても問題なくバーコード情報の取得が可能と考えている。ただし、実際にそれぞれの細胞(もしくは細胞クラスター)における遺伝子発現情報とバーコード情報をどのようにつなげて解析するかについては検討課題であるため、今後具体的な解析系の構築を進めていく。現在は上記の実験解析系の構築と並行して、免疫療法に反応性の高い群と低い群それぞれの腫瘍サンプルの取得を目的としたin vivo実験を進めており、今後得られたサンプルと構築した実験解析系を用いてバーコード解析と空間的遺伝子発現解析へと進む予定としている。以上の方策により、がん細胞側の進化的視点から固形がんにおける免疫療法の耐性メカニズムに対する理解を深めることを目指す。
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